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「また成績上位者は毎年変わる可能性がありますので、毎年皆さんに平等なチャンスがあります。頑張って下さい。今年度、1年生を束ねる生徒会役員に抜擢されたのは壇上の二人です」
壇上を見ると大路と目が合った。そしてにこっと笑いかけてきた。
…視力が悪くて目が合ったことに気が付かなかったということにしておこう。
決して無視したわけではない。眼鏡を変装のためにかけることにして良かった。ナイスジャッジ過去の私。
佐摩を見ると、誰を見るわけでもなく明後日の方向を見ている。大丈夫かあいつ。
「佐摩の方はいかにも興味ありませんって感じだな。露骨なやつだな~」
「あ、なるほど。そういうことか」
春山のおかげで佐摩の行動が理解できた。
多分春山のフォローがなければ私は佐摩を変人として認識することになっていた。
「二人には後程詳しい説明がありますので、今日の18時に職員室に来て下さい。1年生の皆さんが知るべき当校の規則はここまでです。何か質問がある方はご起立ください」
こんな雰囲気で質問できる奴いるわけないだろ。
ガタッ
…いたわ。真横に。近すぎて忘れてた。
「名前を名乗りなさい。質問はそれからお願いします」
「春山健人です」
体育館中の注目が集まる。
うわあああ何か嫌な予感しかしない…。
「春山…ああ。春山君か。どうぞ。ご質問をお願いします」
そういうと最上先生は持っていた手帳に何か書き込んだ。何あれこわいこわいこわい。
「2つあるんすけど。まず1つ目。ここって留年の制度あるんすか?病気とかして出席日数足りなくなったりとかしたら大変っすよね。その時はそれもまた成績だけをみるんすか?」
春山何喧嘩腰に聞いちゃってんの…。
平和にいこう?日本人は平和を愛する素敵な民族だって昔おばあちゃんが教えてくれたよ?
周囲には見えないように足を軽く踏んでやめとけと忠告を送るが届かず。
胃が痛くなってきた…。
「ケースバイケースですね。前例はありますとだけ回答させていただきます」
「…分かりました。2つ目っす。さっき言ってた生徒会って任命されたら辞退できるんすか?」
「…何故そんな質問を?」
「俺、バスケで一番になるんで特別枠?だっけ?それで入らなきゃいけなくなるかもしれないけど、人を見下す奴等と行動したくないっす」
静まり返る体育館。
春山のよく通る声はここにいる人達にどういう伝わり方をしているのだろう。沈黙は恐怖だ。
「それは先に回答させていただいた通り、生徒会機密に該当します。春山君、君はまだその知る権利を持っていないです。以上。他に質問は?」
ガタッ
新しい起立音が、聞こえた。