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「で?その封筒は何?」

「え?」


 そそくさと帰ろうとしていると日浅に呼び止められた。

 視線は大路から渡された封筒に注がれている。


「さっき大路が渚に渡してたよ」


 けろりと答える春山。

 やめろよ!勝手に答えるな!


「ふーん…」


 途端に剣呑とした雰囲気を纏わせる日浅。

 こわっ!


 私もまだ中身を見てないからなあ…。

 大路からは一人の時にみろって言われたし…。


 色々と考えていると、シュッという音と共に手の中の感触が変わった。


「え!!!ちょっと返してよ!」

「中身、何?」


 勝手に奪った封筒を高い位置に持ち上げ光に透かして見ようとする日浅。

 奪い返そうと飛び上がるけど届かない。本当にでかいなこいつ!


「返せこの無礼者!」

「ちょっ!押すなって」


 力の限りぶつかると巨体がバランスを崩し、その瞬間手から封筒が離れ、


「お」


 春山の手に渡った。


「開けてもいい?渚」

「だめ!」

「う~…分かった、返すよ。あっ」


 春山がこちらに封筒を渡そうとして、手が滑り封筒が再びふわりと宙を舞い、


 瞬間。





 ーーーはらり。






 封筒は封をされてなかったようで、封の中から、ハガキくらいの大きさの何かが落ちてきて



「え…?」





 なにこれ。

 どうしてーーーーー






 日浅の目が見開かれる。


「ーーーやっぱり」




 『ソレ』にこの場にいる皆の視線が集まる。




 理解が追いつかない。

 だけど、それの背景に少しの既視感を覚える。

 記憶の彼方に埋もれた何かが息吹をかけられてーーー




「写真?」




 春山の声が沈黙を破り、思考の迷路から意識が現実に戻される。

 写真には2人の子どもが横に並んでにっこりと微笑んでいた。

 ショートカットの2人の子ども。背景はーーー



「病院?」



 静かになった部屋に響く春山の声。


「あれ?」


 煩い。


「これって」


 やめて。




「渚?」




 たぶん、それはパンドラの箱。




「すっごい昔の写真?渚の小さい頃の写真???」


 痛い。


「それにこの一緒に写ってる隣にいる男の子って…?」



 頭が、痛い。

 ズキズキと痛み始める。頭が。胸が。心が。




「何かどっかで見たことあるような気もするけど…」


 思い出せ。


「ハル、1つ質問なんだけど」


 真実を。


「うん?」


 目を背けるな。


「これ持ってきたのって大路なんだっけ」


 頭が混乱して二人の会話が上手く頭に入ってこなくなる。

 何かを話している、音としては認識できる。

 でも内容が入ってこない。

 心臓が、交差する記憶の声が、五月蝿い。


「うん。その封筒は大路が持ってきてたけど…」


 ーーーーでも


「でも何で大路が渚の小さい頃の写真持ってるんだろ?」


 違う。


「って、あ!これ、渚の隣にいる男の子って大路じゃないか?!よく見たら面影がある気がする!!!」


 それは


「二人って幼なじみだったのか!」


 その子はーーー


「俺と哲みたいな感じか!」

「やめて」




 ぴしゃりと春山の言葉を遮る。

 驚いた顔の春山が視界に入る。









「私じゃない」














 ーーーーー『ひなたちゃん、元気?』




 大路の問いかけが頭の中で反芻して離れなかった。

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