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「なにこの空気。うざ」
「あ…哲」
のっそりと姿を現した日浅。
良いタイミングで来てくれた。
「遅かったね。どこ行ってたの?」
「あんたには関係ない」
なんかなあ…のらりくらりとかわす日浅に少し苛つきを覚える。
「それよりハル」
「ええっ!?」
ボーッとしてた春山が声を裏返して返事をする。
「俺との約束は?」
「あ、うん!守ったよ!」
「ふうん。それはどーも」
約束?約束って何だ?まあいっか。
あっ!それより!!!
「日浅!…くん、春山君が呼んでるとか言ってたけど呼んでないって言われたんだけど」
「言ったっけ?」
「言ったよ。何で覚えてないの?」
「は?」
「嘘つき」
「それ、あんたが言う?」
うっ…。
後ろめたいことがある事実があるせいかずきりと刺さる言葉だな。変に深読みしてしまう。
「何で二人だけで話すんだよー!俺も混ぜてよ!」
「別に話してないし。つーかハルは割り込めるから良いじゃん」
マイペース春山が空気を緩和してくれた。
「まあいいや!よし!哲も来て皆揃ったし行こっか!」
「行くってどこに?」
「ん?渚ともさっき話してたんだけどさ、三人で風呂行こーって!」
「「は!!!?」」
日浅と私の声が重なる。
いや!いやいやいや!何言ってんの春山!?
何か二人で相談して三人で行きたいね~みたいな話に纏まったチックに言ってるけど冗談じゃない!私は全否定したよ!春山が提案してきただけだからな!
「…何がどうしてそういう話になったわけ?」
いや本当にな!!!
珍しく意気投合する日浅と私の意見。
日浅の顔は呆れを隠し切れてない。
「大浴場の工事もこの前ちょうど終わったらしいし、俺ら一緒に風呂いったことないなって気付いてさ!」
「嫌だし。俺風呂は一人派。彼女にせがまれれば入るけど」
ちくりと何かが胸に引っ掛かった。何だかもやもやする?なんだこれ?
「…………日浅くんって彼女いるの?」
「は?何急に」
「だって今」
「…何で?気になんの?」
「…別に関係ないからどうでも良いけど」
「あっそ。じゃあ答えない」
何だよこいつ!本当に可愛くないな!
「ひでー!風呂ー!いきたいー!彼女と友達どっちが大切なんだよ!」
「いれば彼女でしょ、そりゃあ。俺も楽しめるし」
「俺とだって楽しいよ!」
「ハルは疲れるから無理」
「えーーー!彼女とだとどう楽しいんだよ!」
「それ聞く?」
わーぎゃーと盛り上がる二人。
あの、帰っても良いですか?




