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 突然見えなくなった日浅を追いかけたい気持ちはあったけど、最後に聞こえた声から追ってくるなという気持ちが込められていた。

 なら深追いすべきじゃない。一応さっき助けてもらって借もあるし、待っててと言われたから少し言うことを聞いてやろう。



「哲、どうしたの?」



 キョトンとした顔でこちらを見つめる春山。



「さあ?それよりその言葉そのまま返したいんだけど」

「え?」

「彼に、春山くんが呼んでるって言われて連れてこられたんだけど」

「え?」

「え?」


 お互い頭の上にハテナが浮かぶ。

 まてまてまて。何だこれ?!


「まさか…用事ないの?え?日浅の妄言!?」

「えっ!あ、そういうことか!」


 何がそう言うこと?!


「呼んでるっていうか気になることがあるって話は確かにしてたかも!今日じゃなくても良かったんだけど。でもせっかく来てくれたから色々話そう!」

「え」

「哲も待っててって言ってたし!」


 言ってたけど今考えるとあれこそどういう意味だ。待っててって何?

 それにバスケ馬鹿の春山が部活に行かずに大人しくこの部屋にいるのも奇妙すぎる。


「えっと、君、今日部活は?」

「ないって!今日体育館別件で使うから自主連も禁止なんだってさ~」

「なるほど」

「暇だったから哲に鬼電してたんだけど」


 春山が私を呼んでたわけではなくて、どちらかというと日浅を呼んでた。利用されたのは私か春山か。それとも…?


「やっと来てくれたと思ったらすぐどっか行っちゃうし」


 それは同感。


「猫みたいだよね」


 急に現れたと思えばフラッとどこかに消えていっちゃうし。


「でもいいや!」

「何が?」

「渚が来てくれたし!」

「えっ」

「哲も後から来るって言ってたし、今日は3人でオールだな!楽しみー!」


 は?


「いや、オールはちょっと…。お風呂もまだ入ってないし」

「えっ!そしたらさ、調度良いじゃん!」

「…何が?」


 すごく嫌な予感がする。

 最近の私は嫌な予感がすごくよく当たるから非常に困る。取り越し苦労でありますように。


「まだ渚と風呂入ったことなかったよな!」

「は?」


 ちょっと待て。なにいってるんだこいつ!?

 まだも何もお前と入る予定は未来永劫ない!嫁入り前にお父さん以外とお風呂入るほど私は痴女じゃない!!!!


「裸の付き合いって大事だぜ!哲が戻ってきたら皆でいこう!」

「いやいやいやいやいや!無理!絶対無理だよ!」

「えー何で?」


 何でじゃないよ!変態かよ!!


「やめろ本当にやめろ。二人で行け」


 お嫁に行けなくなるから本当にやめてください。


「嫌だ!俺もう決めたもん」

「警察呼びますよ」


 いや本当に。お巡りさーん!こっちです!


「渚に拒否権ないよ!俺担いでいくもんね!」


 言い出した春山は誰にも止められないことを私は知っている。

 やばい。

 もしかしてこれ、かえってピンチになったんじゃないの?

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