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壇上に立つ佐摩と大路を見た春山が口を開く。
「うわーお。イケメン」
「何?タイプなの?」
「やめろよバカッ!それにしても二人とも彫刻みたいに綺麗な顔してるな!神は二物を~ってやつだな~」
「…そうだね」
そう言えば立ち去り際にスピーチが何とか言ってたな。
何となく今朝の謎の行動もあり、特に大路に対して警戒心を持っている私は身を屈めて春山の身体に隠れた。
でかい身体してくれててありがとう春山!
今とても感謝してる。
佐摩がマイクの前に立った瞬間、体育館内の空気が変わった。
まるで誰かに号令をかけられたかのように一同無意識に背筋を伸ばしていた。
「新入生代表の佐摩だ。今回は同率の成績となってしまったため、主席が二人という展開になった。しかし俺は全てにおいて一位を獲らないと気が済まない。レベルの低い奴とは関わりたくない。この高校の方針では成績が全てだ。シンプルで実に分かりやすいルールだ。俺が言いたいことはそれだけだ。この意味が分からない奴も俺に関わるな。以上」
「…なんかすごい奴きたな」
「…でも彼が言いたいことはこの学園において理に敵ってる。一位になるということはトップになるということ。自分の統治する範囲内に攻撃はしないけど、逆らうなら潰す。まるで王様だ」
「うーん。何かあんまり好きじゃないな。カースト制っていうの?ああいう考え方」
「まあね。けどまだ彼の表面しか知らない以上言葉の意味の深さや考え方について言及できないよ」
「めんどくさ…」
「そうだね」
春山は完全に嫌悪感を露にしていたが、正直私は今のスピーチを聞き、佐摩に対して悪い印象を持たなかった。
もう少し言葉をオブラートに包むべきだとは思うけど…。
佐摩の持つ独特の雰囲気、カリスマ性は人を惹き付ける部分がある。人を寄せ付けない雰囲気にも関わらず人を惹き付けるカリスマ性…。このアンバランスさに魅了される人は少なくないだろう。
「はははっ。佐摩君ありがとう。いや、実に素晴らしいスピーチであった。続いて新入生代表。大路君」
ぺこりとお辞儀をしてからマイクの前に立った大路。
佐摩の時とは逆に、体育館内が良い意味で柔らかい雰囲気に変わった。
「おはようございます。皆様初めまして。大路と申します。本日はこのような素敵な場をお借りさせていただきありがとうございます。皆様と今後素敵な高校生活の日々が送れることを楽しみにしています。園上高校に恥じない生徒の一員になれるよう邁進致します。今後ともよろしくお願いします」
「…なーんか拍子抜け。割とあっちの優男はまともだったな。良かった~」
「…定型文って感じだね。典型的な優等生タイプ」
「お?何かトゲのある言い方だな。ああいうやつ嫌い?」
「知らん」
あいつは私のファースト床ドンを奪った奴だ。お嫁にいけなかったら毎日高級明太子を送るように請求してやる。
「大路君ありがとう。君のような生徒も本校には必要だ。期待しているよ。よし、二人はそこの席に腰かけてくれ」
そう言われると、佐摩と大路は壇上にあるソファに腰掛けた。
「俺達は冷たい長椅子に座ってるのに。良いご身分だなチクショウめ」
後ろの席の男子生徒がボソッと愚痴をこぼした。
確かに!
私と春山は顔を見合わせた後、愚痴こぼし男子生徒の方を振り向き、親指をたてた。