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「…それで、君は私をどうしたいの?」

「どうしたいって?」

「…」


 余裕の笑みを浮かべる大路をまっすぐ見つめる。

 視線が重なる。



「知ってるの?」



 話をはぐらかすことは許さない。

 そんな気持ちを言葉にのせた。


 大路は何も答えない。視線は絡まったまま。



「私をどうしたいの?人のことを困らせてばっかり。楽しい?」

「逆だよ。君が困ってるときに僕が助け船を出してあげてる」



 ダメだ。話が噛み合わない。

 そして何より…



 この緊張感!!!!!苦手だよ!疲れる!!面倒事は避けたいと思うのに避ける度に泥沼に深入りしてる気がするよ!?




 緊張感負けして一瞬だけだらしない顔になった私を見た大路がぶっと吹き出した。


「ふふふは!本当に面白いね渚は。前はもう少し違う感じで面白かったけど今は今ですごく興味深い」


 こいつまた人の顔見て笑いやがった!

 許さん。いつか覚えとけよ。


「まあいいや。僕から君に話したかった個人的なことはここまで。後は君の方から歩み寄ってきてくれるのを待つよ」


 そんな日は一生こないと思います。


「はあ」

「それに」


 大路が言い終わる前に部屋のドアが蹴破られる大きな音と共に大きな身体が姿を現した。


「ホラーだね」

「え…」




 驚きのあまり声が出なくなる。

 見慣れた無愛想な顔。表情は見えないのに感情を理解できる事実にはいつも驚かされる。




「それにここ僕の部屋なんだけど」

「…」


 見慣れた彼は無言で大路に相対する。


「修繕費用は誰が工面してくれるのかな」


 ふふっと笑う大路をみて、彼がやっと口を開いた。



「俺はノックしたけど」


 インパクトの大きすぎる登場の仕方をした大きな身体の主が音を発する。

 方を僅かに上下に揺らしたその身体は走って探し回った証だろうか。


「ふふ。それにしても君も過保護だね」

「意味わかんないんだけど」

「春山くんの破天荒さが少し移っちゃったのかな」


 確かに春山は破天荒なところがある。

 でもこいつは破天荒という言葉は似合わない気がする。



「ハルと一緒にされてもね」



 無頓着、なんて言葉が似合う気がする。あ、でも無頓着にみえて意外と面倒見も良い奴だからなんて表現が似合うのかな。


「あんたも何でこんなとこノコノコ入ってんの」


 突如こちらに投げ掛けられた問いに身体が硬直する。声がでない。


「こんなところって酷いな。君達の部屋よりランクも良いし居心地は悪くないと思うけどね」

「慣れてる環境が一番でしょ」


 そして突然の登場の仕方にも関わらず、驚きを上回る安心感を覚えてしまった私はそれなりにこいつを信頼し始めているのかもしれない。


「それなら聞くけど、君こそどうしてこんなところに入ってきたの?」

「その人を回収しに来た」


 回収って私は粗大ゴミじゃないからな。


「ふうん。迎えにきてほしかったの?」


 二人の視線が私に集中する。

 自然と日浅の方に目線が動く。視線が交差する。


「早くくれば」


 こちらを見ながら無愛想に呟く日浅。


「…君に言われなくても一人で動けたから」

「お礼くらい言えば?あんた本当に可愛くないよね」


 ズキリと胸が痛む。

 安堵の気持ちに負の感情が上書きされる。何だこれ。イライラする。


「別に可愛いとか言われたくないから。…男だし」

「あっそ」


 ふふっと大路の笑い声が聞こえた。


「はあー。どんな形でも良いから特別になりたいなあ」


 突然意味不明な言葉を発する大路の言葉に首をかしげる。


「…とりあえずこの人ハルが呼んでたから連れてくよ」

「ふうん?君の意思で迎えに来たんじゃないんだ」

「何言ってんの?」

「ふふ。君とは協力関係になれると思ってたのにな」

「うざい。ほらあんたも早くいくよ」


 大路との会話を打ちきった日浅は、その長身を生かした大股でこちらに近付き手を引っ張ってきた。

 乱暴さは感じさせない優しい引っ張り方に何だか妙に居心地が悪くなる。

 …やっぱりこいつ苦手だ。

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