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大路の話を頭の中で反芻しているといくつか疑問点が沸いてきた。
「というか春山先輩っていつから生徒会長なの?私の…今年の新入生のテストを採点したってことは昨年も生徒会にはいたってことだよね」
気付いたときには声に出して問いかけてしまっていた。
「そうだろうね。春山生徒会長が会長になったのは昨年の途中かららしいよ」
そうなの?!…ってあれ?
「昨年の途中から…って?」
「前の生徒会長が生徒会長を辞めたから交代したらしいよ。辞めた理由は知らないけど」
ふっと笑みを作り、考えが分からない表情に変わる大路。
「辞退なのか、辞めさせられたのか」
先程睨み付けてきた元生徒会委員の彼を思い出し、何となく身震いする。
それは、その、もしかして、そういうことなの?
だとしたらこわすぎない?
「………前の生徒会長ってどんな人だったの?」
「さあ?僕も君と同じ時期に入学したのは覚えてるよね」
「…スミマセン」
頼りすぎた。いかんいかん。
「噂では聞いたけど、はっきりしてない情報を人に話すのはあんまり好きじゃないんだよね」
「でもさっき君の予想の話はしてくれたよね」
「予想はね。真実に絡めた僕個人の意見を言うのは構わないけど、確証を持てない話を人に吹聴するのは好きじゃないってことだよ」
小難しいこと言うなあ。
教えてくれないならそんな話ちらつかせないでよ。気になるじゃない?
「君は春山先輩と仲良いの?…私の監視役に任命されてたけど」
「あはは。監視役って随分な言い方だね。教育係、ね」
「どっちでも同じじゃない?規格外の動き方をしないように管理する人ってことでしょ」
小難しいことを言われたから小難しいこと言い返してる訳じゃないですよ?
「へえ。そう捉えられちゃったか」
他にどう捉えるんだよ。
でも大路の場合は本当に分からない。
春山兄の遣いなのか、大路自身の動きなのか。
さて。どっちだ?
「ねえ、他には気になることない?」
にこにことこちらを見つめながら問いかけてくる大路。
「ここは僕の部屋だよ。僕と君以外は誰もいない」
そんなことは分かっている。
「こんな日は、もう2度とこないかもしれないよ?」
そんな聞き方は意地悪だ。
この高校に来てから気になることずくめだ。聞きたいことなんて山ほどある。
でも今、最も気になることは1つ。
どうして大路がひなた…私の双子の妹の名前を知っていたのか、ということ。
偶然なのか、これもカマかけなのか。
聞くことで何か分かるのか。それとも私に仕掛けられた罠なのか。
大路は誰の味方なのか分からない以上、迂闊に聞けない。
「じゃあ質問がいくつかあるんだけど」
「どうぞ」
ふうっと息を吐き出す。ここからは頭脳戦になる。落ち着け私。
「君、私の名前を教える前に知ってたよね。あれは、どうして?」