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「え?兄貴について?」
敵が私のことを知っているのなら私も敵に対する知識をつけるべきである。
「うん」
春山(弟)を利用するみたいで何だかすごく申し訳ない気もするけど仕方がない。平和な学園生活のためだ。
「何で急に?兄貴と接点あったっけ?」
「吹奏楽部に入部してるからね」
嘘は言ってない。
「あー!そうだった!哲と一緒に入ったんだっけ?」
「そうそう」
あれ?
「そう言えば春山くんと日浅くんっていつから知り合いなんだっけ?」
「え?幼馴染みだよ!」
「幼馴染みっていつから知り合いの定義になるの?」
「物心知れた時から?」
「ってことはお兄さんと日浅くんも知り合いなの?」
「うーんどうなんだろ?兄貴に直接聞いてみたら?」
無理です!!!
「えーっと…第三者の意見を聞きたいというか…仲良くなるために色々知っておきたいなーみたいな」
「ええ?なんで?よく分かんない。本人に聞くのが一番早いよ?」
思い立ったらすぐ行動できる春山には理解しにくかったみたいだ。
正直に話した方が伝わるのかなー。でも急に聞く勇気はない。違う角度から攻めていこう。
「春山くんってお兄さんとは仲良いの?前、一緒に吹奏楽部までついてきてくれたことあったよね。あの時に会うの少し躊躇ってるように見えたから気になって」
「…それ兄貴が聞いてってお願いしてきたの?」
確かに弟に対してヤンデレブラコンな面が垣間見えたあの春山兄なら誰かにお願いしそうだ。
「いや違うよ。個人的に気になっただけ。そもそも君のお兄さんとはそんなに仲良くないから。仮に頼まれてたとしても春山くんが伝えてほしくないことは伝えない。君を優先するよ」
「!!!」
春山の目がキラキラと輝いた。
「…なに」
「渚ー!!!ありがとう!嬉しい!!!俺も渚大好き!」
なんか違う形で変換されてる…?まあいいか。
「俺…俺、今本当に一世一代のプロポーズされた気持ちだよ!」
「してないけどね」
「えへへへ」
ニコッと笑った笑顔の二人の顔が重なる。無邪気な笑顔。
「そんなに喜ぶこともないと思うけど。春山くんの方を優先する人の方が多そうじゃない?人を惹き付けるというか…多分リーダー気質だし」
「えー!兄貴の方が昔からリーダー気質だよ!」
「…例えば?」
「同じ吹奏楽にもいたと思うけどおかん的な存在いるじゃん?右近左近みたいな」
「?」
誰だよ。おかん?
「ほらマーマさんと…」
「あ~!早川先輩?」
「え?」
「え?」
違うの?だって昨日マーマって呼んでなかったっけ??春山兄のあだ名は広すぎて網羅してないけどあんだけ連呼してたら覚えたよ流石に。
「あ、そっか今はあの人もその呼び方になってるんだっけ!」
今は???
「前はかーちゃんって呼んでたみたいなんだけどすごい嫌がったから変えたんだって」
そりゃ嫌がるわ。
「つーか何で渚はかー…じゃなくてマーマさんのこと知ってるの?」
「マーマさんって早川先輩?」
「そうそう」
「いやだって吹奏楽部だし」
「ふーん?まあいいや!」
いいのかよ。この様子だと納得してないって感じだけど何でだ?早川先輩が吹奏楽部にいるの知らないのかな?
「まあそんな感じで色々あだ名変形して今二人とも同じ呼び名で呼んでるみたいだけどさ、あの二人かなり曲者なのに引っ張っていけてるの本当すごいもん」
二人…?昔のことを思い出してか春山の話は断片的でよく分からない。それより春山も日浅みたいな曲者引き連れてすごいと思うけどな。
「日浅くんも結構癖強いと思うけど」
「そうかな?哲も色々あったからなー。真さ…あっ!」
バッと口を抑える春山。
いっけね!みたいな顔をしてる。コロコロ表情が変わって本当に面白いな。
「あ!あー…俺、あ~~ごめん!忘れて!!!」
「じゃあお兄さんのことを教えて下さい」
「え~…」
まだ渋る春山。もしやこいつもブラコンなのか?
「ここにいたんだ。日向くん」
突然聞こえた声に身体が震えた。
「あれ!大路だ!どうしたの!?」
「君のお兄さんから、日向くんの教育…お世話係を任されてね」
「渚ってそんなに成績悪かったっけ?」
春山。私は努力家だぞ。君と一緒にするな。いや8組だから否定もできないのか。
「うーん?どうだろうね」
「大路も吹奏楽部入ってんのか?」
「あはは。まあそんなとこ」
撒いてきたと思ったのに追い付く大路。将来すごい組織とかに入れそうだ。
大路が教育係…生徒会委員として私のパートナー任命されたのは昨日の生徒会入りした委員会の時だった。
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