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「入試の点数。組分け」

「?」

「特別枠の定義」


 特別枠…?疑問に感じると同時に口が動いていた。


「特別枠?」

「あれ?入学式の時に毎年説明あるんだけどなあ?生徒会の構成については覚えるよねえ?」

「確か成績上位者…ですよね?自分は該当しないと思うのでなれない気がするんですけど」

「そ。各学年の成績上位者が2名ずつ計6名と、全学年の中から総合的に学校判断で抜擢される特別枠の子が3名だねえ。で、特別枠のうち一人は生徒会長の推薦で決まる。勿論審査は入るけどねえ」

「いや…審査が入るならやっぱり難しいのでは…?何をもって推薦するんですか?」

「そこは何とでもできるからねえ。ちびちゃんは気にせずに待っててよ~」


 いやいやいや!色々気になり過ぎるんだけど。


「なにこれ」


 教室のドアが開く音と共に懐かしい声が鼓膜を響かせる。


「やあやあ待ってたよ~最後の役者トールくん」

「…何なのこの状況」 


 何でここに日浅がいるの?

 そんな思いを込めて見つめていると目が合った。

 日浅の目が生徒会委員の面々と私を交互に見渡す。


「何であんたこんなとこにいるの?」


 私が日浅でも同じことを思うよ。いやでも待って!こんなとこって言うってことはここで生徒会の委員会があること日浅は通達受けてたのか?仮にそうだとしたら日浅こそどうしてここにいるのか疑問が湧く。

 悶々と考えを巡らせていると春山兄の声が思考を遮った。


「ちびちゃんには騎士(ナイト)がたくさんいて羨ましいねえ。俺もそのうち魅了されちゃうのかな?」


 春山兄のバッチを持っている方の手が私の顎をとらえ、上に向かせる。


「は…?」

「人を引き付ける力があるちびちゃんはやっぱり必要なんだよねえ。俺の創りたい生徒会に」

「…彼を呼んだのは春山先輩ですか?」

「どうかなあ?」


 ふっと笑みを作る春山兄。やはり笑うと春山弟とよく似ている。そのせいか少し落ち着きを取り戻すと同時に大事なことを思い出した。そして勝ったと心の中でガッツポーズをとる。


「…私図書委員なんですよ」

「ん?」

「生徒会に入ってる人って他の委員会に入れないですよね」

「それで?」


 え?それでって…。


「こういうやり方は好きじゃない」


 突然、日浅が口を挟んだ。


「トール君が口論しかけてくるなんて珍しいねえ」

「ハルが知ったらどう思うのかな」

「あら!ケンケンのこと?でもそれはトール君も同じじゃないのかな?」

「……どういう意味」

「言っていいの?ここで?」

「あんた本当に似てないよね。ハルと真逆」

「顔は少し似てるって言われるけどな~。あれ?そういう意味ではトール君のところも同じかなあ?」


 一瞬日浅の表情が歪んだ。…気がした。


「…用件は何」

「話が早くて助かる!ちびちゃんも言ってた通り、委員会の掛け持ちは禁止されてるんだよねえ。だから、図書委員をトール君が担ってくれれば解決すると思わない?」

「は?そんなの無理でしょ」

「そうでもないんだよねえ。あくまで新旧委員の生徒間で()()があった場合に限り認められるんだよ~」


 日浅の目がぐるりと教室を見回す。思い思いの表情で状況を見守る生徒会委員。バッジをとられた元生徒会委員。渦中にいる春山兄と手首を掴まれている私。


「あんたはその人を委員会に入れたい。で、その為に何らかの手段で一人失脚させた。でもその人は図書委員に入ってる。だから俺がその人の代わりに図書委員になることで生徒会に入れるように手配したいってこと?」

「え~違うよ~。語弊のある言い方やめてよ~。ちょっとしたトラブルがあって生徒会の輪を乱そうとしてきた生徒会委員がいて、存続のためにやむ無く辞めて貰った。そのタイミングで()()抜けた生徒会の穴埋めしてくれそうな生徒がいた」

「偶然ね…」


 鼻で嗤う日浅。


「偶然だよ~」

「…」

「生徒会委員候補の子は別の委員会に入っていた。でも委員長に苦手意識があってやめたいと思っていた。更にはその生徒会委員候補の子が入ってる委員会を交代してくれる子が現れた。完璧だよねえ?」

「………あんたはどうしたいの?」


 突然視線を向けられ、身体が震える。前髪の隙間から見える瞳に真っ直ぐに捕らえられる。


「え…っと」


 でもまって。




 これ究極の選択じゃない!!?セクハラ委員長かなんか謎思考危険因子ありまくりの春山兄どちらかを選べと!!!


「あ、どっちも嫌です」


 ぶっと吹き出す日浅。


「正直すぎ」

「いやだって究極の2択過ぎるでしょ」

「だから正直すぎ。本人目の前にいるし」


 そうでした!!!


「ちびちゃんに選択肢はないよ」

「え?」

「だって君は」


 グイッと腕を引っ張られる。そして


「秘密があるでしょ?」


 小声で囁かれた言葉。私と春山兄にしか聞こえない大きさで。

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