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入学式。
保護者の人影は全く見当たらない。
新入生らしき生徒は入った順に長椅子に腰かけていく。つまり必然的に私は春山と隣の席になった。
「うはー!こんな入学式新鮮すぎるだろ」
「どちらかというと斬新って感じだけどね」
「うははっ。確かに!」
そんな他愛ない話をしながら待っていると、ステージ上に校長らしき人物が現れた。
「おはようございます。私は園上高校の校長をさせていただいております園上と申します。本日は皆様のような優秀な生徒を本校に迎え入れることができ、誠に光栄です」
「かってーなー。でも優秀だって!嬉しい~!」
春山が小声で囁いてくるので、うるさいと小声で諌めながら小突いた。
校長の話は続く。
「堅苦しい話し方はやめよう。我が高校は君達がご存知の通り全寮制となっており、生徒が一定条件をクリアした上で外出するのは構わないが、学外の人間がこの校内に足を踏み入れることは許されていない。そのため本日も保護者の姿は見えないが、プロのカメラマンを雇い撮影しているため安心しなさい」
「なーんか安心の意味が分からなくなってくるな。安心のカオス?」
なにその日本語。
「聞いたことないよ。そのことわざ」
「君たちが卒業できたときにはアルバムに思い出として残すことができる。ただし、外部の者に卒業アルバム含む学内の写真を見せてはいけない。見せ合えるのは生徒間のみだ。また三者面談等は先生が自宅もしくは電話会議等で行う」
随分な徹底ぶりだ。
「なお、これら含む我が高校が提示した規則、契約を破った場合には退学始め然るべき罰則に従ってもらう」
校長と一瞬目が合う。恐らく私に対して牽制しているのだろう。
こ…こわい。目力強すぎだろ!
少し異常に感じるかもしれないが、この徹底したルールがこの園上高校をより神秘的な存在にしている。
屈指の学業もしくは運動成績の生徒を輩出する高校。
テレビ特集の依頼も何度もあったが謝絶。
学校側が各地の中学を周り、生徒達に演説する。
そして、この神秘の地に一足踏み入れてみたい、そんな好奇心も相まって都道府県内外からの入学希望者も年々増幅傾向にあるという噂も耳にしたことがある。
「本当なんだな。俺家族にアルバムひっそり見せようと思ってたんだけど。つーか堅苦しいわ。話し方高圧的になっただけで」
「やめときなよ。そんなことしたらどうなるか分からない」
「う~こわ!俺らまだティーンズにして社会の闇に巻き込まれてる!!?」
正直私も同じ感想だったが、隣で震える大型犬をみて何とか冷静さを保てた。
「うーん。まあでも学内のってことは、学外で撮った写真は見せてもいいってことだよね。あくまで校長が守りたいのは学内の秘密みたいだし」
「おー!なるほど!とんち利いてるな~」
「それって褒めてるの?」
「それでは受験時学業成績主席の者に新入生代表挨拶をしてもらう。佐摩君、大路君、来たまえ」
聞き覚えのある名前だなと思いながら壇上を見ていると、見覚えのある二人が袖幕から壇上に姿を表した。