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 音楽室。ドアが少し開いていて明かりが洩れている。

 ひょっこり顔を覗かせる。


「こんばんは」

「おっ!日向!重役出勤かあ~?遅いじゃん」


 赤城先輩が椅子にもたれかかりながら首だけをこちらに向けて話しかけてくれた。楽器の練習する気ゼロだな。


「…すみません。忘れ物がありまして」

「えー何だよ俺らに会いに来た訳じゃねえの?」


 神田先輩が会話に割り込んできた。


「まあっ!かんちゃん!僕という人がありながら日向きゅんに浮気する気!?」

「あかーぎぃ!そんなっ!あたしはあなたを取るわっ!」

「…」


 この人達いつ見ても楽しそうだな。


「おい日向!ちゃんと入ってこいよ~」

「そうだぞつまんねえぞ~彼女できねえぞ~?」


 何だよ体育会系かよ。先輩もいないよね?

 あと私は女だけどな。


「ベイト先輩は今日いないんですか?」

「あっ!お前先輩のこと二人同時に無視とか度胸ありすぎ!」

「そうだぞ!怒っちゃうぞ~?それとも日向はまさかのベイト狙い…!?」

「きゅーん!」

「…」

「3馬鹿やめろ。新入生が困ってる」


 救世主早川副部長が降臨なさった。後光が見える。ありがたや…。


「あ、そうですか」

「3人いないのに3馬鹿呼ばわりするなんて酷い!」

「…お前らセットのイメージが強いんだよ。あと日向、ベイトは今日はいない」

「そうなんだよ!あいつ今日は女引っかけに行くって!」

「こらあっ!ダメよかんちゃん!」

「ごめんなさいませっ!」

「だからお前らやめろ!うるさい!」


 本当仲良しだなこの人達…。ほっこりするな~。

 

「…兄貴いる?」


 私の身体に身を隠しながら春山にしては珍しく小声で耳元に囁くように聞いてくる。隠れきれてないぞ春山。


「…待ってね。確認してみる」


 室内を見渡すと、早川副部長、山田先輩、赤城先輩、神田先輩、堺君がいた。


「カーテンに隠れてたりしたら分からないけど見た感じはいないよ」

「カーテンって…兄貴何のために隠れてんの?」

「知らないよ。君のお兄さんならしそうだと思って」

「確かに」


 妙に納得した顔で春山が頷く。

 冗談で言ったつもりだったんだけど。


「ってことは哲もいなさそう?」

「うん」


「ひーむーかーいー!何独り言言っちゃってんの?そういうキャラ!?」

「どういうキャラですか」

「さっきからぶつぶつ言ってんじゃん」


 赤城先輩と神田先輩が絡んでくる。どうやら部員の皆の位置、角度から見ると春山は見えないらしい。良かったな春山。


「今日って出席5人だけですか?」

「あー来てたけど皆帰ったよ。俺らはダラダラ残ってただけ」

「…お前ら先輩も一括りにまとめるとは随分偉くなったな」

「早川先輩と山田先輩はほら!心の広いお方ですしおすし~?」

「なめてるのか?」

「…すんません」

「で?日向は自主練でもしにきたのか?そんなとこ立ってないで入ってこい」

「あ、いえ。人探し中でして。自分と同日入部したピアノ上手な1年生って今日来ましたか?」

「え?誰?」

「あー!あの大きい子か!」

「やだっ!かんちゃん!大きいってそんなっ!」

「あかーぎい!違うのよっ!」

「日浅くん…だったかな?来てないよ」


 山田先輩が答えてくれた。早川先輩と赤城先輩と堺君は心当たりがなかったようだ。神田先輩は覚えていたみたいだが、ふざけて話を脱線させようとした。

 そう言えばあの時いたメンバーの顔覚えてないや。春山兄がいたことは覚えてるんだけど…そもそも当初吹奏楽部にこんなに通うつもりもなかったし。


「そうですか。すみません。ありがとうございました。さよなら」

「えー!日向もう帰るのかよ!つまんねー!」

「…すみません先約があるので」

「まさかの日向きゅんも女漁りする悪!?」

「だから何でそうなるんですか」

「やだあっ!かんちゃん!男なんて皆不潔よおっ!」

「君は俺が守るよおっ!」


 性別設定逆転してるから。設定甘々だな。


「それではまた来ます。お疲れ様でした」

「お疲れ様」

「お疲れ」

「おっつー!」

「つー!」

「お疲れ様です」


 一礼して音楽室を後にする。


「ここにはいなかったみたいだね」

「そっかあ。じゃあ次探そう!」

「…ごめん。私はちょっと…もういいかな。明日会ったときに話すよ」

「分かった!じゃあまた明日!」


 気が重い。

 善は急げ…か。席も前後だし明日会ったら開口一番に謝ろう。

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