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委員会が終わり、よぼよぼと歩いていると前方から声が聞こえた。
「おお?ちびちゃん?」
「あ、こんにちは」
春山兄だった。
遭遇率高っ!行動パターン似てるのかな?
「あれ?日向君?」
春山兄の後ろから大路が顔を出した。
げっ!何で大路と春山兄が一緒にいるの!?
「あはは。本当に顔に出るよね」
「あらら?ちびちゃんとぷーぷー知り合い?」
……………ぷーぷー?
えっ?もしかして大路のこと…?
「ふふ。まあ少し」
「いえ。違います」
「あれれ?意見が割れてるよ~」
「嫌われてるみたいなんですよ。僕」
「ありゃっ!ちびちゃんダメだよ~ぷーぷー可哀想~」
「いやいやいや!」
策士大路の策略にのせられたーーー!
「それにしても本当に俺達遭遇率高いねえ。あっ!もしかして俺のファン!?困っちゃうな~」
「違います」
「ノッてよ~虚しくなっちゃうー」
「…先輩も委員会だったんですか?」
「唐突な質問だねえ。どうしたの急に?ちびちゃん委員会だったの?」
「はい。まあ…」
「そっかそっか~お疲れさま」
本当に気さくな人だなあ。
…あれ?
そう言えば八木先輩と春山兄って同じクラス!?
同じクラスなのに雰囲気違いすぎる…。
それにしても二人が同じクラスにいる場面が想像できない。どんな感じなんだろう…。
「あの…八木先輩ってご存知ですか?」
「ん?どこのヤギサン?」
「あ、えっと下の名前は知らないんですけど3年1組の…」
「あ~…。ちびちゃん図書委員会になっちゃったんだ?」
…………なっちゃったんだ?
「…なっちゃったんです」
「う~んなるほど。メエメエはねえ。癖が強いからなあ」
メエメエ…?
八木…ヤギ…?えっ…?
「ちびちゃんはあんまり深入りしない方が良いかもねえ」
「…」
どんな人だよ。
余計気になるわ。
「気になる?」
「まあ少し…」
正直あだ名が衝撃的過ぎてそっちの正しい由来の方が気になります。
「うーん。平たく言うとねえ。なんだろうなあ…」
春山兄が言い淀む時点で関わってはいけない人なのは分かる。でもどういう方向で危険なのかが分からない。
「根は悪い子じゃないんだけど、俺は無理。みたいな?」
「一番ダメなやつじゃないですか!」
「あ~上手く伝わらないなあ。気になるなら関われば早いよ」
今さっき関わるなって言ったよね!?
「ま、パンドラの箱っていうやつだよ~」
「はあ…」
「さて。ちびちゃんは今から部活?帰り?」
「帰ります。先輩は部活ですか?」
「そんな感じ~?掛け持ち~」
「…」
この人確か部長だったよね…?
「大丈夫だよ~マーマと守護神がいるからねえ」
誰のことを指してるのか分からないけど多分吹奏楽部員のことだろう。
そして他力本願だな。
「前から気になってたんですけど先輩って皆にあだ名つけますよね?」
「んふふ~素敵でしょ?」
「それって距離感を近付けるためにつけてるとかそういう理由ですか?」
誰のことを指してるのかよく分からなくなることもあるから出来ればやめてほしいんだけど。
「うーん?距離感か~まあそんな感じかなあ。話すと俺の人生観を語ることになるし、人のそういう話聞くの嫌でしょう?」
「いや聞いてみたいです」
「いやーん恥ずかしいよ~」
手で顔を隠しながらくねくねする春山兄。
結局言いたくないだけかよ。
「…」
「また明日会えると良いね~じゃあねえ」
「またね。日向君」
そう言うと春山兄と大路は同じ方向に歩いていった。