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3年1組の姑が少し威圧的な雰囲気で言葉を発した。
「先生。ありがとうございます。それにしても揃いが悪いな。まだ来てないのは3年4組と2年2組と1年6組か」
1年で遅れるってすごい度胸だな。
「一軍はまだしも二軍の分際で遅れるとは…」
…そうでしたね。そういう考え方なんだった。
目線だけで周囲を見回すと、二軍、三軍の組に属する生徒は居心地の悪そうな表情になっていた。
な そりゃそうだよね…。
吹奏楽部の関係性を目の当たりにしたせいか、グループ活動の時は園上高校独特のルール、勝者絶対の原則は希薄化するのではないかと予想していた。
でもそれは違った。
むしろ吹奏楽部が特殊だったのかもしれない。
先生が手を2回叩く。
「仕方ないですよ。始めましょう」
「そうですね」
同じ委員会なんだしもう少し仲良くしても良いと思うんだけどな~…。ギスギスしてるより作業も捗りそうなのに。
「皆さん改めて一部の生徒は初めまして。図書委員会担当教師の門倉です。1年生は勿論、2年生、3年生と委員会活動や図書委員が初めての生徒もいますよね。各担任の先生からお話しがあったかとは思いますが、一応説明をしますね」
1年8組はなかったよ…。
詳しい説明は委員会でまたあるから省略するって説明で終了しましたよ。
「委員会毎にそれぞれ方針やミーティングの頻度も違いますが、図書委員は毎週水曜日にミーティングを行います。遅れや欠席は厳禁でお願いします」
「遅れた場合お前たちの」
「八木君。その説明は結構です」
「…失礼致しました」
さっきから偉そうな3年1組の先輩は八木というらしい。
「図書委員の方針は基本的には皆さんで話し合ってもらいます。経費や方針の大枠はこちらで決めますが、生徒の自主性を重んじたいと考えていますので。では、あとは宜しくお願いしますね」
「はい。俺は3年1組の八木だ。図書委員は毎年担当させてもらっている」
お局様というわけだ。
「図書委員の方針について恒例の決め方だが、一軍の多数決により決定される」
「質問です」
2年7組の生徒が手を上げた。
「質問を許可する」
「それって二軍、三軍がミーティング出席する意味あるんですか?部活行きたいんですけど」
「意味はある。意見は全員に出してもらう。ただし、採用権は一軍のみにある。そういう理解をしてもらう。あまりないことだが、三軍の意見が一軍を上回り採用されるケースもある訳だ。光栄だろ?」
「……分かりました。ありがとうございました」
義務はあるのに権利はない。
不平等な気もするけど、それが嫌なら一軍に上がってこいということなのだろう。
「八木君ありがとうございました。そういうことで一先ず大きな取り決め以外の活動については私からは口出ししません。皆さんで自由に決めてください。勿論決まった案は最終的に私に相談してもらうことにはなりますが、経緯については問いません」
鳥木先生といい放任主義多すぎだろ。
「さて。では本日は1つ大きな取り決めがありますので皆さんで議論をお願いします。テーマはお昼、放課後のカウンター担当です。平たく言えば本の貸出、返却、整理などの諸業務です。期日は今月末。来月5月からカウンターの担当をお願いします」
3年6組の生徒が素早く手を上げた。
「はーい!パスです。部活あるし、一軍のエースがいないんじゃチームの士気も下がっちゃいますよ」
「分かった。一軍で他に意見は?」
進んでやりたがる人はおらず、八木先輩以外一軍と二軍のカウンター担当はいないという結果に着地した。
「では三軍と今日欠席した3名、それから俺の10名でカウンター担当を回していくことにする。シフトについては来週の会議で正式に決める」
死人に口なし。
欠席すると一軍クラスであっても決定権はなくなる訳だ。
もっとも、8組であればどちらにしろ関係なさそうだけど。
「大枠は決まったようですね。それでは私はこれで」
そう言うと門倉先生は図書室から出ていった。
「一応、他にも図書室の活性化に向けて話し合いを進めたいがこの不揃いだからな。全員が揃った時に続きを行う。本日のミーティングは以上」
こうして初の図書委員会は幕を閉じた。