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 水曜日の放課後。



 今日は初の委員会。図書委員の委員会実施場所は図書室だった。

 貸し切り!

 別に読書家ではないんだけど何となく楽しい気持ちになる。



「大変だねー。委員会とか。頑張って」

「君こそ結局バスケ部気に入ってるんだね」

「…うざい。遊びだし」

「たまには吹奏楽部も来なよ。部長たちも昨日淋しがってたよ」

「……うざい」

「照れてるの?」

「うざい。あんたと違って俺忙しいから」

「あはは。ごめんって。じゃあまた明日」



 授業が終わると、日浅はバスケ部へ、私は委員会へと向かった。













「失礼します」


 ノックをして図書室に入る。

 既に数人生徒が円形テーブルに腰かけていた。椅子の前にはプレートが置かれている。何だあれ?


「遅い。君、何年何組?」


 一番上座に当たる場所に座っている生徒が声を掛けてきた。

 遅いってまだ開始15分前なんですけど…。


「…すみません。1年8組です」

「分かった。じゃあそこの席だね」


 今立っている場所から最も近い席を指差された。扉から一番近い席。下座だ。


「分かりました」


 こんなところにまで何軍に属しているのかが影響してくるのか。徹底してるなあ。


 席に座り、自分の名前が間違えていないのかプレートを確認してみた。

 しかしプレートに私の名前は書かれていなかった。


 書かれていたのは学年と組だった。


「…」



 ………これはちょっと感じが悪いのでは?



 ちらっと最初に話しかけてきた上座の先輩に目を向けると、3年1組と書いてあった。

 その左右隣を挟むように一軍、二軍、三軍の順で並んでいる。同学年の軍の次に並ぶのは次年度の学年の同軍だ。

 …なるほど。




「時間ですね」


 司書カウンターの方からテノールの心地よい声が聞こえてきた。

 声のした方向へ視線が集中する。図書委員担当の先生が司書カウンターから立ち上がり、こちらに向かってくるのが見える。

 若い。教育実習の先生とかかな?


 先生に注目したついでに、席を見回す。

 空席が3席ある。基本的には向かいの席は自分の同軍に値する人が並ぶのだろうか?私の目の前には1年5組の人が、隣には2年8組の人が腰かけていた。

 一軍の人たちが遠い。中世貴族の食卓かよ。

 あっ!3年1組の姑があくびした!手で押さえろよ!ここからでもしっかり見えてるからな!?


「この距離感で話ができるのかと言いたげな顔をしている人もいるが、これはこちらの先生の案だ」



 視線が先生に集中する。

 やはり若い。大学生か社会人2年目か3年目かそんな感じにみえる。そしてイケメン。

 ここの先生って男女ともに全体的に顔のレベル高いけど、教職って顔採用のボーダーとかあるのか?


「一部の生徒は初めまして。図書委員の取り纏めを行う門倉です。物理的な距離と心理的な距離は比例すると私は考えています。特に1年生の皆さんには一軍、二軍、三軍に対する考え方がまだ甘い人もいますからね」



 刷り込み教育…そんな言葉が頭に浮かぶ。



 自分より上座に下級生が見える場所に座る人もいる訳だ。でもこの高校の考え方を反映した理に敵った並び方なのかもしれない。上級生にとっては複雑な並び方だろうな…。





 隣の席の生徒の手が視界の端に映った。

 その手は微かに震えていた。

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