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園上高校入学式当日。
天気は快晴。まさに入学式日和だ。
私は春山に絡まれる前にひっそりと早起きして入学式の会場に向かっていた。
途中、校門の方から車の入ってくる音と女の子たちのキャアアアアアという黄色い声が聞こえた気がしたが、無視した。
だってここは男子校。
共学で同じ通学路でもないのに校門まで女の子がついてくるなんて漫画じゃないんだし、あり得ないでしょ。漫画じゃあるまいし。
しばらく歩くと、入学式会場の体育館に続く広い中庭についた。学内はまるで大学キャンパスのように整備されていた。まだ大学行ったことないけど。
入学式まであと一時間。少し疲れた私は休憩するべく芝生の上にコテッと横になった。
眠くなってきた。
「楓達も今日入学式なのかなー。いよいよ高校生活始まるのか。どんな人達がいるのかな」
「それ僕も同じこと思ってた。君も早起きが好きなの?」
「!!」
独り言に返ってきた思わぬ返事に目を見開き反応すると真上から見下ろす二人の男が見えた。
声をかけてきた一人目の男は優しげな顔でまさに王子というイメージにぴったりだった。
もう一人の男は切れ長の瞳に薄い唇、知的な顔で人を寄せ付けない雰囲気…王様というイメージにぴったりだった。
…こいつ本当に中学生か?
対称的な二人だなと思い、やはり人間綺麗なものに見いられるのだろう。
ぼーっと見つめていると、王様が睨み付けてきた。
「お前何でこんなところで寝てるんだ?」
何だろう…怪しまれてる?
「まあまあ大地。ごめんね。こいつ口は悪いけど良い奴なんだ。今のも翻訳すると、こんなところで寝ると風邪引くぞって心配してるんだよ」
「涼介!俺はそんなこと言ってない。勝手な解釈するな」
「ふふふ。ごめんね。僕は大路 涼介。こっちの無愛想なのは佐摩 大地」
大路がニコッとして手を差し伸べてきた。
「初めまして。日向です。よろしく大路君と佐摩君」
私が大路の手を無視してそう言うや否や、大路が屈み、差し伸ばされていた手が、急に私の顔の真横の芝生につけられた。
「!?」
「…変わらないね。相変わらず」
耳元で小さな声で囁かれた言葉に混乱する。
「…?初対面…だよね?」
大路が意味深なことを言うせいか異性とこういう体勢で近付いたことがないせいか分からないが心臓がバクバクと音をたて始めた。
「…そうだね。昔の知り合いに似てたからつい。ごめんね。こわがらせちゃったかな」
そう言うと立ち上がり、私も立てるように手を差し伸べてくる。
「いや結構です。もう少し横になってるので」
「そっか。それは残念だな」
肩を竦める大路。
「涼介。何やってんだよ。お前そっちの趣味あったのか…?悪いな日向」
「いやキニシテマセン。サヨナラ」
「あはは。本当にごめんね。大地行こうか。スピーチの準備あるもんね。またね渚」
「うん。マタネ」
そう言って手を振り別れた。
…ん?私名前まで名乗ったか?
一瞬疑問に思ったが、疲れがどっと襲ってきた。スマホのアラームをセットして目を閉じた。10分だけ仮眠しよう。