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 春山兄に保健室の場所を教えてもらい、向かうことにした。春山兄は保健室には用がないとのことで別れた。

 おお、保健室発見。



「おはようございます」


 ガラッと開けて小声で挨拶をする。寝てる人もいるかもしれないし。





 …返事がない。

 先生不在か?それとも声が小さくて聞こえなかったのか?




「失礼しま」

「あっ」


 あ?


「ダメだよ…」


 はい?


「…さくくんっ」

「先生、可愛い」



 リップ音が響く。


 ん…?リップ音…?

 そして今男の声が先生と呼んだ気がしたけど…。

 いや私が言うのもおかしいけど、男子校だし女がいるとしたら先生しかいないからもしかして…。



「やめっ…」

「しーっ。良い子は声我慢できるよね?」





 ………………………。




 あの…。ここ学校ですよね?



 





 …終わる気配なし。

 こんなところでは休むものも休めない。引き返そう。


 体の向きを変えた瞬間、肩がドアにぶつかり大きな音が響く。


「えっ」


 瞬間男女の驚いた声が聞こえた。

 

 直後、女性の声が大きく響いた。


「誰かいるの!?」


 まずい!逃げなきゃ!


 そう思い体を動かそうとするよりも早く、ベッドを囲うカーテンが開かれた。


「待ちなさい!」


 女の人の声が響いた。


 少し髪の乱れた女性…白衣を着ていることから保健室の先生で間違いなさそうだ。美人だし女性らしい体つきだ。

 …率直に言うと羨ましい。



「だあれ?君」


 女の人と一緒に男が顔をひょっこり覗かせた。

 美形…だけど少しチャラそう。ホストにいそうなルックスだ。


「あの、今来まして。誰もいないと思って帰ろうとしたんですけど」


 思わず早口になってしまった。何も聞いてないことをアピールしようとしたが、反って不自然になる。

 急に顔に熱が集まる。

 さっきの音源がこの二人なのかと思うと何となく気まずい気持ちで一杯になった。


「あら、そうなの」

「はい」

「初めまして。私は河井。保健室の先生よ」


 そう言うと河井先生が安心したように笑い、こちらに歩み寄ってきた。そしてギリギリまで顔を近付け私の顔をまじまじと見つめてくる。そして両手で頬を包まれた。


 顔近い!顔近いよ!


「…あなた可愛い顔してるわね。…タイプかも。色々物足りなくなったら相談しに来てね…?何でも力になってあげる」


 そう言うと耳にフッと息を吹き掛けられた。


「ひいっ!」


 貞操の危機!!!

 逃げろ!全力だ!全力で逃げろ私ーーー!!


「あら。初なのね。かわいい…」


 ひええええええええええええええええええ!!



「先生、妬けちゃうなあ」


 チャラ男が左手をポケットに突っ込み、右手で髪をかきあげながらこちらに歩み寄ってきた。



「うふふ」

「さっきまでキスだけであんなになってたのに」


 二人の間に甘い空気が漂う。

 あんなにって何だよ。こいつら私見えてんのか?


「もうっ…怒るわよ」


 あの…もう帰って良いですか?


「えっと…それじゃあこれで」

「あっ待って。保健室に来たってことは怪我とかしてるんじゃないの?」


 河井先生が体に手を巻き付けてきた。


「先生。ダメだって。こわがってるよ」


 チャラ男がくすくすと笑う。


「ふふ。かわいいじゃない」

「先生そっちも好きなんですね」


 だから何の話だよ!

 二人で話せよ!巻き込まないで!


「あ。職員会議の時間。佐久真君、あとどのくらい保健室いる?」

「姫が戻るまで」

「まあっ…」


 寒気がした。

 しかし哀しきかな。

 すごく寒い台詞の筈なのにチャラ男が言うと女性をときめかせるフェロモンが放出される。

 くっそー!イケメンめ!


「じゃあ開けっ放しにしておくわね。じゃあえっと…名前は教えてくれなさそうね。君も好きなだけいてね」

「あ、はい」


 即行で逃げ出そう。心に強く誓った。

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