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「よしこれで委員会全部決まったな」


 黒板をカンカン叩いた後、鳥木先生がノートに何かを書き込んでいる。委員会のメンバーの登録かな?



「今週の水曜の放課後に各委員会の顔合わせがあるらしいから、忘れずに行けよ。場所はそれぞれ後で伝えるから委員会担当者はホームルーム終わったら黒板前に集まれ」



 顔合わせってやつか?それとも委員会活動も力入れてるのか?生徒会も特権を持ってるし、委員会も何か特権があったりするのかな~。


「次に日直の仕事だ。クラスの日直は毎日変わる。これは出席番号順だ。日直は日誌と号令を任される。あとは翌日の日直が誰かを周知することも仕事だな。やり方は任せる」


 放任主義というべきか自由主義というべきか…。


 教室のドアがノックされる。


「鳥木先生、ちょっと」


 知らない顔の先生が教室の扉から覗いた。


「はあ?ホームルーム中だぞ。珍しく仕事してんだから邪魔すんなよ」

「良いからちょっと」

「まだ委員会の説明とかもしてねえぞ」

「別の生徒を派遣して説明させます」

「なんで生徒に教師の役割任せんだよ」

「あなたは部活動での指導を生徒にも任せてるでしょう?それとも部活動は遊びなんですか?」

「あ?」

「そんな屁理屈ばかり言っているから8組の担任に…おっと失礼」


 ピリついた雰囲気になる。

 なに!!?こわっ!


「…生徒に聞かれる」

「だから早く来て下さいと促してるでしょう」

「うるっせえな。行きゃ良いんだろ」


 鳥木先生が連行されるのを見るのは2回目だ。


「お前ら今から自習だ。委員会の場所は最悪明日のホームルームで伝える」




 二人が出ていった後、一瞬静かになったタイミングで、誰かの声がぽつりと響いた。


「なんかさ、鳥木先生って周りの先生と上手くやれてなくない?」

「あーそれ俺も思った!」

「美人だし学生の時はある程度許されたんだろうけどさ~。大人になると顔だけじゃ許してもらえねえ瞬間もある的な?」

「うはははっ。だっせー」


 …なんか嫌な感じだな。

 鳥木先生のことはまだよく分からないけど、人の悪口は聞いてて気持ちの良いものでない。


 しかし人間が簡単に団結する方法は共通の敵ができた瞬間。絶好の餌を逃さんとばかりに教室内の話題は鳥木先生で持ちきりになる。


「つーか元々あの独裁的な感じ?あれも気に入らねえし」

「最上先生とも口論してたの隣のクラスの奴が見かけたって聞いた!」

「まじ?」

「あっそれ俺も見た!日向が話してる最中に喧嘩してたらしいぜ!」

「日向って…あいつ?」


 げーーーーっ!!!

 あ…あの時のか!!質問のために教室を出た鳥木先生を追いかけたあのタイミング…。

 過去の自分の行動を呪った。


「1組と8組の担任のバトルってすごくね?どうなんだよ日向!間近で見てたんだろ?」


 1組と8組は比べる分野も違うし比較対象にならない気もするけど…。

 でもさっきの鳥木先生のポイント評価制度を適用するなら一概にフィールド外ともいえないのか。


「…さあ?よく覚えてない」

「いやいやすげえ最近の話だろ。嘘つくなって」

「そう言われても覚えてないんだ。ごめん」

「なんだよつまんねーの」


 やかましいわ。

 腹立つなこいつら。


「俺部活の先輩から鳥木先生の面白い噂聞いたぜ!」

「まじまじー?」

「あの人昔この高校の生徒だったらしいぜ」


 一瞬教室が静寂に包まれた。


「…でもここって男子校だろ?何で女の鳥木が?」



 ドキッとした。


 鳥木先生はもしかして私と同じ経験をした人間ってこと…?それとも別の過去がある…?

 自分のことを話されているようで居心地が悪くなってきた。



「実は男だったけど手術で女になったとかじゃね?」

「あの粗野な感じは確かに説得力あるわ!胸も小さいし」

「いやいや諸説あるらしいけど、この高校の力で色々隠蔽されたとか何とか」

「その復讐のためにここで働いてるってこと!?こわすぎかよ!」

「わかんねえけど」


「あんた確か保険委員だったよね」


 突然日浅が鳥木先生の話題の中心になっていた男子生徒に声をかけた。


「は?何急に」

「この人顔色真っ青なんだけど。良かったね~。最初の仕事だよ」


 日浅は私を指差しながらそんなことを言う。


「うわっ!本当だ!大丈夫か日向?」

「あ…うん。ありがとう。少し寝不足なだけだから平気だよ。一人で保健室行けるから」

「いや付き添うよ」

「いらないから」


 語気が強くなってしまった。

 色々な焦りからか嘘をついている気まずさからか。


「…ごめん。本当に平気だから。心配かけてごめんね。じゃあ」


 そう言ってこの居心地の悪い空間から逃げ出すことができた。日浅の強い視線を感じつつ、気付かないフリをして教室を出た。


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