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先輩のコールが聞こえた。バスケ部の練習が始まったようだ。
バスケ部員ということで全体的に背の高い人が多い中春山、日浅は特に背も高く、1年生の中では目立っていた。そして佐摩もある意味目立っていた。
「よーっし1年。俺はキャプテンの三嶋だ。まずは右からのレイアップ。先輩の流れみて適当に合わせろ。お前らの腕前みて練習参加のコースも組分けする」
「はい!!!」
声が野太い…。そらそうか。男子しかいないもんな。そして指示適当すぎる…。
何気なく知り合いの春山、日浅、佐摩を見ていると、3人ともぽんぽんシュートを決めていく。フォームもきれいだし、上手い。
他の先輩も上手い。そしてでかい。二メートル超えてるんじゃないかって人も何人かいる。ここ日本だよね?
「あはは。大地ちっちゃく見えるね。小人みたい」
「周囲が大きいですからね…」
「次、スリーメンは飛ばす!三対二!」
シューティング練習が一通り終わったらしく、先輩が叫んだ。
「三対二…守備二人、攻撃三人かあ。大地と春山君と日浅君が組んだら面白いね。…っと。言ってる側から」
「あ」
攻めのオフェンス側が佐摩、春山、日浅の三人、守りのディフェス側が二メートルの長身先輩二人になった。
これは見物だ。胸が高鳴る。
真ん中にいる佐摩がボール運びをし、一気に敵陣のスリーポイントのライン付近まで攻め入る。速い。
先輩にマークされる佐摩。遠くから見てると身長差のせいで大人と子どもに見える。
ボールを巧みに扱い、クロスオーバーで一気にかわす。二人目の先輩もかわし、レイアップシュートを決めた。
…上手い。これが6組になった実力…。
二人の先輩も驚愕に満ちた表情になっている。
「お前なーーー!チームプレー!俺と哲の出番!」
「知らん。必要ないと判断したからパスしなかった」
「一回くらい回せよ!」
「一人で決めれるのにパス回しをしていても時間の無駄だろう」
「うううう!お前次俺と同じレーンに並ぶなよ!」
「俺に指図するな。順番に並んでるんだ。選択はできん。嫌ならお前が気を付けろ」
「なんだと!」
「ハル。早く並ぶよ。次の人らの練習の邪魔」
「哲は良いのかよ!」
「俺は楽だったし良いよ別に」
「あーもうー!!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎながら春山は結局日浅に引きずられていった。グッジョブ日浅。
「春山君、面白い子だね」
「そうですね」
「大地があんなに感情的になるの珍しいし」
「あれ感情的になってるの!?」
「うん?どう見てもそうだよね?」
どう見ても分かんないから。今日一番の驚きだよ。
ディフェス側に関しても佐摩、春山、日浅三人とも申し分なかった。春山、日浅はその高身長を活かしてブロックしてボールを防ぎ、佐摩は相手の攻め入るドリブルの段階でボールをスティールしてしまう。上手い…。
オフェンスに関しては春山は悠々とダンクを決める。
佐摩はドリブル抜きからのスリー、レイアップと一人で得点をとる。
日浅はすぐにパスを回し、やる気の無さそうな顔で淡々と戻る。その後にパスされたボールで容易くスリーポイントシュートを決める。
「性格がプレースタイルに出てるね。面白い」
「でも、上手い…です」
瞬きも忘れる位見入ってしまった。




