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つ、疲れた…。
こいつスタミナ尋常じゃなさすぎだろ。
隣の部屋って言うから五メートル先くらいを予想してたのに遠いわ!
「いやー結局まだ誰もいなかったな。俺らだけなのかな~。みんな流暢だと思わねえ?」
「それを言うなら悠長だよ」
「えー。真面目かよ~」
君こそ文句垂れ小僧か。
「…まあ疲れて寝てる人とかもいるんじゃないかな」
「ふーん。俺は疲れてないけどなー」
「君を基準に全ての人を考えるのはやめなさい。特に体力面」
先の私のような被害者が増えないよう忠告しておいた。私も再度被害に遭いたくないし。
「うーん。そっかあ」
「後は入学式までまだ4日位あるしね」
あとは私みたいに居留守を使ってやり過ごそうとする人もいるだろうな。
「う~ん…何か色々考えてるなお前。俺スポーツ推薦でここの高校入学したからな。頭はそんな良くないのよ」
うん、ごめん。
見ればわかる。
「へえ。何のスポーツやってるの?」
「バスケ!センターだぜ!今度試合観に来いよ!」
「え…」
春山が悪いことを言ったわけではない。
ただ自分が昔断念した夢の記憶が少し甦り、身体中の血液が戦慄くような感覚が走った。
「…い!日向!」
「あ…?」
「大丈夫かお前?何か1分くらい硬直してたけど…。バスケ嫌い?」
一瞬放心状態になっていたようだ。
1分ってすごいな私。
目が乾いていることから瞬きも忘れていたようだ。春山が心配するのも無理もない。
…あれ?私白目とかむいてなかったよね!?
「目が…」
「え?目?」
「あ、いや何でもないよ。忘れて。何だっけ?」
「だからバスケ嫌いなのって聞いたの!答えはノーを期待!」
「答えづらっ!」
「ええ!?嫌いなの!?」
「いや…。好きだよ。今でもすごく。今度観に行くね」
「なんだよーびっくりした」
こっちの台詞だよ。
「スポーツ推薦がこの高校にあったことに少し驚いちゃったんだ。ごめん」
「ふーん?俺さ、バスケのプロ選手目指してるんだ」
青春だなあ。羨ましい。
「なるほどね」
「で、勉強できないなりに英語だけはすごい頑張って、英語とバスケだけは抜きん出てたから通してもらった感じ!いやー光栄だわまじ」
バスケはともかく自分で"英語だけは"って言っちゃう春山は素敵な子だなと思います。
「スペシャリストの育成も大事だもんね。色んな人がいそうだね。ここ」
「なっ!とりあえず夕飯食おうぜ!」
ひとまず夕飯の買い出しにと惣菜を買いにスーパーに向かった。
レジのお姉さんが春山をみて頬を染めていた。
春山…やはり年上キラーか。恐ろしい子…!
春山の実家から送られてきた明太子とお米とスーパーで買ってきた惣菜を夕食に食べた。
明太子…!うまい!!
本場の味は素晴らしい…。