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 驚いた顔で数秒見つめ合う私と…




 日浅哲之介。


「あれ?知り合いだった?」

 沈黙を破ったのは先輩だった。


「別に」

「別にじゃないでしょ。クラスメイトです」

「それよりあんたハルに連行されてなかった?…さっきも聞いたけど何でここにいるの?俺のストーカー?」


 いつかの仕返しか。こいつストーカーって言われたこと根に持ってたな?


「違うから。少し休憩がてら散歩してたら綺麗な音が聞こえてきて、足を運んだだけ」

「ふーん」

「君こそ何でここにいるの?」

「ここにいる時点で理由とか1つしかないし。部活見学だけど」


 ってことは掛け持ち検討中の部活は吹奏楽部ってことか。



「クラスメイトか~良いね。二人とも楽器何か興味あるのない?試し弾きできるよ~」

 にこにこと話しかけてくる先輩。あれ…?この笑顔誰かに似てる気がする。気のせいかな。


「いや…その…楽器弾けなくて…」

 正直に答えると、先輩はきょとんとした顔になった。

「最初は皆弾けないよ。弾けるようになるために練習すれば良いだけだよ?」

 手先が激しく不器用なんです…。

「あ~…」

「じゃあ二人とも全楽器順番にやってみようか!」

「じゃあそれでお願いします」


 そう言ってからちらっと日浅を見ると若干不機嫌そうな顔でこちらを見ている気がした。私と一緒に見学は嫌ってこと?失礼な奴だな…。


「じゃあ、まずはピアノからだね。ちびちゃんからやってみようか?」


 ちびちゃんって…私のこと?きょろきょろと周囲を見渡してみるが、それらしき人物は見当たらない。私のことで間違いなかったようだ。自己紹介してないとはいえ随分なネーミングセンスだなあ…。




 先輩が丁寧に教えてくれたおかげで片腕で弾ける簡単な曲を数曲弾けるようになった。遅いし途切れ途切れな音だけど。…率直に感想を述べます。楽しい!


「ちびちゃん上手になったね~。次、トール君弾いてみようか」


 背が高いからtall…トール…ちびちゃんよりはましだけど先輩さてはあだ名つけるの好きだな。



 トン、と座る日浅。先輩が教えようと日浅に近寄ろうとしたその時。



 ぽーん…




 綺麗な音が響く。そのまま私が先程先輩に教えてもらった曲をすらすらと弾いた。素人だからよく分からないが、同じ曲なのにすごく滑らかで聴き心地の良い音に聴こえた。


 意外だ。

 日浅がピアノを弾くのが上手いという事実が。


 曲が終わると同時に拍手が教室中に鳴り響いた。先輩達も感動している様子だ。



「上手いねトール君!経験者?」

「そんなんじゃないけど」

 日浅はトール君と呼ばれても特に動じない。私の様子を見ていて耐性ができたのか?

「いや~意外だった。まさか君がこんなに上手かったなんて。感動しちゃった!君、センスあるよ」

「…昔習ってたことあったけど。あとは趣味で独学で弾いてただけ」

「なるほどね。素敵じゃない!是非入部してよ」

「良いけど。でも条件付きね。遊びで良ければ入部するけど本気でやるなら入部しない」

「良いよ良いよ~青春謳歌しようよ」

 良いのかよ!緩いな~。

「じゃあ入部する。あんたはどうすんの?」


 予想外の質問が飛んできて驚いた。

 少し顔を傾け、前髪から覗く瞳が真っ直ぐに私を捕らえた。日浅の眼は狡い。何となく固まってしまう。



「ちびちゃんも入ってよ。うちは自由度高いから大会に出ないなら練習も自由参加型だよ~」

「ゆるっ!」

 でも一応条件付きなんだ。…ピアノちょっと楽しかったしなあ。自由練習制で掛け持ち有なら入部してみようかな~。

「じゃあ入部します」

「決定だね。はいこれ入部届け」

「ありがとうございます。じゃあ自分はこれで」

「俺も」

「はーいありがとう。いや~うちの駄犬が寂しがっちゃうかな~」

「先輩犬飼ってるんですか?」

「そうなんだよ~動き回るのが好きなんだ~またよろしくしてやって。じゃあ引き止めてごめんね。まだ弾いてない楽器もあるしいつでも来てね~」


 部長に入部届けを提出し、私と日浅は音楽室を後にした。

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