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「え!8組行けるなら俺一軍以外になれるように頑張る!哲も日向もいるし!」
「あれ?違う方向にやる気だしちゃったみたいだね」
「そうするとお前は俺に負けたことになるが?」
「あ!本当だ!どうしよう!」
春山…。
「編入なんて制度あるんですか?」
少し気になることを質問してみる。
「どうだろうね。生徒会の特権とかでありそうじゃない?あと数時間後に詳細分かるだろうけど」
えええ!何その特権!こわっ!
「ひとまず先生には今出た結論で話をつけて、8組編入の場合も含めて交渉してみるね」
「はあ…」
「時間の無駄だな。さっきの結論で問題なければ俺は帰る」
「じゃあね。日向君に春山君」
そう言って二人は去っていった。
「はあ…どっと疲れたよ」
「色々付き合わせてごめんな」
「いや良いけど」
「…聞いてこないんだな」
「何が?」
「哲のこと」
「…各々隠したいことはあるでしょ。それを不用意に詮索したりしないよ」
私も秘密はあるし。色々バタバタしてて記憶からフェードアウトしていたのも半分事実だけど。
「そっか。ありがとう。そしたら部活見学行こう!バスケ!バスケ!」
「あ。ごめんそれなんだけど今日はパス」
「え!何で?!」
「部屋でゆっくりしたいんだ。明日行くね」
気疲れしやすい体質なんです。
「う~そっか。分かった!んじゃまたな!渚!」
笑顔でそう言うと、春山は走り去っていった。そして呼び方が変わった。私に対する好感度が少し上がったのだろうか。嬉しい。
春山にはあんな風に言ったけど、まっすぐ部屋に戻るのも気乗りせず、少し散歩をしてから帰ることにした。
音楽室の前を通るとピアノの伴奏が聴こえてきた。綺麗な音だなあ。吹奏楽部かあ…女子っぽくて憧れあったな~。楽器は全般的に苦手で入部を考えたことはなかったけど。ここで聴こえてきたのも何かのご縁。チラッと覗いてみよう。
ノコノコと歩いていくと、音楽室入り口付近に数名先輩と思われる男子生徒が立っていた。
「お!新入生?部活見学?」
「あ…えっと」
「今さっきも新入生きたとこだから一緒に説明聞いていってよ!」
「あの~」
「せっかくだし!ね!ほら入って」
そう言うや否や背中を押されて半ば強制的に室内に誘導された。
「あ」
私より先に来ていたという中にいた新入生と目が合う。そして同時に発生した同じ言葉。
「何でここにいるの?」