15
「それで二人で来たのか!」
ハッとしたように春山が顔を上げる。
先ほどまで突っ伏していたせいで日浅の存在に今やっと気付いたらしい。
来たというか付きまとわれて困ってるんだけど。
「気付くの遅いよ」
「あはははっ。悪い悪い!」
気のせいか春山の声のトーンがワントーン明るくなった。
「元気だね~。見てるだけで疲れるんだけど」
「なんだよ哲!ひっでー!」
は?哲?
「だからうるさいよ」
あ、うん。まあそれは同感だけどさ。
「いいなー。日向と哲が同じクラスとかさ。俺も8組行きたい!」
「待って!待って待ってよ!知り合いなの君たち?」
心の中の突っ込みが追いつかず、思わず会話に割り入ってしまった。
「は?何であんたに教えないとダメなの?」
「そー!俺ら同じ中学!」
「勝手に教えんなって。俺許可してないんだけど」
「つか哲!お前もここ受けてたなら教えてくれたら良かったのに!俺最初一人で心細かったんだぞ!」
「知らないし。てか聞けよ」
なるほど。
彼らの卒業した中学の教訓は人の話を聞かないことなのかもしれない。
「それより俺の方が疑問なんだけど。ハルなんでこのチビと知り合いなの?こんなチビの癖にバスケしてるとかありえないし。中学も違うし。普通に考えて意味不明なんだけど」
前半色々聞き捨てならないけど…チビって私のことか!?
私名前名乗ったよね?何なのこいつ。
…まあでも確かに。共通点ないもんな。私と春山。
「しかもあんな風に目立っちゃってさ。ハル変わってなさすぎ。本当見てるこっちが恥ずかしい。今ここで話してんのも恥ずかしいし」
何となく日浅が春山にこの高校に入学したのを伝えなかった気持ちが分かった気がした。
そして春山がこいつと仲良くしてる理由は今のところ全く分からない。
「うははははっ。日向!こいつ本当に良い奴だから!恥ずかしい
連呼しながらすげえ突っ掛かってきてんだろ?ツンデレなんだよ。可愛い奴めー!」
「うざい」
何だろう…噛み合ってなさそうで噛み合ってる。すごく不思議なコンビだな。
「今のも俺のこと心配してくれての発言なんだ。口は悪いけど、いざという時に人間味感じる。こいつは本当に良い奴。まじで!俺が保証する!」
にかっと笑う春山。
「プラス思考過ぎでしょ」
空かさず皮肉を述べる日浅。
私が佐摩を悪く思わなかったのに対し、春山は佐摩に苦手意識がある。春山は日浅を良く思ったのに対し、私は今のところ日浅に対して良い感情を持てない。
相性って大事だな~。私が日浅と仲良くなるのは時間を要しそうだ。
時計を見るとクラス初の講義、ホームルームまで5分前になっていた。
「あ、そろそろホームルーム始まるね。先に戻るね」
「じゃ、俺も戻る」
えっ!日浅も戻るの?
一人でさっさと戻ろうとしたのに!
「哲に気に入られてるな!珍しい!そいつ中々人に近寄らないのに」
「は?別に気に入ってないし。勝手にやめろよ。迷惑」
もう何でも良いよ…。とりあえず教室戻ります。