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 佐摩が6組になったことは全校生徒の中で波紋を呼んだ。

 だが当の本人である佐摩は相変わらず涼しい顔をしている。

 理由を知りたいが佐摩は教える様子が全くない。園山高校の伝承に残りそうな勢いだ。もしくは七不思議。

 どよめきは止まらない。


「静かにしなさい!…校長。どうしましょうか」

「ふむ。仕方ないか。皆、静かにしなさい」


 校長の貫禄のせいか、鶴の一声。館内は静寂を取り戻した。


「首席の彼が1組ではなく6組になったこと。これには理由がある」


 理由…。


「君達は1組が最上位だと思っているようだが、その認識は誤りだ。正すべきだ。最上先生による先の説明にもあったように、一軍は1組と6組だ。分野や活躍する場が違うだけで両クラス共に天賦の才能を持つ将来のエリート候補だ」


 天才の集まるクラスか…。個性的な奴が多そうだな。


「同じ分野におけるライバルが集まる方が切磋琢磨するだろう?そのためこのクラス分けだ。いいかね?」


 確かに一理ある。


「1組と6組は対等な立場だ。本校では属されたクラスの数字の大小は関係ない。クラスの番号は出席番号と同様で、いわばただの配列番号だ。大事なことは、何軍に属しているか、だ」


 ここで春山の眉毛が動いた。露骨に嫌そうな顔をしている。分かりやすすぎるわこの大型犬…。


「そして佐摩君。彼はある分野において学業と同率で優れた成績、才能を持っていた。そのため、1組か6組。どちらの一軍に属するか選択してもらった。これで君達の疑問も解消できたかな?」


 校長の口から園上高校における正しいカースト認識が周知された。


「一個質問良いすか?」


 むすっとした顔の春山が質問をする。


「どうぞ。春山君」

「同じ分野におけるライバル集めたとか言ってましたけど、6組~8組は、学業以外って一括りにしてますよね?クラス毎に何に秀でてるかで組分けした方が良いと思うんすけど」


 春山は佐摩と同じクラスが相当嫌らしい。

 春山、ハードクレーマーみたいになってるぞ。


「ははは。そこまで細分化すると、成績も教科毎に分けていかないといけないだろう?キリがないから分かりやすく二分したんだよ。文系、理系のようにね。それに成績は一学年単位だが、それ以外については枠がない。年齢も、経験も、評価のアドバンテージにはなり得ない」


 浪人はもっての他との考えがあっての発言だ。


「…?つまり?」

「ああ。少し分かりづらかったな。例えば絵画のコンクール。本校は、恐らく全国の高校生の中でも抜きん出た、いや高校生の中だけでは一位の作品を描ける生徒が入学している。しかし小学生でその分野において君達より抜きん出た才能を持つ者もいる。が投稿年齢に制限がない賞もあるだろう?」

「うん…?」

「春山君のケースで説明しようか。1年生の一軍に在籍していても、君がバスケットボール部に属すれば2年生、3年生の一軍と混じって闘うことになるだろう」

「はいっす」

「1年生の一軍にいても他の学年の一軍と混じれば君は三軍落ちする可能性もある訳だ。逆もまた然り」

「…落ちって言い方は好きじゃないっすけど。三軍も一軍も同じチームっすよね?」

「気に障ったならすまない。その点の論議はひとまず置いといて、私が言いたいのは学業以外の分野に関しては、周囲の状況や様々な要因によって結果が左右される非常に流動性の高いもの、ということだ。つまり、少しの変化にも臨機応変な対応が求められる」


 春山の眉間にシワがよる。


「そういう意味で一方向の刺激ではなく、学業以外という大きな括りに絞った方が他分野からも多角的な刺激を受けることができる。結果的に、より効率的な成長の化学反応が起こることを期待してる、ということだ」

「…なんとなく分かりましたけど…」


 理解はしたけど納得のできない様子の春山クレーマー。しかし論破され、その後に続く言葉は思い付かなかったようだ。


「よろしい。さて、他に質問や意見がある威勢の良い生徒はいるかね?氏名を聞かせて貰った上で回答して差し上げよう」


 その後は誰からも質問が上がらず、1年生全員のクラス発表が終わった。

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