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入学式後。新クラスの教室の中からは、各々少しの緊張と好奇心に満ち溢れた不思議なエネルギーが感じられる。
ここは1年6組。
「はあああああああああ…」
自分の机の上で突っ伏している春山。新しいクラスの教室風景としては相応しくない光景だ。
そして、スポーツ推薦で入学した春山は見事6組。この内示が意味することは、彼はこの強豪高校の中でもバスケ能力・才能自他共に一軍に値すると評価されたということ。
すごいなあ。
「随分長い溜息だね。ギネス記録狙えるんじゃない?」
「…なんのだよ。うわあああはああああああ…」
「春山君。静かにしなさい。ぷくく…」
「日向。嫌いになるぞ。しかもちょっと似てるし」
先ほど…3時間前に春山を叱責した先生の物真似をしたら褒められた。…のか?
「あはは。ごめんごめん。でも良かったじゃない。夢への第一歩を着実に進んでるのに、どうして溜息をつくの?」
「…だってこのクラス…」
むすっと頬を膨らます春山。子どもか。
春山がふてくされている原因はいくつかあるけど、ひとまず一番の原因となった出来事は3時間前に遡る。
ーーーーー3時間前。入学式。体育館内。
「呼ばれたものは返事をして、起立すること」
校長がにこやかに笑いながら説明する。
「以下敬称略。1組。出席番号一番。大路 涼介」
「はい」
「以下出席番号省略。加藤 真二」
「はい!」
…………
………………
「以上32名。1年1組。着席」
どよめく館内。
それもその筈だ。佐摩の名前が呼ばれなかったのだ。主席の。王様の名前が。
一方当事者の佐摩をみると涼しげな顔をしている。まさか…。
………
……………
………
「6組。出席番号一番。佐摩大地」
「はい」
どよめきが大きくなる。
「すごいねえ。人気者だね、大地。」
「いちいち騒がしいやつらだな。」
佐摩…!?いやいや待って。何で?
「佐摩…!?何であいつが!!」
目を見開く春山。
私と春山のシンクロニーではなく、周囲を見渡すとやはり皆同じことを思ってる様子だ。
「静かに!静かにしてください!次、以下出席番号省略。春山健人」
放心状態になっている春山を小突く。ハッとした様子で立ち上がる春山。
「…………うっす」
「平井アキラ」
「はい」
「は!!?」
「ええっ!?」
春山の声に驚く平井君。とばっちりだ。
「春山君!静かにしなさい!」
「え!!?だってこれあいうえお順の名簿だろ?!何で?何で日向じゃねえの!?しかも何で…何で佐摩が6組で俺と同じクラスなんだよ!」
どよめきが波紋のように広がっていく。
私と同じクラスかどうかについては置いといて、後半の発言については他にも疑問をもった生徒が多かったようだ。
一度静まった館内は再び騒がしくなり始めた。
何故、首席である筈の佐摩が1組ではなく6組であるのかの回答を求めて。