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皆が更に驚き、表情をこわばらせた。
先生たちも驚いている。
予想外の方向から聞こえたからだろうか。
私も音のした方をみる。壇上のソファから立ち上がった佐摩の姿を。
皆背筋を正して佐摩の声に耳を傾ける。館内に目を走らせると、完全にこわばった表情をみせる人、好奇の表情で佐摩と春山と最上先生を見る人で二極化していた。
佐摩が口を開く。
「お前が一番になる?あまり大きい口を叩くなよ。一番は俺だけに用意された言葉だ」
多分少女漫画とかなら、ここで第一印象最悪!と思った春山(女)が徐々に惹かれてラブラブになっていく王道ストーリー。うん、悪くない。そういう展開結構好き。
恋愛経験はないけど友達の話を聞いたり漫画を読むのは好きです。
「お前こそ大きい口叩くなよ。文句あんならバスケのプロ選手になってから言えよ!上から見下ろしてんじゃねえよチビ!」
「…!」
佐摩が目を見開く。
いやいや本当にやめろ春山。
春山がでかすぎるだけで高校1年生なりたてホヤホヤの男子生徒の身長としては佐摩も充分高いから。
多分160後半位にみえるけど成長期に伸びることを考えると中々の高身長が期待できそうだ。
…というかその言い方だとまさか私のこと普段ドちびとか思ってないだろうな!?
「…春山健人と言ったな」
「そうだけど何だよ」
「覚えておいてやる。今お前が吐き出した言葉後悔するなよ」
「しないね。俺強いもん」
ブリザード!!!!
こわいよ佐摩!
睨み付けてる眼光が私まで届いてる!
私たちの後ろにいる愚痴こぼし男子にも届いているのかカタカタと震える歯軋りが聞こえた。
「はははははっ」
校長の大きな笑い声が静寂を破った。
「なんすか?」
「いや、若さは素晴らしいね。少し昔を思い出したよ。春山君こちらへ」
校長が壇上から春山を手招きした。