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リアルでの話

 

 現実世界に戻ると丁度飯を食べるくらいの時間だったのでリビングに行った。


 一緒にログアウトしたこともあって鈴も同じタイミングでリビングに来たので、早速晩飯となる。

 ちなみに最近は母さんの仕事もあまり忙しくないため、ご飯はちゃんと手作りだ。



「さあ、めしあがれ!」


「「いただきまーす」」



 ご飯は普通に純和風で、焼き鮭が主菜。

 味噌汁は豆腐とわかめと玉ねぎだ。

 普通にうまい。っていうかいつもの味だ。

 

 どうやら父さんは飲みにでも行ってるのかこの場にいない。


 と、特に話すこともなく黙々とモグモグしてたら母さんが鈴に話しかけた。



「鈴ちゃん今日は随分機嫌がいいじゃない。なにかいいことでもあったの?」


「べ、別になんでもないわよ……」


「なぁに彼氏ぃ~? お相手は誰なの? ほら、ちょっとお母さんに言ってみなさい!」


「ち、ちがっ! 本当にそんなんじゃないから!」


「え~、怪しいな~」



 む、鈴に彼氏か!

 それはなんか寂しいな。

 なんというか、仲の良かった奴が急に塾に通いだしたみたいな微妙な寂しさがある。

 まあ本人は否定してるけどね。


 そんなことを考えていた俺に、鈴がポツリポツリと話しかけだした。



「あのさぁ……」


「ん?」


「いや、なんていうか、ね……」


「なんだよ、言いたいことがあるなら言ってみな」


「さっきは……ありがとね」


「あ、ああ。まあ俺の方こそ色々ありがと」


「……うん」



 ……なんというか、微妙な雰囲気だ。

 妙に気まずい。

 母さんがニマニマしながらこっちを見ているのもなんか恥ずかしい。

 こっちみんな! 


 またしばらく食べてると、鈴が再び話しかけてきた。

 


「昔はさ、なんか色々あれだったよね」


「あれって?」


「ほら、なんていうか……もっと仲良かったよね」


「ああ、まあそうかもな。お互いもう高校生だしなー」


 確かに、最近は挨拶程度しか話してなかった気がする。

 それにくらべて昔はすごかった。

 くっそどうでもいいことで何時間でも話していられたし、なんなら永遠に一緒にいられた。

 何が面白いのかわかんないことで笑いあい、時にはすごく小さいことで喧嘩もした。

 まあなんというか……とにかくもっとお互いが近かったのだ。



「最近は私も忙しくってさ、蓮くんとは全然話せなかったけどさ……」

 

 そこで鈴は一回話を区切ったが、俺は焦らせることなく続きを待つ。

 こういう風に話したのだって、もうずいぶんと久しぶりな気がする。



「なんていうか、今日は楽しかったよ。確かにゲームの中ではあったけど、昔に戻ったみたいだった。……懐かしかったし、ちょっぴり嬉しかった」


「そう……だな」



 今日はRDOでたくさん話した。

 やっぱりゲームのことを教えてもらう会話が多かったけど、それでもたくさん話した。教えてもらった。

 昔だってそうだ。いろんなへまをする俺を、鈴はいつもフォローしてくれてた。

 鈴はなんでもできたけど、俺はなんでも失敗ばかりだった。 

 そんな俺を鈴はいつも手助けしてくれた。


 それは昔のことで、今は失われた、遠くなったものだと思ってた。

 これが成長だと思ってた。あの頃とは違うんだ、そう思っていた。


 でも、俺と鈴は兄妹だ。これはなにがあっても変わらない。

 どんなに距離が離れても兄妹で、二人がどんなに変わってもそこだけは変わらない。



「確かに……懐かしかったよ。なんかありがとな」


「べ、別に感謝されることじゃないわよ!」


 でも、と鈴は続けた。


「……また、昔みたいに話したりしよう……ね」



 昔みたいに。

 つまりは鈴も最近の妙な距離感に思う所はあったということだ。

 なんだ、やっぱり一緒じゃないか、と。


 俺は強くうなずいた。


「おう!」




 ――その後、俺たちのやり取りを見てた母さんに色々からかわれて、鈴が真っ赤になって怒ったりしていたがそれはまた別の話。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 次の日の朝、いつも通りの時間に目を覚ました俺は朝食に軽くパンを食べ、母さんに見送られて家を出た。


 俺は学校はいつも遅刻ギリギリに登校している。

 早く登校しても話す友達はいないし、部活の朝練も強制ではないためあまり行かない方だ。

 それよりも惰眠をむさぼっていたいタイプ。


 そうして家を出て、駅に着いた俺を待っていたのは、山手線が人身事故で遅延という電光掲示板。

 うん。おそらく今日は遅刻だ。


 

 結局遅延自体は15分ほどで解決したが、それでも電車はめちゃくちゃ込み合っていて、色んな人に押しつぶされながらも学校にたどり着く。


 駅でも無事――ここでも何度か声をかけてやっと気づいてもらえたが――遅延証明書を貰うことはできたし、遅刻にされることはないだろう。


 それでも一応走って学校に向かう。


 学校に着くと10分くらいの遅刻だったが、こういう時の遅延証明書の頼もしさはすごい。

きちんとポケットに入ってた遅延証明書を握りしめ、教室のドアを開ける。



――一瞬集まる視線――


 しかしそれもすぐに興味を失ったように散っていく。


 するとHRをしていた担任教師に声をかけられた。



「なんだ一条。遅刻だったのか」


「あ、いえ、電車が」


「ん? ああ、心配しなくていいぞ。さっきいると思って間違えて登校にチェックつけちゃったからな。いやーすまんすまん。まあ、運が良かったな」


「いや、だから電車が」


 ヘッキシッ!

「はは、すまん。先生ちょっと今鼻炎なんだ。今回は特別に遅刻にはしないが、次からはもう遅刻するなよ」


「遅刻じゃなくて遅延で」


「ほら、いつまでも突っ立ってないで、早く席につけ」


「……はい」




 どうしてだろう。

 俺はそんな声が小さいというわけでもないし、滑舌が悪すぎて聞き取れないということもないはずだ。

 なのにここまで無視される。


 わかってはいた。

 わかってはいたさ。

 でも、RDOの中でサラさんに声をかけられたり、久しぶりに妹と話したりしたせいで少し忘れていた。

 俺の、影の薄さを。


 登校してないのに登校してると思われる影の薄さとか、ある意味需要あるなー、と。


 そうでもして慰めないとやっていけない。

 どうにか心を盛り立てないと、生きていけない。


 でもそれってさ。遅刻しても登校してると思われるのってさ。

 居てもいなくても変わらないって、お前なんかいなくてもいいんだって。

 そう言われているようで傷つく。

 どれだけ慣れた痛みでも、痛いものは痛いのだ。


 そんな俺の悲しみを知っているのは、受け取ってもらえずに俺の手の中でクシャクシャになった遅延証明書だけだった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 昼休み、購買でパンを買って戻ってくると俺の席は占領されていた。


 スクールカーストはトップと言えるような運動部の奴ら。

 みんな容姿は整っているししゃべることは大体面白く、クラスの人気者たちだ。


 そんなやつらなら、飯くらいどこでも食えるだろうに。

 しかし今日はどういう気まぐれか、俺の席周辺で昼食とお食べになられるらしい。

 

 

 少しの抗議として自分の席の近くでうろうろしてみるが、まあ当然気づかれない。

 なんなら声をかけても気づかれないかもしれないし、名前を覚えてもらえてない可能性だってある。

 話しかけた瞬間「誰?」って言われたら俺のHPはマッハで削られるだろう。


 あーもう!

 お前らはどこで食っても文句は言われないかもしれないけど、俺みたいなやつには自分の席以外に居場所なんてないんだよ!

 ん? 屋上? 嫌に決まってるだろ!

 あそこは普段人目を気にしているカップルが堂々とイチャつける場所だ。

 そんなところで一人で飯を食うなんて、そのまま屋上からダイブしてもおかしくないほどつらい。


  

 しかたない。


 俺は教室の隅っこによって立ちながらパンを食うことにした。

 いいねパンって。なんてったって片手で食える!


 ……あー。疲れるなぁ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 学校が終わり、部活の時間になった。

 特に話す奴もいない俺は真っ先に弓道場に向かう。


 俺は弓道部だ。

 それにはいくつも理由があるが、その一つが個人競技だという点だ。

 チームの競技なんて、出たところで一回も活躍の場がないことは目に見えている。

 体育の授業でさえパスが回ってこないのだ。集団競技になんて出たらそれはそれは悲惨な結果になるだろう。

 別に運動神経が悪いわけじゃない。むしろいい方だ。

 

 ただ、運動が向いてないだけ。




 道場に着き、安土(あずち)の整理をしたり掃除をしたりする。

 本来は一年生の仕事だが、一年生はまだ来ていないから高2の俺がやっている。

 

 ちなみに、俺がやっているということは知られていないらしい。

 二三年生は一年生がやったと思い込み、一年生は誰かがやってくれているのだろうと思っている。

 

 まあこうして俺が毎回やっているから一年生も速くは来ないのかもしれないが、それとこれとはまた別だ。

 まず第一に練習が始まるまで俺が暇だということもあるが、なんだかんだで俺は感謝されるのが好きだったりするからである。

 確かに直接俺が感謝されたことは一度もない。

 だが、俺がやったことのおかげで誰かが助かったのだと考えると気分がいいのだ。


 この世界に俺がいるという痕跡を、残せる気がする。

 そうでもなければ、いなくなってしまえそうだ。


 

 なんでもない!

 さあ、そろそろほかの部員も来る頃だろう。

 道着に着替えてレッツ待機!




 部活が始まり、1時間ほどたった。


 俺は弓が嫌いじゃない。

 さっきも言ったが、弓は個人競技だ。

 そして、精神の集中が必要だ。


 だから弓をひいている間は辛いことを忘れられる気がする。


 まあ、俺は弓が苦手じゃないしね。

 というかかなり得意だ。

 集中して狙いをつけると、なんとなくだがどこに飛ぶのか予想できるのだ。

 しかもその予想は大体合っていて、それの通りに狙えばかなりの確率で当たる。


 

 それにしても、もしRDOでスキルが弓系統だったらオークの戦いはどうなっていただろうか。

 まあ結局勝ったからよかったけど、もう少し安全に戦えたかもなー。まあわかんないけど。


 今日も多分RDOはやるけど、サラさんとは会うかなー、なんて。

 オークを倒した話とか話したらどんな反応するだろう。現実で女子と話なんてしたことないけど、案外話せるものだった。

 早く話したいなー。やっぱり俺ほど影が薄いとリアルはつらい。もっと早くVRゲームと出会っていればよかった。

 それに、サラさんかわいいしねー。



「あ」



 雑念が混じったせいだろうか。

 外れた。

 ちょっと自分の描写力とかを上げるために少し休みます。

 このまま隔日投稿を続けても、質の悪いものをだらだらと投稿するだけになってしまいそうです。


 書くという行為自体はやめないので、またこれも更新するとは思いますし、心機一転してまた新しいのを書き始めることもあるかもしれません。


 少し、お待ちください……。


 本当に、申し訳ございません。

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