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影潜りの効果と森の雄たけび

 たくさんの感想やご指摘ありがとうございます!

 まだまだ至らぬ私ですので、ご指摘いただけた所はなるべく直していきます。

 はぐれないように、ということもあり手を繋いだまま草原まで来てしまった俺たちだったが、俺は気恥ずかしさと共に懐かしさを感じていた。

 そういえば昔はよくこうして手を繋いで歩いたことがあったっけ。

 その時も今みたいに「逸れないようにね!」なんて言われてた気がする。

 

 何年も前の、遠い記憶。

 もう戻ってこない、過去の記憶。


 俺はこの寂寥感を紛らわすことも兼ねて、ここに来るまでの鈴との会話で得た情報を頭の中でまとめた。




――以下回想――


「なあ鈴ー、スキルってどうやって使うんだ?」


「はぁ!? なんでそんなことも知らないの!?」


「いやほら、俺今までVRMMOやってこなかったから」


「だからってそんなこと知らないなんて。大体今までやってこなかったらむしろ事前に情報調べるとか、説明書読み込むとかしなさいよ!」


「あーごめん……。でもなんかそういうのってめんどくさいじゃん? 早くプレイしてみたかったし」


「はぁ!? そのくせちゃんと調べてる人にやり方を聞くの?」


「…ごめん」


「ったくもう! 次からはちゃんと調べなさいよね! 今回だけなんだから!」


 と、一通り俺を怒った後鈴はスキルについて説明してくれた。

 いや、実際反省はしてるよ? 戻ったら調べてみよう。



 曰く、スキル名を声に出すとそのスキルに応じて身体が勝手に動くようだ。

 別に声に出す必要はないのだが、頭で思い浮かべるだけだと読み取りミスが起こることがあり、推奨はされないらしい。

 

 スキルの取得方法に関しては、そのスキルを得るにふさわしい行動を重ねるか、レベルアップ時に得るポイントを使って取得するかの二つがメインらしい。

 それ以外にもいくつか特殊な取得方法があるらしい。


「そのスキルを得るにふさわしい行動を重ねるって、どういうことだ?」

「多分だけど、行動にも経験値があったりするっていうことじゃない? その経験値が一定レベルに達したらスキルを得れる、みたいな」


 と、いうことらしい。



 更に初期状態でも3つの職業の初期スキルは備わっているらしく、例えば戦士なら剣術や拳術など、魔導士なら火魔法や水魔法など。

 それらは完全なランダムらしく、最初に得られるスキルは軽い戦闘の補助になる程度らしい。

 そして、ステータスから確認してみたところ俺のスキルは【ナイフ術】というものだった。


 それを把握していなかったにも関わらず冒険者ギルドのカウンターの初期装備としてナイフのセットを選んでいたのはとても運が良かった。

 盗賊に関していえば弓などの特殊な武器が必要になることもあるので、本当に運が良かったとしか言えない。

 まあ弓もやってみたかったけどね。


 鈴が買っていた初期装備セットのメイン武器は両手剣だったので、鈴は戦士なのだろうか。

 その疑問を鈴に投げかけてみると…



「私の職業? なんか魔法戦士っていうやつみたい。女神さまに聞いてんだけど、どうやらすっごく珍しい職業みたいね。なんでも二つの職業が合わさった職業が出る確率は、なんだかすんごく低いんだって」


「リアルチートじゃねえか! それで、どんな職業なんだ?」


「んーと、名前の通り魔法も近接もできる職業らしいよ。だから初期スキルは剣術と火魔法だったし」


「……まじでチートだ……」


 鈴はリアルでもなんでもできてチートなのに、ゲームの中でさえチートなのか。

 やはり神に愛されているというかなんというか……。

 ん? 待てよ? ランダムで決まったってことは……


「じゃ、じゃああの特典的なスキルはなんになったんだ……?」


「んー、なんかねー、【(シャイン)】っていうスキルなんだけどね」



 そう言って鈴が説明してくれたその【(シャイン)】の効果は、まさにチートの一言だった。


(シャイン)

レアリティ:5

パッシブスキル:光合成レベル2(日光を浴びている間は自動回復)

アクティブスキル:サーチライトレベル1(掌から光を放ち、その光に触れたところの状態を把握する)

         ソーラーチャージレベル1(1日に一度だけ3分間、すべてのステータスが3倍になる)



 ……ん?

 ……は?

 サーチライトは理解できる。索敵は便利だね。

 ソーラーチャージて……。

 確かにバフ系統のスキルではある。だが桁外れだ。

 3倍だぞ3倍。しかもすべてのステータスだ。

 なに3倍って、ソーラーのsunと掛けてるの? ってやかましいわ。


 しかし本当におそろしいのは光合成というスキルだと思う。


「なあ鈴、この光合成のスキルがレベル2なのって、何かした?」


「いや、なんか気づいたら上がってたからわかんない」


 これだ。

 多分ここがぶっ壊れ性能なのだ。


「蓮くんどういうこと?」


「多分このスキル、日光に当たっていたらレベルアップするぞ」


「え!?」


 そう。

 そこがチートなところだ。

 さっき鈴が説明していた行動の蓄積経験値ということを鑑みると、この光合成で必要行動は日光を浴びること。 

 これは、晴れている日ならいつだって行えることだ。

 この自動回復量がレベルに応じて上がるのだとしたら、長くログインすればするほど倒すのは困難になる。

 それこそ、一撃で倒せるような攻撃でなければ……。


「……チート、だな」


「ね……」



 この時ばかりは、あまりの衝撃に二人とも静かになってしまった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 そんな一幕もありつつ、俺らは草原に来たのであった。


 街から出る時にはやはり冒険者カードが役になったが、それはさておき今の状況だ。


 

「敵、全然いないな」


「そう…ね……」


 

 敵が、全くいないのである。

 全く、とは言い過ぎだったが何体か出現してもすぐ他のプレイヤーが狩ってしまうのだ。

 ちなみに出現するのは主にスライムで、しかも地面からにゅるっと出てくるというなんともシュールな出現方法だった。


 定期的に、いろんな場所からにゅるっと出てくるのである。

 離れたところから見てると、なんかところてんを作るところを見ているみたいで気持ちいい。


 ただそれも討伐する側からしたら迷惑でしかない。

 確かに混雑するのは最初の方だけかもしれないし、いつまでも初めの草原でレベリングされるのは運営としてもやめてほしいかもしれないが。

 それでもこのPOPの遅さはいかんともしがたい。


 そう思っていたら、鈴が何か意味深なことを呟いた。



「もしかしたら、あのウワサも本当だったのかもね……」


「噂? どんな噂だ?」


「このゲームを作った会社、元々は夢について研究している研究所だったらしいのよ。それが、何を血迷ったのかゲーム開発に乗り出しはじめてその一作目がこれなの。他にもAI技術の第一人者とか、すごい人を集めて作られたんだって。だから、全然ゲームの知識がないまま作られたんじゃないかっていう噂。でも事前に公開された映像の綺麗さから、そういう悪い噂はあんまり聞かなくなったんだけどね……」



 なるほど……。

 じゃあ冒険者ギルドの受付があんなに混雑していたのもそのせいかもしれない。

 普通ならある程度の混雑は予想していて然るべきだし、それに予め対応策を取らないのは怠慢だ。

 ゲーム会社というものは、お金を受け取る代わりに遊びを提供するわけだからプレイヤーが楽しめることを第一に考えるはずだ。

 しかしこのゲームはリアルさしか追及していないのかもしれない。研究者ばかりが作ったゲームなら、他のゲームと違いがあるというのも理解できなくは、ない。

 だから、プレイヤーが不都合に感じることも多々あるのかも……しれない。


 納得いかねえ。

 こっちはちゃんとお金だしたのに……



「クソゲーじゃね?」


「うん……そうかも。でも確かにこのリアルさは他のVRゲームよりずば抜けてるし……」


「まあせっかくスキルもレアだしね」


「今後改善されるのを待つしかないかなー」



 

 結局俺たちは、仕方がないのでもう少し遠出することにした。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 その後20分近く歩き、俺たちは草原の中でも森の近くにある方へやってきていた。


 ここいらへんになると流石に少し遠いからか、プレイヤーの数はまばらだ。

 近くにいるプレイヤーでも目測で100mくらいは離れているため、獲物を横取りされることはないだろう。

 獲物を横取りすることは本来MMOでは御法度だが、町の近くの人口密度の高い草原では故意ではないそういった事案も発生していた。


 それの問題も解消され、普通にモンスターが出てくるようになった今。

 しかし、ここでもまた新たな問題が発生していたのだ。


 それが…



「鈴そっち行ったぞ、というかこっち来ない」


「『無より有を生み出すは、万物を照らす叡智の炎』ファイヤーボール、『縦切り』! 倒したよ! あ、レベルアップだ」



 魔物が鈴ばかりを狙って、全然俺の方に来ないという問題だ。

 ちなみに『無より~~』というのはファイヤーボールの詠唱で、鈴はこれに剣術アーツの縦切りを合わせることで疑似的な魔法剣を作り出していた。


 今の魔物はゴブリンだったが、結果は一撃死。

 俺が手を出すまでもなく、ゴブリンも声すらだせずに切られて死んだ。


 さっきからずっとそうだ。

 敵モブは全員鈴しか狙わず、しかもその鈴が一撃で倒してしまうため、俺の練習になっていない。

 俺も何度か攻撃をしたが、それでもタゲは一向に鈴からはずれず、俺に背後から攻撃されるがままに死んでいったゴブリンもいた。


 俺はほぼ収穫がなかったが、しかし鈴はさらに大きな収穫があった。

 それが、先の戦闘で使った魔法剣だ。

 火球を放つ前に目の前にとどめておき、それを剣にまとわせて切るその技はよほど攻撃力が高いのかすべてのモンスターがなすすべなく命を落としていくのである。

 このスキルとスキルの合わせ技のような魔法剣。どうやらこういう技こそ、あのRDOのサイトに書いてあった〝選択肢"なのだろう。

 確かにスキルとスキルを組み合わせられるのは、もはや無限の選択肢と言えた。

 

 さらにこの魔法剣、鈴との相性がすこぶるいいのだ。

 鈴のスキルである【光合成】。これの説明文には日光を浴びている間自動回復と書いてあったが、この自動回復、どうやらHPだけでなくMPまで回復する代物だったようなのだ。

 日光を浴びてさえいれば魔法を連発もできるし怪我もある程度は無視できる。

 今のところはその回復量は微々たるものだったが、このスキルはまさにチートと呼ぶべきものだったのだ。



「レベルアップ、どうだった?」


「うーん、攻撃力が1センチくらい上がって、HPも少し増えたかなー」


「しっかしまあ、ステータス全てがバーで表示されるってわかりにくいことこの上ないな」


「見やすいは見やすいけどねー」



 そう。RDOではステータスもセオリーからはずれていたのだ。

 普通は数値化されるはずのステータスだが、そのバーを見て判断することしかできないのである。

 


「蓮くんはあとどれくらいでレベルアップしそう?」


「んー多分ゴブリン2匹くらいかな」


「近くに居なそうだし、森に入ってみる?」


「そうするか」



 ということで俺たちは森に入ることになった。

 ステータス画面から確認したところ、時間は17:00。

 もうそろそろ夕方と言っていい時間になる頃だった。



 ちなみに俺は戦闘の合間を見ては影に潜るようにしていて、影潜りのスキルレベルも2まで上がった。

 影潜りは結構難しいスキルで、影に潜ると地表が影になっているところにしか進めず、光が当たっているところに当たるとわずかにダメージを受けるのだ。

 そしてこれはレベルが低いからなのか、影に潜っていられる時間は10秒ほどでその時間を過ぎると勝手に影から出てしまうし、クールタイムは潜った時間の3倍ほど。

 ちゃんと考えて使わないと大変そうだ。



 俺たちが入った森はどうやら落葉広葉樹の森らしく、ふかふかとした土は踏み心地がいい。

 こういったところもリアルに作りこまれているため、少しくらいの不都合は我慢しようという気持ちも沸かないでもない。

 静かに地面にさす木漏れ日は見ていて美しいし、何より気持ちい。

 都会で育った俺ら兄妹にとってはどれも新鮮な光景だ。


 所々大きい葉が作る影も生まれており、わずかなダメージさえ目をつむれば影潜りも使えそうだ。



「きれいだね」


「うん。なんか空気もおいしい気がする」


「そういえばそんな気もするなあ。さすがにそこまでは作りこまれていないだろうけど」


「どうだろうね。案外もっと細かく作られてるかもね」



 確かにサラさんとの自然な会話を思い出してみると、細部まで作りこまれていてもおかしくない気がする。

 サラさん……か。かわいかったなー。

 なんかサラさんと話していたのがもう随分と前に感じるな。

 現実に居てもおかしくないくらいリアルで、でも現実では出会えないような美少女だった。

 


「蓮くん? 何考えてるの?」


「え!? いやなんも考えてなけど……どうして?」


「いや、なんか鼻の下が伸びてた」


「それ比喩表現じゃなくて本当なんだ!? ……ちょっとサラさんのこと思い出してた」


「またあの女? ったくどこかいいのか。やっぱり胸? 胸なのね?」


「いや……そんなことは」


 

 鈴が自分の胸が小さいことを密かに気にしていることを知っているので言葉を濁す。

 


「でも気をつけなさいよ。あの子はギルド嬢だからあんなに」



 と、鈴が話しているその時だった。



――ブモォォォォォ!――



 森の奥の方から何かの雄たけびが聞こえたかと思うと、どんどんと振動が足に伝わってきた。

 どうやらこちらに近づいているらしい。


 やべぇ、なんか知らんけどめっちゃこわい!



「れ、蓮くんどうする!?」


「逃げるぞ!」



 俺は鈴の手を掴んで一目散に森から出ようと駆けた。

 幸い森に入ってからはまだあまり経っていないはず。

 もう少し走ればなんとか……!



「ちょっとまって蓮くん! 出口こっちじゃない!」


「え!?」


「多分……こっち!」



 妹が指さす方へ走ってみるも、草原はなかなか見えてこない。

 尚も足音は聞こえてくるなか、森から出られない焦燥感が俺たちの胸を焼いていた。



――ブモォォォォォ!――



「また聞こえた!? 今度はもっと近い!」



 かなりまずい状況だ。

 なにがどうまずいって、何がまずいかわかんないぐらいまずいこの状況がまずい。

 せめて相手の姿さえ見られれば……そうだ!



「鈴! あのスキル、サーチライトだっけ? を使うんだ!」


「う、うんわかった!」



 そうして鈴が音のするほうにサーチライトを向けると……



「蓮くん! オークだ! なんかでっかい棍棒持ったオークがいる!」


「なに!? オーク!? なんだそいつ!?」


「わっかんないよ! とにかくやばいよ多分!」



 やばい。

 確かにやばい。

 お互い頭が混乱し過ぎて何言ってるかわかんなすぎてやばい。


 

「もういい! 迎え撃とう!」


「わかった!」



 この時ばかりは、俺も鈴も正常な判断力を失っていた。

 今回は少し3人称っぽい1人称になってしまったんですけど、どちらの方が読みやすいでしょうか。

 みなさまの反応如何では普通に3人称に移行する可能性もあるので、その点についても感想をいただけたら嬉しいです。


 他にも、個々の設定は考えていても大元のないようはある程度より先は決まってないので、皆さんの反応を見ながら書かせていただきたいです。


 あと、ご指摘していただいたように、MMOをかじっただけの状態で書くのはあまりにも無責任だ思いましたので某メイプルをDLしようとしてみたのですが……PCのスペックの問題でできませんでした……。

 色々試してみて、DLできるものを探してプレイしてみるとともに、少し勉強しようと思います。


 さて、前回の後書きで申し上げました加筆修正を少し行いましたのでここに載せようと思ったのですが、少し長くなってしまいそうなので活動報告に載せさせていただきます。


【加筆修正のお知らせ】

2016/9/19/12:20頃

・魔法戦士について説明する鈴のセリフを加筆修正


【結構重要な加筆修正!】

2016/9/19/23:20頃

・最後の方でオークをオーガと書いてしまっているところを修正

・オークが持っていた武器を剣から棍棒に変えました。結構重要な変更をしてしまい、申し訳ありません!今後こういうことはないようにします!


【さらに重要な加筆修正】

2016/9/20/23:30頃

・影潜りのスキルの説明を色々改変いたしました……。昨日こういうことはないようにすると言いましたのにまた同じ過ちをしてしまい、誠に申し訳ありません。

 具体的には「そしてこれはレベルが低いからなのか、影に潜っていられる時間は10秒ほどでその時間を過ぎると勝手に影から出てしまうし、クールタイムは潜った時間の3倍ほど。」という文を追加して息ができないという文を消しました。

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