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まずは自己紹介といこうか。

《Real Dream Online》


――現実とは違う、もう一つの(げんじつ)――


 そんなキャッチコピーで売り出されたこのゲームは、爆発的な大ヒットとなった。


 フルダイブ型のVR技術も進歩し、今では映画でさえVRを使って現実のように楽しめるようになった近年。

 当然いくつものVRゲームが発売され、10数年前だったら物語の中だけの存在の、それこそ絵空事だったVRMMOも一般的に楽しまれるようになった。

 最初は頭や体にいくつもの電極を張り付けて専用の施設で行うことしかできなくなっていたVRゲームも小型化が進み、今では一家に一台とは言わないまでも高校生のクラスの2/3程度は持っていて当たり前になった技術だ。


 そんな中、どうしてもVR技術だけでは解決できなかった問題がある。

 それが、選択肢の有限さだ。


 何分自分の意志で自由に行動できるのだ。

 扉の鍵がなければ扉を壊せばいい現実と違って、ゲームの世界では鍵が必要になる。

 傷薬がなければドクダミやアロエを使えばいい現実と違って、ゲームでは回復薬が必要となる。

 このように、「現実だったらこうしていたのに」という選択肢を選べないという問題があった。

 もちろんプレイヤーはそれを甘んじて受け入れてプレイするしかないだろう。これはゲームなのだから。


 しかし、VR技術が進歩して現実に近づいていくにつれ、この問題は浮き彫りになっていった。

 もし現実だったら、そう言って落胆したプレイヤーも少しずつ増えていった……。


 この問題を解決したのが《Real Dream Online》 通称RDO。

  このRDOは、Dreamの名が示す通りVR技術に夢の仕組みを取り入れた画期的なものだった。

 あなたは夢の中で、まるで現実のように可能性に満ち溢れた経験をしたことがないだろうか。

 このRDOはその脳の仕組みを解き明かし、プレイヤー個人の想像力を利用してゲームでの選択肢の限界を取り払うことに成功したのだ。

 さらにRDOでは…………






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「いや長えよ」


 思わず独り言を言ってしまった。

 これから俺が始めるゲームがどんなものかなーと軽くネットで調べてみたらこれだよ。

 別にVRの歩みとかは知らなくてもいい。元々説明書とか読まないタイプの俺にこんな文章は苦痛だ。

 大体これ書いたやつどんだけ野生児なんだよ。鍵無くてもドア壊さねえし、傷に草塗り込むのなんて大昔かよ。


 世は空前のVRブーム。

 テレビや映画もVRで楽しめて、さらにはゲームもできる。

 こんなことは誰だって知ってる。この時代に生きる人ならね。

 だからこのサイトに書いてることは大体がただの常識で、わざわざ読むまでもないことだ。

 それに肝心のRDOのこともよくわからなかった。まあ多分現実のように色々なことができるということなのだろうが……。


「ったく、時間無駄にしたぜ」


 そう独り言つのも間違ってないだろう。

 まあ普通は独り言を言っていたら変人だが、ここは自分の部屋で俺以外誰もいないしいたとしても気づかれることはないだろう。

 影が薄いからな。

 影が薄いからな。

 念のためもう一回いうぞ。

 影が!薄いからな!


 

 さて、俺がこんなに影の薄さを強調するのもそれはそれは深いわけがあるのだが、まずは自己紹介といこう。





 俺の名前は一条蓮(いちじょうれん)

 どこにでもいる普通の高校生……に憧れる、ちょっと普通じゃない高校生だ。


 まず、家庭環境はとてもとても恵まれている。

 それというのも、俺の父親はカメレオン俳優と名高いどんな演技でもこなす名優の一条廉太郎(れんたろう)。そして俺の母親は若いころはアイドル業を、今は女優業をやっている木瀬花梨(きせかりん)

 さらに妹の(りん)はトップアイドルとして今引っ張りだこになっている。

 家も六本木の高級マンションだし、なんなら別荘もいくつか持っている。

 両親は美男美女なため、俺もそれが遺伝して整った顔立ちをしていると自負している。


 だがしかし、神様は不平等だった。

 鈴には美貌や演技力など様々なものを遺伝させた神が俺に遺伝させてくれたのは、父親のカメレオン俳優という所だけ。

 しかも、カメレオンの保護色っつー所だけだったのだ。

 つまりなんというか、俺は風景に埋没しやすいのだ。まるで保護色でも使っているかのように。

 まあ有体に言えば、めちゃくちゃ影が薄いということだ。

 

 そのせいで基本何かの打ち上げには誘われるのを忘れられ、タイムラインで初めて知って枕を濡らすこと数回。

 先生の数え忘れでプリントが足りないこと数十回。しかもそれでプリントを貰おうとして手を挙げても気づかれないというアフターケア付きだ。

 さらにはこの高級マンションの自動ドアでさえ3回に1回は開かないという、もはや人知を超えた領域の影の薄さを誇っている。


 それとひきかえに我が妹の鈴は、なんというかむちゃくちゃ存在感がある。

 というか、同じ場所にいたらどうしても意識が向いてしまうようになっているのだ。

 俺が何か特別なこと――ミスディレクションとか――を使っているわけでもないのに影が薄いことに対し、鈴は特別な力――目を集める的な?――も持っていないはずなのに自然と目を引く。

 神様、俺なんかしました?




 だから俺は、このRDOに一縷の望みを懸けていた。

 ひょっとしたら、ゲームの中では普通の人と同じように生活できるかもしれない。

 コンビニのレジで会計しようとしているのに目の前の店員に「次のお客様ー?」と言われるような影の薄さはもう嫌だ!

 前に一度だけVRMMOをした事があるが、その時のあの微妙なリアルさ? というか生々しさに忌避感を覚えてからは手を出さずにいた。

しかしこのRDOはそういった生々しさとは違った、本当のリアルさが売りらしいから期待している。

 

 俺はゴーグル型の出力機器をかけ、枕型のハードにソフトを入れる。

 この枕型っていうのもなんかいいよね。昔の人は枕の下に本を置いて寝るとその夢を見るっていう迷信があったらしいし多分そこから来ているんだろうが、普通に寝心地もいいので首を痛めたりしなくて済みそうだ。


準備も済んだことだし。

さあ、ゲームを始めよう。



「リンクスタート!」



 ……何も起こらない。

ごめん知ってた。ちょっと一回やってみたくなっちゃって。

ほら、あるよねこういうの。なんか急にかっこいいことやりたくなっちゃうみたいな。

ん? 厨二病?

は、はは。何を言ってるんだい。高2にもなって厨二病なんて……ははは。




『30秒後に没入します。体勢を整え、あまり動かずお待ちください』



 アナウンスが流れた。

 まあここで変な体勢で始まっちゃったら身体を痛めることもあるだろうしな。

 実際VRゲームのせいでエコノミー症候群になった事例もあるらしい。

 しかしまた30秒とは微妙に長いな……。


 そのままじっとして待っていると、ピコンという小さい音と共に視界が切り替わる。

 ゴーグル型出力機の裏側の暗闇から、光り輝く極彩色の世界へと。

 その眩しさに軽い酩酊を覚えると同時に、俺の現実の身体はくたっと力が抜け落ちていった。

 VRについてなんの知識もありませんし、なんならMMOすらやったことのない私ですので色々おかしな点があるかもしれません……。


 なるべく定期で書いていくつもりですが、テストの都合や部活の都合で間隔があいてしまうかもしれません。


 感想をいただけるとモチベーションUPにつながります! ですので感想をいただけるとうれしいなーと。



【加筆修正のお知らせ】

2016/9/17/22:35頃

・主人公がサイトを読んだ後の感想を修正。

・電源を入れる時のおふざけの後の地の文を修正。

2016/9/19/9:50頃

昔一度だけVRMMOを→前に一度だけVRMMOを

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