第三十五話 主戦場戦
第三十五話
主戦場戦
機人兵50万と分身したベル50万がぶつかり合う―――――――
「――――ぃやぁっ!!」
――――ベキッ!!ブチブチッ!!
機人の腕をベルが折り、ワイヤを引き千切る―――――
「――――ふぅ・・・機人というのは全身金属ですからそれを折らないといけないので、負けはしませんが面倒ですね・・・」
―――――ガキンッ!!
引き千切った腕を捨てつつベルは周囲の戦況を把握すべく見渡す――――
「まぁ、何体かは逃がしてしまいましたが、数で押し切られない限りリオウ様の防衛ラインは突破できないでしょう・・・ワタシはとにかく数を減らすことを意識して――――」
ベルのその視線の先に人影が現れた―――――
「あーあ、劣勢だね・・・さすがウェルドラドの従者部隊No.2・・・機人兵団と言えど一対一じゃあ歯が立たないか。」
そう言いつつ青年は背負った大剣を抜き構える―――――
「『神の大剣』―――――薙ぎ払え!!」
――――――――ッゴオオオオオオオ!!
大剣で薙ぎ払うと、巨大な斬撃が戦場を駆け抜けベルの分身、そして機人をも両断する―――
「―――――――!?」
ベルの分身がその斬撃に反応した時には辺り一帯が一掃されていた――――
「味方の機人も斬っちゃったけど、まぁ劣勢だったしいいでしょう。この主戦場の結末は―――――オレ一人が立っていた・・・ってね!!」
青年は再び大剣を振りかぶる――――
「―――――その見積りは甘すぎですよ、現自然保護局長、そして二代目『刃の戦士』ノイ様。」
二代目『刃の戦士』――――現王政の『刃の戦士』は高齢故にその任を降りていた。その後継者として任命されたのが現王政の自然生物から国民を護る自然保護局で狩人として名を馳せていたノイだった。故に現王政の戦士だが若さが目立った。
「侍従長セツナか・・・」
声の主は両手に愛用の小太刀を携えたリオウの戦士、帝国従者部隊侍従長のセツナだった。
「ええ。彼女が機人兵団との戦いに専念できる様に加勢して来る者を排除することがワタクシの役割ですので。」
セツナの役割は主戦場での遊撃、数が多すぎて視界が狭まる所に戦局を預けるべく投入された戦争の要――――
「そんな小太刀でこの『神の大剣』に挑むか・・・」
「はい。残念ですが、いくら『竜斬り』と名高いノイ様でも相性はワタクシに優位ですのであまり抵抗なさらない方がよろしいかと・・・ただでさえ―――――」
「何を言っているのやら・・・セツナの小太刀ではオレの斬撃は止められない!!」
振りかぶっていた『神の大剣』を振る――――――が
「ただでさえワタクシはリオウ様に反旗を掲げる者には怒っておりますので加減はしませんよ――――」
大剣の柄を一瞬にして移動したセツナが抑えていた―――――
「これでは自慢の大剣も振れませんね。」
セツナに大剣を掴まれ硬直してしまうノイ――――
「・・・ははは・・・やっぱ人間相手は厄介だな・・・」
普段は狩人として獣を相手にするノイ、人間相手の難しさを感じていた―――
「ノイ様が普段相手にしている大きな獣などにはこの大剣は有効でしょうけど、人間相手には大きすぎるのですよ。」
「その通りだよ・・・オレはどこまでいっても狩人だからな・・・」
言葉とは裏腹にノイは大剣から手を離さない。それが誇りであるかのように。
「・・・では、そろそろ・・・お仕置きの時間です―――――」
「―――――えっ?」
「言ったはずです。ワタクシは怒っていると、主に逆らう輩を従者は決して許しません。その愚かな行動を後悔させるのも従者の仕事――――」
「ひっ―――――!!」
笑顔の裏に潜む圧倒的気迫にノイは全身で危機を感じる――――
「ベル―――!!」
セツナは戦場にいるベルの本体に呼び掛ける。
「―――はいっ!! 行きますっ!!“神獣纏身 ver.九尾”」
ベルの分身が集まり組体操かのように巨大な九つの尾を持つ狐を形作る――――それはいつしか本当に巨大な妖狐となっていた――――
「ぬかったな―――――大型の獣なら―――――」
ノイはその九尾を勝機と見て大剣を手に九尾に飛び掛かる――――
「―――――残念ですがワタクシがその大剣を振ることを許しません。」
セツナが再びノイの大剣を根本から押さえ振らせなかった――――
「なっ――――!?」
―――――ギャオオオオオオオオッ!!
九尾は咆哮を上げノイにその爪を振り下ろす――――
「クソッ!!『神の大剣』―――――」
「―――――振れない剣になんの意味があると?」
ノイは大剣を振ろうとするが、セツナはやはりその邪魔をする――――
「セツナアアアアッ―――――う、うあああああああああああああっ!!」
九尾の巨大な爪がノイを襲う――――
「ノイ様、アナタは狩られるのです。もちろんワタクシはいつでもアナタを倒せましたが、言ったはずです。主を裏切る者には後悔を与えると――――どうです?狩人が獣に狩られる気分は?」
ノイを退けた後、セツナは九尾となっているベルに語り掛ける。
「・・・ベル、そのまま九尾で機人兵も片付けましょうか。」
――――――ゴオオオオオオオオオッ!!
「・・・これでこの主戦場もこれで時間の問題でしょう。」
巨大な妖狐の声が轟く中、セツナは戦地の行方を悟る。
――――――――主戦場戦 ウェルドラド軍 ベル・セツナの勝利
大変申し訳ございませんでした。ユーキ生物です。
前回の第三十四話ですが、中途半端な状態での投稿となってしまいました。理由としましては、まず第一に確認不足でした。あとは最後に書いて、投稿したのが仕事の出張で新幹線で移動中ということで、山の中は非常に電波が悪く正常に保存がされなかったこともあります。もちろん確認で防ぐことはできるのでいいわけでしかありませんが。大変失礼しました。既に訂正済みです。
加えて書き途中の切れ目が、ルリが刻まれ消し飛んだかのような演出になっていまして・・・大変な誤解を生んだかと思います。重ねてお詫び申し上げます。
次作の命名式ですが、少しずつ進んでいます。意味を持つ名前で安定しました。7割くらいの名前がつきました。まだ名前つけてます。進行の遅さが露呈しますね。仕事が忙しい訳ではないのですが、集中力を仕事で使い切っているあたりも影響してるかと思います。もう少し頑張ります。
ではまた次回。
次回は6月23日㈮の更新を予定しております。