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戦士達ハ世界ニ其ノ名ヲ謳ウ  作者: ユーキ生物
戦士集結編
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第三話 放浪の侍と概念魔術

第三話

放浪の侍と概念魔術


 帝都より少し北に位置する小さな村にウェルドラド第一皇子にして最強の皇帝候補リオウとその戦士セツナの姿があった。


「こんな小さい村が帝都周辺で最も情報の飛び交う場所だとは・・・」

「帝都に情報を持ち込む通信者と帝都から情報を持ち出して来た通信者の溜まり場、らしいです。」


 そんな二人に男が話しかけて来る。


「お?これはリオウ様、情報通り玉座争奪戦の仲間探しに出ていらしたようで・・・」

「へぇ、そんなことまでもう伝わってるのか・・・」

「そりゃそうですよ。多分この国で知らない人はいないですよ、そのくらいホットな話題ですから。」

「それで?リオウ様へはどういったご用件で?」

「へへっ、どうにも神体使いをお探しのようでしたので、小耳に挟んだ話をお聞かせしようかと・・・」


 男は手を揉み、リオウの様子を伺う。


「・・・話してみろ、その情報の値は我が決める。」

「助かります。情報屋なんで・・・信憑性はかなり高いです。なんせ私が直接見たもんなので、最低でも神具は持っています。見た目はまんま東洋の(さむらい)の様な、男性でしたが、髪は長く、刀を持ってました。ソイツを見たのは一昨日(おととい)なんでまだ遠くへは行ってないかと・・・」

「神具、あるいは神体を持っていると思った根拠は?」

「ちょうど私がその人を見たとき、ソイツは族に絡まれていたんです。ですが、一瞬にして族は切り捨てられていて・・・その際に、その侍は光りを放って、そして、ソイツに引き付けられる様な引力(いんりょく)を感じたんです。私はかなり離れた所からそれを見ていたんですが、それでも数歩引き寄せられてしまうほどに・・・」

「引力使い・・・」

「恐らくは。」

「なるほど、情報は以上か?・・・セツナ」


 そう言うと、メイドのセツナは情報料を支払い、リオウ達はその情報屋と別れた。


「引力使いの侍か・・・」

「ここからどう探します?」

「探し方は一つしがあるまい。」


『光よ、引力使いの侍への道標(みちしるべ)となれ』


 リオウがそう言うと、その手元より光が出て、ある方向へと伸びていった。


「改めて思いますけど、リオウ様の能力は便利過ぎませんか?あまりに便利過ぎて堕落の道を行ってしまわれないか心配になります・・・。」


 そんな心配をするセツナをよそにリオウは更に言葉を紡ぐ―――――


『運命よ、引力使いの侍と我を引き合わすものとなれ―――――』


 リオウの概念魔術――――――それは生物以外の森羅万象を意のまま・・・いや、言葉のままにする魔術――――――――運命ですら例外ではない。





「――――――お前が引力使いの侍か?」


 運命がねじ曲げられた故か、リオウが侍と会うのに大した時間はかからなかった。


「・・・・・・だったら?」


 警戒心を(あらわ)にする侍にリオウは堂々と続ける―――――


「貴様、我が戦士となれ――――――」

「リオウ様、そんなどんな方かも知らずにそういうのは―――――」

「その従者(じゅうしゃ)の言う通り、玉座争奪戦の噂は聞いているが・・・いや、何より、(それがし)(つか)えるのは某より強い者のみ―――――」


 そう言うと、侍は腰の刀に手をかける―――――――


「血気盛んでいいな、ますます気に入った!貴様、名は?」

「―――――シゲノブ」

「良い名だ――――――」


 そこにセツナが仲裁に入る。


「勝手に盛り上がらないで下さい。リオウ様、こんなところで怪我でもしたらどうするのですか?――――シゲノブ様、貴方も真剣を易々と振ろうとしないでください――――――」


 ――――――と、言うセツナの姿が――――――――消えていた――――


 ――――――ガキィッ!!


 その直後、セツナはシゲノブの背後に現れ、シゲノブの刀とセツナの小太刀が激しい金属音を響かせていた―――――


「思っていたよりやるようですね。完全に仕留められるタイミングでしたのに―――――」

「舐められたものだな――――――某に触れることは何人(なんぴと)たりとも叶わんというのに。」

「―――――今の太刀筋(たちすじ)―――――居合(いあい)の流派ですね。」

「見えざる斬撃を止めたことも驚いたが、たった一太刀(ひとたち)で某の剣術を見破るとは、従者殿もなかなかやるようだ・・・」


 ―――――――――ガキィッ!!ガガガガガガガッ!!


「―――――っ!!」

「―――――ふんっ!!」


 ――――――――キィンッ!!


 刀と小太刀がぶつかり合う――――――


「なるほど、確かに近付くことは難しいようですね。」

「従者殿も華奢(きゃしゃ)な姿の割になかなかの力をお持ちだ。」

「しかし、居合使いには弱点があることをご存知ですか?」

「いや、某の剣術に死角などない。」

「こちらから近付かなければ、間合いに入らなければ良いのです―――――」

「いや、某は一度狙った敵を逃がしたことはない―――――フゥゥゥ・・・・」


 シゲノブは大きく息を吐き出し――――――


「スゥゥゥゥッ―――――――」


 大気を吸うと、その身体から光を発した――――――


「―――――――神の息」


 そうシゲノブが言うと――――――


「―――――これはっ――――――聞いていた引力っ!?」


 その場にシゲノブへと向かう引力が発生した。

 あまりに強力な引力にセツナの身体がシゲノブへと引き寄せられる、そこで待つのは絶対的な居合の間合い―――――


「神の心臓――――!!」


 そう言うと、セツナの身体も輝き―――――シゲノブへ突進した――――


「御覚悟を―――」

「――――っ!!」


 再び二人の刃がぶつかり合う――――

 引力が収まると、セツナは身だしなみを整えて


「これでも仕留められないとは・・・シゲノブ様は相当な手練れで間違いなさそうですね。」

「某の間合いに入ってきて無事だったのも従者殿が初めてだ・・・さすが、皇帝を守護する戦士、と言ったところか」


 お互いが認め合う言葉を交わすと――――


「じゃあ、今度は我がシゲノブ殿に挑もうか」


 リオウがそう割って入った。


「いくら最強の魔術師と名高いリオウ殿でも、某に触れることは叶わぬぞ」

「まさか、それじゃあ、ハッキリ宣言させてもらおう。我がシゲノブ殿に触れられたら、シゲノブ殿は我が戦士だ。」

「――――いいだろう。万に一つもないとは思うが――――念のため、峰打ちにさせてもらおう。」


『シゲノブ殿の刀は我に触れることができない』


 リオウはそれだけ言うと、シゲノブへ向かってゆっくりと歩き出した。


「なっ―――何という・・・ふっ!!」


 その堂々たる態度に一瞬驚いたシゲノブだったが、すぐに気を取り直し、刀を構え、間合いに入ったリオウを薙いだ――――


「・・・何っ!?」


 ――――――はずだった。


「くっ!馬鹿なっ!?」


 何度もリオウに刀を振るが、まるで霊のようにすり抜け、手応えがない――――――


「触れた。」


 そうする内にリオウはシゲノブと近接し、その肩に触れていた。


「――――――――なるほど・・・最強の魔術使いと言われるわけだ・・・」


 リオウの概念魔術――――――それは生物以外の森羅万象を言葉のままにする魔術――――――――それは物理法則ですら例外ではない。


「この方だったら・・・・・・・・・すまないリオウ殿、もう一度、某の攻撃を受けてはくれぬか?もちろんこの勝負は某の敗けでいい。 」


 少し考え事をしたシゲノブはそう提案してきた。


「・・・ん?まぁそれでシゲノブ殿の気が晴れるのであれば――――」

「・・・恩に着ます。」


 まだ何かを迷うようにシゲノブは続ける―――


「この神の息には強力過ぎる使い方がある。使うことを躊躇(ためら)うほどの――――我が主なら、リオウ殿なら、それを受け止めてくれるやもしれぬ・・・・・・」


 やがて、シゲノブはゆっくりと息を吐き――――――――


「――――――神の息 惑星(ほし)落とし!!」


 輝く大気に吸い込まれるように――――――――上空から一つの山程の大きさのある惑星が一つ落ちて来た―――――――


「―――――――セツナ」

「ハッ!―――――――――神の心臓!!」


 セツナの身体が輝くと、セツナは惑星の目の前まで飛び―――――――


「――――――――えぃやああぁぁっ!!」


 ―――――――――ドゴッ!!


 惑星を砕いた。


 惑星の欠片が降り注ぐ中、リオウはシゲノブに向き合う


「シゲノブ殿、そんな躊躇(ためら)いのある攻撃、我が出るまでもないぞ。」


 リオウはシゲノブから何かを感じ―――――――


「――――――お前の能力(ちから)がどれだけ強力だろうと、存分に振る舞うがいい!後の事は我に任せておけ!それが王たる我の責務なのだから――――」


 ―――――――堂々とそう告げた。


「――――――――――!!」


 シゲノブからは先程よりも明るい輝きが発せられ――――――


「おおおおぉぉぉっ!! 神の息! 惑星落としぃ!!」


 さっきとは比べ物にならない程に大きな、自らの惑星よりも大きな、受けきれなければこの惑星の方が砕かれてしまうような惑星を引き付け、落とす――――――


天空(てんくう)(かざ)すは、惑星(ほし)をも掴む(たけ)(てのひら)!!』


 飛び上がったリオウは落下してくる惑星(ほし)を掴み――――――


手中(しゅちゅう)の重力、惑星(ほし)を潰し』


 リオウに掴まれた惑星はその掌の中に吸い込まれるように圧縮され、やがて掌に収まってしまう―――――――


『――――――やがて、収束する。』


 掌に収まった惑星は更に小さくなり、そして、消えて無くなった――――――


 シゲノブはその圧倒的な概念魔術を目にし、リオウの前に膝を着いた。


「―――――我に(つか)えよ。惑星(ほし)の戦士 プラネットガーディアン。」

「うむ、この『惑星(ほし)の戦士 プラネットガーディアン』我が主を命の限り護り抜こう。」


 こうして、リオウの戦士として、剣士シゲノブが加わった。


 どうも、ユーキ生物です。

 戦士達ハ世界ニ其ノ名ヲ謳ウ 第三話いかがでしたでしょうか?今後はこんな感じでヒカル、リオウを交互にやっていきます。そして、今回名乗りはありません。毎回やってると肝心な時の凄みが薄れそうですし・・・もし気に入っていただいてる方がいらっしゃいましたらスミマセン。

 さて、後書きですが、ストーリーに関わることは仲間が全員集まってからの方がよさそうなので、しばらくはあまり内容と絡むことは語れなそうです。どっかのタイミングで登場人物の年齢とか語りたいですね。

 そんな感じでいきなりネタ切れ感ありますが・・・

 秋が近付いて来ましたね。時事ネタとかは自重しようかと思ったのですが、この後書きを書いている今、あった事を書くことを決めました。

 私、現在この後書きを鉄道の駅で電車を待ちつつ書いているのですが、足下にコオロギがいた。と思ったらゴ○ブリでして・・・風情が打ち砕かれた、という絶望の最中にいます。まぁ、それだけです。しょーもない話してスミマセン。

 さて、次回の更新なのですが、リアルの方で一週間ほど少々執筆がしにくい状況になりまして・・・次回の更新は二週間後にさせて下さい。端的に言えば出張です。ご勘弁下さい。


次回更新は9月16日を予定しております。

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