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戦士達ハ世界ニ其ノ名ヲ謳ウ  作者: ユーキ生物
決戦編
26/40

第二十六話 中堅戦② Hyper High Speed Battle

「――――神速 “おん”!!」


 ―――――ドシュウゥ!!


「“神の翼 台風サイクロン弾丸バレット”!!」


 ―――――バッサァ!! ゴオオオオオッ!!


 ルゥムの嵐の中で、カケルが走りルゥムの羽が舞い襲う、フィールドを縦にも横にもフルに使った高速戦闘の第二ラウンドが始まった―――――



第二十六話

中堅戦② Hyper High Speed Battle



「おおおおぉっ!!」


 ―――ドシュウッ!!


 先程までの速度域「“神速”」以上の速度を「“神速 音”」を以って超える。これは代償型の神具を使うカケルの負担が増えるということ・・・カケルは自らも鼓舞するように声を出す。


「いけるっ!!確かにカケル君の速度は上がってるけど、アタシの方か上がってる――――捉えられる――――」


 ルゥムは確信得ていた。未だにルゥムの風よりもカケルは速く走っているが、その速さの差が多少埋まっていることがルゥムは分かっていた。


 ――――ゴオオオオオオオ!!


 嵐を繰りルゥムは羽の矢を散らしカケルを追い立てる――――


(――――少しずつでいい、少しずつ退路を狭めて・・・この速さの差なら特訓でやった詰め方ができる――――)


 ルゥムは無垢な笑みを浮かべていた。



 ―――リオウ軍控室


「これは・・・セツナさん。」

「はいソフィ様の思っている通り、少しずつですが追い詰めております。」

「特訓の成果ってヤツてすね!!」

「えぇ・・・ですが、特訓はあくまで二次元、盤面での立ち回りでした。空中戦は想定しておりませんでしたので・・・それを三次元に応用できるルゥム様・・・そのセンスもあります。」

「セツナの言うセンス・・・恐らく傭兵として戦ってきた際に身についた柔軟さだろう。」


 セツナの見立てにリオウが付け加えた。


「先鋒戦の時にカルノレット様がレイラ様に勝てなかった理由が“経験”なのでしたら、ルゥム様が負けない理由も“経験それ”でしょう。」



 ―――――ドシュウゥ!!


 (―――くっ・・・退路が・・・やっぱり僕は少しずつ追い詰められてる・・・このままじゃ・・・やられる・・・体力的なこともあるし・・・ここは――――)


 カケルはコウとの特訓を思い出す――――



 ―――ゴウッ!!


「そこで背後に回り込む!!死角を突くと更にいい!!そう!!その感じ!!」

「はぁ・・・はぁ・・・えっと、次は・・・」


 走り回って息の上がるカケルはコウに次の立ち回りを教わろうとする。


「いや、立ち回りはこんなもんだろ。」

「えっ?これだけなんですか?」

「んーまぁ、もっとあるにはあるけど、そういう小技よりも、誰にも負けない唯一の武器を作った方が結果的に強くなると思うからな。」

「唯一の武器・・・ですか・・・。」



(うん―――やっぱりコウさんの教えは的確だった。)


 嵐の中を走りながらカケルは覚悟する。


「僕の唯一の武器・・・それは―――速さだっ!!」


 ―――――ギンッ!!


 カケルはルゥムを睨みつける――――


「一気に決める ―――――“神速 コウ”!!」


 ―――――シュンッ!!


 カケルの速度が更に上がり、消えるようにルゥムの方位を抜ける――――


「なっ―――――!?」


 ―――――シュンッ!!


 カケルが一気にルゥムに接近する――――


「うっ――――っあああああ!!」


 ――――――バッサアアア!!


 近付いてきたカケルと距離を取るべくルゥムは羽の矢を壁の様に散らし飛ばす――――


(マズい・・・速さのギアが一段上がった・・・この速さはガチヤバい・・・けど、カケル君は代償型の神具、持久戦、消耗戦に持ち込めば勝機がある―――ここは出し惜しみしないで全力で持ち堪える―――――!!)


「“風吹き乱れ、翼すらをも巻き込まん!! 無制御翼嵐舞(ラッシュ)”!!」


 ――――――シュンッ!! シュンッ!! シュンッ!!

 ――――――ゴオオオオオオオオオオッ!!


 さらに強くなった嵐の中をルゥムの羽の矢と嵐を纏って己自身も弾丸となったルゥムがカケルを追い立てるが――――カケルの速さはそれらの攻撃を全て避け千切る――――が


「はぁ、はぁ、っ―――うっ・・・はぁ、はぁ・・・くそっ・・・もう少し速ければ」


 カケルの息も絶え絶えでスタミナの限界が近かった――――しかし、カケルの速度は一切落ちることなく走り続けていた。



「あれも、だな。」

「あれも、とは・・・先日から陛下がおっしゃっている・・・」

「そうだ、ノイ・・・この国の王位継承をやたらと若い時に行う理由だ・・・」

「・・・と、言いますと?」

「軍事力、武力で大陸を統べるウェルドラド、その王に、側近に求められるモノ――――それが“若さ”に備わっているからだ。」


 王は戦いから目を逸らさずに続ける。


「決して諦めることなく敵に立ち向かう戦意――― 自らが最強であると強気に出る誇りプライド――― 時に何者もかえりみないほどの狂気そして無謀―――― そして――――」


 王は走り続けるカケルの姿を見る――――



「もっと速く――――――“勇気で踏み出す(あゆみ)光を越える想いの駿歩(シャインオン) 神速 そう”っ!!」


 ここでさらにギアを、速度を上げるカケルの姿を誰もとらえることはできなかった。



「―――――追い詰められて覚醒する“成長” ・・・これらこそがウェルドラドを支える根幹だ。」



「勝負ありっ!!中堅戦勝者、ヒカル軍、カケル!!」


 ルゥムは地に落とされ、ダメージとあまりの出来事に宙を見ることしかできなかった。


「ルゥムさん、大丈夫でしたか!? ・・・ごめんなさいあまりに速くて手加減できませんでした・・・」


 カケルはすぐさまルゥムの元へ駆け寄り手を差し伸べる。


「あ、う、うん・・・あ、ありがと・・・」


 カケルの手を取り起き上がるルゥム・・・その頬は紅く染まっていた。


「あ、あまりの速さにユイ、口が出せませんでした・・・実況しようとしたら次々と状況が変わってしまい・・・力不足で申し訳ありません。」

「ユイさんが気に病むことはありません。二人のバトルがそれほど速かったというだけのことです。」

「マナさん・・・」

「ユイさん、ですから試合終了時のアナウンスをお願いします。」

「そうでした。えっと・・・中堅戦の勝者もヒカル軍となりました。まさかの展開でしたね。」

「あの速さを目の当たりにしたら納得ですけどね。」

「これでヒカル軍は最終戦に過半数の人員を確保したことになります。人数で勝る戦いは有難いですよね。」

「ええ、残り二戦、リオウ軍はどう戦うか、注目です。」

「ヒカル様は戦えませんが、リオウ様は大きな戦力ですし、残り二戦をリオウ軍が勝てば戦力的にはイーブン、ということになりそうですよね。」

「そうですね。リオウ様のアドバンテージは大きいですからまだまだ目が離せません。」

「それではまた明日の副将戦で!!」



 ―――――――リオウ軍控室


「その、すいませんでした。」

「気にするな。ルゥム。あの速さは想定外だ・・・。」


 ルゥムの謝罪を受け入れるリオウ。


「まぁ、勝敗はもう変えようがないからよいのだが、ルゥム、カケルの方はどうするつもりだ?」

「カ、カケル君!? ・・・えっと、その・・・どう、とは?」

「我が気付いていないとでも?―――――――セツナ。」

「かしこまりました。」


 リオウが一言指示すると、セツナがどこかへと向かう。


「あの・・・リオウ?」

「セツナにはカケルを呼び出してもらっている。一昨日の夜に行った酒場に行って、想いを伝えてこい。」

「えっ!?い、いやいや!!無理無理無理無理っ!?何を言ってるの!?」

「ルゥムもカケルの様に勇気を振り絞るといい。百戦錬磨の傭兵が恋においてはただの少女でいいのか?」

「・・・その言い方はズルい・・・でも、リオウもソフィに対して物怖じしないで言葉にしてるし・・・アタシだけ遅れを取るわけには、いかないわよね・・・スゥー、ハァー・・・よしっ!!言ってくる!!」


 ルゥムは酒場へと勇気を振り絞り、足を踏み出した。



 ―――――ヒカル軍控室


「―――――というわけですのでカケル様にご足労いただきたいのです。」


 セツナはベルに要件を告げる。


「かしこまりました。カケル様へお伝えいたします。」


 ベルも仕事モードでセツナの相手をする。


「それではワタクシはこれで―――――また明日(・・)に。」


 セツナはベルを一瞥する。


「お気をつけて、また明日(・・)、お待ちしております。」


 ベルもセツナを見据えて応える。



 ―――――――夜 帝都の酒場


「あ~イカうま・・・」


 そこには既に出来上がったルゥムがいた。


「あの、ルゥムさん?お話しって何でしょうか?」


 そんなルゥムに戦いの時とは打ってか変わって、おどおどしているカケルが話しかけていた。


「カ、カケル君・・・!?」

「大丈夫ですか?かなり酔ってるみたいですが・・・」

「・・・あー、うん。大丈夫、狙い通り・・・ちょっと酔ってないと言えなさそうだから・・・」

「・・・?」

「お酒の力を借りてってこと。・・・フフッ・・・やっぱり、カケル君・・・カッコいい・・・。」


 ルゥムの手がカケルの頬に添えられる―――――


「え?・・・あの・・・?」

「カケル君の方が強いし、速いんだから、嫌なら良ければいいよ・・・」


 ルゥムの顔がゆっくりとカケルに近付く――――


「カケル君の戦う姿にお姉さん、完全に惚れちゃったわ・・・」

「ルゥムさん・・・」


 カケルは動揺するが避けない・・・


「―――いいのね。大人になりたいカケル君を大人にシてあげる―――――んっ・・・」


 ルゥムからの口付け―――――


「ルゥムさん・・・っ・・・・・・んっ・・・!!?」


 “だけ”では終わらなかった――――


「はっ・・・んっ・・・ちゅるっ・・・んんぅ・・・」

「じゅるるっ・・・んんっ!!ルゥムさん!?」

「ぷはっ―――!! ・・・言ったじゃん、“大人”にしてあげる。お酒の勢いで・・・って――――」

「えっ!?ええっ!?」

「勇む姿は確かにかっこいいけど、勇み過ぎると大変なことになるよ・・・ね。」


 ――――――ズルズルズルズル・・・


「えっ!?ルゥムさんどこへ――――!?」

「だから、カケル君のお望み通り“大人”にしてあげに行くに決まってるじゃん・・・あ、お勘定ここに置いときます―――」


 二人は夜の帝都へ消えていった――――。



 酒場にはそんな様子を見守る影が――――


「ルゥム殿・・・どうしてこんなことに・・・」

「おいシゲノブ、カケルは大丈夫なんだろうな?」

「コウ殿・・・恐らくは・・・」

「カケル・・・プププ・・・後でキララにも報告してからかってやらなきゃ・・・」

「レイラさん・・・性格悪・・・」

「何?カル君もアタシと大人になりたいの?」

「・・・・・・///」

「いやそこは拒否るところでしょ!?何を真に受けてるの・・・!?」


 既に戦いを終えた四人がカケルとルゥムを肴に一席設けていた。


「ま、まぁ・・・ルゥム殿らしいといえばらしいのだろうな・・・」

「そうか・・・カケル・・・無事でいてくれよ・・・」

「さて、カル君、行こうか?」

「えっ!?レイラさん、そのさっきのは悪ノリというか・・・いや、レイラさんが嫌とかではなく・・・俺の心の準備が・・・」

「カル君・・・まだ言ってるの・・・?早くスるわよ・・・“鍛錬”」

「“鍛錬”・・・? あぁ、鍛錬ね・・・今行きます・・・」


 こちらは雰囲気などなく、汗臭い雰囲気で夜の帝都に消えていった・・・



どーも、ユーキ生物です。


「戦士達」初の英語サブタイトルです。ちなみに私、英語は苦手科目です。単語練習を中高でほぼしなかったもので・・・中学時代は通知表で唯一3(五段階評価)を取りました。イヤミっぽいですね。とにかく、綴りが違ったりするかも知れませんがご容赦下さい。


さて、いよいよこの玉座決定戦も後半戦に入ってきました。次回から副将戦です。

・・・無事投稿できたらですが・・・以前お話ししましたが、現在私の私生活がかなり変則的になってまして・・・時間がないわけではないのですが、ルーティンとして書けない状態ですので、次回は何とも言えない感じになっております。投稿が遅れる場合はこの第二十六話の後書きでご連絡いたします。


では次鋒戦のキャラ解説ですが、前回、シゲノブの紹介をした際に、属性を忘れてましたね。シゲノブは“重力”です。何の捻りもなくてスミマセン。

今回はコウです。テーマは前回の後書きでも書きましたが“前進”で属性は“事象”らしいです。コウの設定を作ったのがかなり前なので正直細かい内容は記憶に残ってなくて・・・恐らく、現在起こっている事象の全てを把握し,次に起こりうる事象を予測する。的な意味かと思います。

コウの名乗りですが、元は

直往邁進ちょくおうまいしん 進取果敢しんしゅかかん) 千荊万棘(せんけいばんきょく) 嵐の道でも 一刀両断(いっとうりょうだん) 踏み出す(やいば)!! 背負いし友との(こころざし) 眼前(がんぜん)握りし我らの(つるぎ) 承前啓後(しょうぜんけいご) 突き進む!! 切り(ひら)く『(うつつ)の戦士 フロンティア・ナ・ウォーカー』」

でした。今更ですが、決定戦では名乗りの最後、コウでいう“切り拓く”という部分がそれ以前に名乗った時から追加されてます。

さて、コウの名乗りですがまずはとにかく前進する、どんな困難を前にしても刀で斬り進み続ける、(エイジ)と共にあった最強の証明という意志を後ろに背負って、前には二人で鍛えた刃を構えて過去と共に前進する。という意味になっております。

“フロンティア・ナ・ウォーカー”は“frontier now walker”、“大陸の今を歩む者”という意味で名付けました。綴りとか色々自信ないですけど・・・

そんな感じのコウでした。


次回は3月31日(金)の更新を予定しております。

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