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戦士達ハ世界ニ其ノ名ヲ謳ウ  作者: ユーキ生物
決戦編
24/40

第二十四話 次鋒戦② 目的と手段

第二十四話

目的と手段



「――――――『神の息』」


 シゲノブの身体が発光すると、もうひとつの惑星となりシゲノブを中心とした重力が発生した。


「っ・・・」


 シゲノブの元へと引き寄せられるコウ――――――


「・・・引力の大きさから予測される俺の軌道・・・シゲノブの視線そして、骨、筋配置から考えられる斬撃の予測・・・」


 コウは『神の鎧 グラックロイオ』で“今”を感じ、分析する――――――


「“神突 (しゅん)”」


 分析が終わりコウが静かに歩を進める――――――


「―――――――――なっ!?」


 次の瞬間、コウの刀はシゲノブの喉元に寸止めで添えられていた――――


「コウ様なんとっ!!シゲノブ様の『神の息』をものともせずに一気に勝負を決めに行った!!」

「コウ様の『神の鎧』は分析する能力を持つようです。その分析を活かす技能さえ持てば引力など無いに等しい・・・いえ、反対に利用することもできるのでしょう。現に今の仕掛けはシゲノブ様の引力を利用しています。」

「あ、だからあんなに速かったんですね。」


「勝負アリ、だな。」


 コウがシゲノブに告げるが・・・


「ククク・・・やりおるな・・・だが、まだだ・・・」

「何・・・?」

「お主、某がどうして『惑星(ほし)の戦士』であるか、存じているか?」

「・・・引力とかを使うからか?」

「ククク・・・まぁ、それもあるが・・・無論、それだけではない!!」


 シゲノブが大きく息を吸いこむ―――――――


惑星(ほし)落とし―――――!!」


 シゲノブが言うと既にコウの図上には小さいながらも超速度で隕石が落ちてきていた。


「・・・・・・。」


 コウは微動だにせず、シゲノブに刃を向け続ける。


「お主、何故避けようとしない――――――!?」


 ―――――――――――ッドガンッ!!


 小さな隕石がコウの足元に落ちる―――――


「俺に当たらないとわかっていたから避けなかった。それだけだ。」

「何故当たらないとわかった・・・?」

「大したことじゃない、今を感じただけだ。アンタの剣技は迷いがなく凄かったが、今の惑星(ほし)落としは思い切りに欠けるのを感じ取れた。・・・何より、拒絶の刀と引き寄せる能力、相性は良くないとわかっていた。」

「なるほど、だがその助言、よいのか? 次は遠慮せんぞ。」

「望むところ」

「どうなっても知らぬぞ!! “太陽より強く引き、宇宙(そら)より落とす破滅の巨岩”スゥゥウウウウウウッ――――――――“惑星引く宇宙の中心(エーテル)”」


 ――――――――――ゴオオオォォォォオッ!!


 帝都全体を飲み込む大きさの惑星が、空気との摩擦で発熱・発火して天空コロシアムへと向かってきた――――――――



「へ、陛下! さすがにこれは止めにいくべきではないですか!?」

「慌てるなノイ、いい戦士じゃないか。惑星を落とす方も、それを悠然と受けてたつ方も。」

「呑気に言ってる場合ですか・・・あんな狂気じみた能力・・・受ける方だって無謀ですよ・・・」

「その“狂気”も“無謀”も、この国を支える大切な要素だ。」



「――――いいねぇ、上等じゃねぇか!!」


 コウは落下してくる隕石を見て笑っていた。


「・・・これを見ても退かぬのか・・・」

「退くなんて有り得ねぇ!!俺を誰だと思ってやがる!?」


 コウはここで自らを鼓舞するかの如く世界にその名を謳い出す――――――


直往邁進(ちょくおうまいしん) 進取果敢(しんしゅかかん) 千荊万棘(せんけいばんきょく) 嵐の道でも 一刀両断(いっとうりょうだん) 踏み出す(やいば)!! 背負いし友との(こころざし) 眼前(がんぜん)握りし我らの(つるぎ) 承前啓後(しょうぜんけいご) 突き進む!! 切り(ひら)く『(うつつ)の戦士 フロンティア・ナ・ウォーカー』前進し続ける戦士だっ!!」


 コウは笑顔で刀を構える――――――


「待ってたぜ!!リベンジの時を――――――」


 リベンジ、コウはずっと後悔していた―――――――


 レイラの神具『神の槍』を探す際に大岩を破壊することを躊躇ってしまったことを――――――


 それからコウは岩をも斬れる剣士となるべく鍛練を重ね、いつか来るだろう機会を待っていた。


「感謝する。この機会をくれたことに―――――」

「お主・・・正気か!?」

「正気じゃないと岩は斬れねぇぜ!! 『グラックロイオ』!!」


 コウは『神の鎧』の能力で今を感じる。落ちてくる惑星を分析して炎に飛び込むタイミングを計る。


「行くぞ!!力を貸してくれ、エイジッ!!」


 コウは祈る様にかつて切磋琢磨した友の名を謳う――――――


「“我が志の歩を前に 友と鍛えし刃も前に 万物浮きしこの悪路 己と友で進み行く 友と振るう一刃の一閃(ソード)”!!」


 ―――――――バッ!!


 コウは落下する隕石へ飛び込む『神の鎧 グラックロイオ』で分析した隕石の弱所に向かって――――――――


 ―――――――スッ


 突き立てられたコウの刃は巨岩の隕石へ滑り込む―――――――


「はあああぁぁぁっ!!」


 ――――――ドゴオォッ!!


 コウの刀が刺さった部分から隕石の崩壊が始まり、巨岩は小石へと変わっていた。


「―――――――『神の息』」


 ――――――――――スパパパパパパッ!!


 シゲノブが砕け散った小石を引力で引き寄せ、さらに細かく切り刻む。


「観客に被害がいくのは某の本意ではないのでな。」


 ―――――――――キンッ


 シゲノブは刀を納める。


「某の負けだ。あそこまでやられては負けを認めざるをえない・・・」


 コウが敗北を認める言葉を口にした―――――


「勝負ありっ!!次鋒戦勝者、ヒカル軍、コウ!!」


 審判のイレアが会場に宣言する。


「シゲノブ様の敗北宣言!!これにて次鋒戦決着!! 勝者はヒカル軍のコウ様!! これでヒカル軍は二連勝!!幸先いいですね!!」

「まぁ、さすがにシゲノブ様の渾身の一撃をああも嬉しそうに砕かれては負けを認めざるをえないでしょう。」

「これはヒカル様の勝利の可能性もかなり出てきましたね!!」

「リオウ様は最終戦で大きな戦力に数えられますが、ヒカル様は戦闘能力がありませんから、人数で勝らないことには勝ち目はありませんでしたから・・・あと三戦あります、その内一勝でもすれば戦力差をかなり埋められますからね。」

「王位継承の第一候補と噂されていたリオウ様はかなり苦しい立ち上がりとなってしまいましたね。」

「現状優位とは言えませんが、最終戦に勝てばいいのですから、リオウ様自身が一騎当千の戦力を持っておられますし、最後までわかりませんね。」


 ユイとマナが試合について語る中、シゲノブはコウに問う。


「試合中、お主は言ったな、某の闘志では勝てぬと・・・」

「あぁ、簡単なことさ、アンタは『俺に勝つ』という目的で戦ってたが、俺は違う。」

「何?」

「俺はこの試合で俺達の流派、『鬼神流が最強である』という目的で戦っていたんだ。アンタに勝つのはそのための手段でしかない。勝つことの先があったんだ。」

「それだけで勝てるわけが・・・」

「まぁ、実力が拮抗していたのも事実だ。だが俺とアンタとは心のゆとりが違った。アンタのちぐはぐな神体の能力よりも、俺は神具での分析を活かしきることができたんだ。」

「・・・・・・ふっ・・・やはり、某の完敗のようだ。」



 シゲノブは控室へと踵を返した。



 ――――――――リオウ軍控室


「すまないリオウ殿」

「いいさ、我以外にも能力を全力で振るえる者を知ることができたのだろう?」

「うむ・・・ルゥム殿、奴等(やつら)は存外やりおる、心してかかった方がよいぞ。」

「そう、みたいね。」


 中堅戦に出ることが決まっていたルゥムは少し緊張しているようだった。




 ――――――――夜 帝都の酒場にて


「・・・やったぜ、エイジ・・・俺、帝都の玉座決定戦で、勝ったよ。俺達の鬼神流で・・・乾杯。」


 コウは一人で――――――かつて共に切磋琢磨した友へ(さかづき)を捧げていた。


「・・・共にしてもよいか?」


 そこへ、シゲノブがグラスを持って現れた。


「・・・俺に負けたやけ酒ってヤツか?」

「まぁ、そんなところだ。」


 シゲノブがグラスの酒を一気に煽る。


「・・・悪くない。」

「昨日は俺の飲み方にいちゃもん付けてたくせに・・・」

「・・・酒場に来たのだから、飲むのは当然、なのだろう?」

「はっ! 言うねぇ! それじゃあ、飲み比べといこうか!」

「・・・望むところ」


 今日も、昨日とはどこか違う夜となっていた――――――。




 ―――――――翌日


「さあ!さあ!次期皇帝を決める玉座決定戦も中堅戦、折り返しまできましたよ!!ヒカル軍はどこまでリードを広げられるか!?リオウ軍は挽回できるか!?見物の一戦ですよ!!」

「リオウ軍は人数で勝る最終戦を行うためにはもう一敗もできませんからね。」

「そんな注目の中堅戦、戦士達の入場です――――――!!」


どーも、ユーキ生物です。


これにて次鋒戦は終了です。次回から中堅戦に入ります。・・・無事更新できたらですが。まぁ、去年も「Desire Game」で同じこと言いましたが、年度末は何かとバタバタして小説書く余裕が失われがちになってしまいます。そのために書き貯めしておきたかったのですが、今回の更新すらギリギリな現状ですし・・・来週無事に中堅戦が投稿されよう頑張ります。


さて、今回の後書きはレイラの名乗りについてです。レイラは、努力と経験というテーマで作られたキャラです。属性は不屈とかいう前回の勝利に続きあまり見ない属性を設定してたりします。名乗りのおさらいですか、レイラの名乗りは

積土成山(せきどせいさん 積水成淵せきすいせいえん 一念通天いちねんつうてん 一重ひとえに信じ 己を磨き 日進月歩にっしんげっぽ 日々鍛練ひびたんれん!! 浅識非才せんしきひさいであろうとも 不撓不屈ふとうふくつの心を武器に この身朽みくちても 七転八起しちてんはっき 折れることなく其処そこに在る!! 揺るぎなき『水の戦士 ブレクレスシャトー』」でした。

レイラの名乗りも四字熟語は実在するものですし、簡潔に説明させていただきますと、努力は実を結ぶということを信じてひたすらに努力をする。才能がなくても折れない心で何度力で負けても起き上がり、在り続ける。という意味になっております。「ブレクレスシャトー」は壊れることなき要塞の塔という意味で名付けました。英語とフランス語がごっちゃらしいです。


今回はこの辺で、次回の更新では次鋒戦の二人について語れたら、と思います。


次回更新は3月17日(金)を予定しております。

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