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戦士達ハ世界ニ其ノ名ヲ謳ウ  作者: ユーキ生物
決戦編
22/40

第二十二話 先鋒戦③ 努力が紡ぐ我が物語

「はっ・・・“グロリア”だと?オレに対抗でもしてるつもりかよ。だが、回復しか能のないアンタに何ができるんだよ?」

「だから言ってるでしょ、アタシの武器は回復だけじゃないって―――」

「舐めてもらっちゃ困る。他人(ひと)にはできないことをするから“才で理想を叶える夢の戦士”なんだ。」



 ――――――決戦前


「カルノレット様のお相手レイラ様、元『滝の戦士』イレア様の娘にしてイレア様と同じ格闘家、神体『神の血』を有しており回復に特化しているようです。裏を返せば回復以外は常人と同じです。攻撃C・防御D・敏捷B・持久力Sといったところでしょう。」

「セツナの情報が間違いなければ問題ない。敏捷Sでなければオレは勝てる。」

「期待しております。」



第二十二話

先鋒戦③ 努力が紡ぐ我が物語(グロリア)



「想定外にしぶいな!だけど、負けるわけにはいかない!!“勝利を掴む神の物語(グロリア)”!!」


 ――――――ゴウッ!!


 レイラを再び吹き飛ばそうと、突風がレイラを襲う。


「さすがにそれは何回も受けてるからね―――――アタシの武器、まさにそれだよ。ふっ!!」


 ―――――――――ゴッ!!


「レイラ様、足を自ら地面に突き立てた!?」

「なるほど、吹き飛ばされないための対策ですね。」

「マナさん、足が埋まってるのは少しですけど、そんなに効果があるんですか?」

「風で吹き飛ばす場合、風は地面から吹き出しませんから、上昇風、鉛直方向の風は吹かせにくく、どうしても水平方向が主となります、その水平方向に対してなら足を埋めることは意味をなします。勿論風は受けますから普通の方では吹き飛ばしは対策できてもダメージは受けます。しかし―――――」

「超回復・・・」

「何度もカルノレット様の攻撃を受け、その対策を練ったのでしょう。」


「これが・・・経験(これ)こそがアタシの最大の武器だ!!」


 レイラが一歩ずつ足を埋めて進み、じわりじわりとカルノレットに迫る。


「っ!! ・・・“グロリア”」


 ―――――ドゴオオオオンッ!!


 レイラの足元が爆発する。


「真下からなら・・・!!」


「―――――足元の爆発は少し自分の位置をずらせば爆風は追い風になるんだよ。」


 カルノレットの目の前に爆風で加速して来たレイラが拳を振りかぶっていた。


「ぐっ!! “グロリア”」


 ―――――ゴウッ!!


 再び突風がレイラを襲う。


 が、レイラは再び足を地面に突き刺しそれを耐える。カルノレットはその隙にレイラと距離を取る。


「くそっ!!“天光満つる所我はあり 黄泉の門開く所汝あり 出でよ神の雷 これで終わりだぁ!! インディ○ネイション”!!」


 カルノレットの術に呼び出され、レイラの周囲に幾何学的な魔方陣が幾重にも浮かび上がり―――――――


 ―――――ゴバゴオオオオンツ!!


 魔方陣の中心にいるレイラに雷が落ちた。


「まぁ、痛かったよ。でも、ウチのあの()の雷の方が効くけどね。」


「カルノレット様渾身の一撃もレイラには効いていないっ!!これはさすがにカルノレット様打つ手なしか!?」


「くそっ!!・・・何なんだよ!!アンタはいったい何なんだ!?」

「さっき名乗ったでしょ? アタシは、汲めども尽きぬ闘志を持った揺るぎなき水の戦士『壊れることなく(ブレクレス)天を目指す不屈の塔(シャトー)』だって。」


 再びレイラはカルノレットの目の前に来ていた。


 ―――――そして


「―――――捕まえた。」


 レイラの手はカルノレットの首を掴んでいた。


 ―――――――会場が静まり帰る。


「・・・この状況・・・カルノレット様が術を唱えきるよりも早くレイラ様が首を折ることができます・・・詰み、ですね。」


 マナが解説を入れる。


「アナタ、アタシに勝つ方法、他にもあったでしょ?何でそれをしなかったの?」


 レイラがカルノレットに問う。


「・・・確かにあった。オレの方が上だと心を折りにいく方法と・・・最初の一撃に全力を注ぎ込む方法。『神の聖典』は勝利の道筋を教えてくれるのに神通力はほとんどいらないけど、それを形にするための術にはそれなりに神通力が必要になる。元々弱点を突く戦い方だから威力を重視したことがなくてさ・・・もし、最大の一撃を耐えられたら、と思うとね・・・。そのリスクを考えたら心を折りにいくべきだと判断したんだ。」

「確かに、その神具は正しい。アタシは“フェニックス”を発動させる前に気絶以上のダメージを入れられたら任意で回復できなくて回復に時間がかかる。」

「結局、オレはオレの持久力に自信がなかったんだ。」

「そういうのは経験でしかわからないわよね。・・・アタシね、アナタの言い分、わからなくはないわ。生まれの立場や才能・・・アタシだって『神の血』とか五体満足とか恵まれてるもの・・・でも!わかったと思うけど、努力を怠る天才なら努力で負かすことはできるの、そういうのを天才とは言わない、生まれを呪うくらいなら、努力をしなさい!」

「いいのか?天才のオレが努力をしたらアンタはオレに勝てなくなるぞ。」

「できるものならしてみなさい。天才が努力をしたら、隙がなくて手強いだろうけど、その時にはアタシももっと強くなってるから。」


「・・・わかった。“負けたよ” 今日の所は、な。」


「勝負ありっ!!先鋒戦勝者、ヒカル軍、レイラ!!」


 イレアが宣言する。


「決まったー!!玉座決定戦、先鋒戦の勝者はヒカル軍のレイラ様だー!!」

「終始圧倒していたカルノレット様の猛攻をよく耐えたと思います。」


 ユイとマナが会場へ話す中、イレアはレイラに一歩近付き――――


「よく頑張ったな。」


 一言だけ娘を褒め称えた。


「―――――――っ、はいっ!!」


 幼い少女の様な無垢な笑顔でレイラは応えた。




 夜


 ―――――――帝都のとある酒場にて


「それじゃあ、先鋒戦の勝利を祝して――――」

「「乾杯!!」」


 ―――――――チンッ!!


 コウとカケルがグラスを打ち鳴らしてしていた。


「・・・ゴッ、ゴッ・・・かぁー!!勝利の味はいいな!まさに勝利の美酒!!」


 コウは一気にグラスを空ける。


「まぁ、僕達はまだ勝ってないし、僕はノンアルコールだけどね。」

「ハハッ・・・違いない。」


 アルコールが回ってきたのかコウは上機嫌だった。


 ―――――――カランッ


 酒場の扉が開き、入店してきたのは――――――


「へー結構賑わってるわね。あ、あたしビール!!」

「・・・某は熱燗を所望する。」


 リオウ軍のルゥムとシゲノブだった。


「・・・あら、あなた達、ヒカル軍の帝国戦士じゃない。こんな所で偶然ね。一緒してもいいかしら?」


 訊きながらルゥムはカケルの隣に座る。


「許可はしてないが? ・・・まぁ、いいだろう。」

「・・・すまない。ルゥム殿は強引な所があってな。」


 コウの異論にシゲノブが詫びる。


「・・・んっ、んっ・・・ぷはっ!! あら、酒場に不釣り合いな可愛い子がいるわね?」

「・・・ルゥム殿は酒癖も悪くてな・・・忍びない。」


 ルゥムはカケルの肩を抱き、酒を煽っていた。


「それよりも・・・お主、子供を酒場に連れてくるとは関心しないな。」


 シゲノブがコウに言及する。


「・・・ゴッ、ゴッ、ゴッ・・・はぁ?本人が来たいって言ったから連れてきて何が悪い。酒を飲ませるわけでもなし。」

「お主も飲み過ぎだ。子供の教育に悪い。」

「お前こそ酒場に何しに来てんだ?酒を飲むために来てるんだから飲むに決まってるだろ。」


 お堅いシゲノブにコウは露骨に反抗する。


「・・・某とお主、どちらが正しいか、戦士らしく武力で白黒つけよう。」

「あんた、わかりやすくていいね。キライじゃないよ。・・・でも帝国戦士の私闘は禁じられてる。・・・明日の次鋒戦でやろうか。」

「乗った。某の刀の錆にしてやろう。」


 剣士達は既に火花を散らしていた。


「カケル君はぁ、どうして酒場に来たかったの?」


 コウとシゲノブの対面ではルゥムがカケルに絡んでいた。


「その、早くコウさんみたいな大人になりたいから・・・大人な雰囲気だけでもと思って・・・」

「そっかぁ!!カケル君は大人になりたいのかぁ!!可愛いヤツめ!!」


 ルゥムはカケルに頬擦りをし、愛でる。


「こんな子供に一国を支えさせるとは・・・」

「アンタのトコのカルノレットだってカケルと変わらん位の子供だろうに・・・」

「カルノレット殿は例外的な神具を使うからな。」

「なるほど、ならカケルも嘗めない方がいい。」

「ん?」

「どぉいうこと?」


 コウの言葉に二人は疑問符を浮かべる。


「・・・僕は確かに子供で未熟で弱いけど、それでも戦士だ。戦うのなら、逃げないよ。」


 ――――――――――――カケルは鋭く宣言した。


「・・・・・・・・・。」

「・・・なるほど・・・ルゥム殿、中堅戦で相手をしてあげてはどうだろう?」

「・・・・・・あ、うん。そうね。いいわよ。」

「ルゥム殿?」

「ち、ちょっと眠くなってきたわ・・・シゲノブ、もう戻りましょう。」

「・・・・・・? ・・・わかった。それでは明日、決戦の場にて待つ。」


 それだけ言い残して二人は去っていった。



 ――――――ウェルドラド城 中庭


「ふっ!!ふっ!!ったあ!!」


 レイラは一人鍛練をしていた。


「・・・・・・どなた?」


 レイラは柱の影の人物に問う。


「・・・御一緒しても?」

「大歓迎」


 柱の影から出てきたのはカルノレット、彼も動きやすい服を着て、レイラと並んで鍛練を始めた。


 昨晩とは少しだけ違う夜が過ぎ―――――――――玉座決定戦 次鋒戦が始まる――――――

ご閲覧ありがとうございます。ユーキ生物です。


先鋒戦が終わり、次回から次鋒戦になります。ついでに今回で中堅戦の対戦カードまで明らかとなりました。まぁ、その辺は追々後書きで語らせていただきます。先鋒戦ですが“努力VS才能”の構図になりました。さすがに露骨でわかりやすかったですよね・・・。前作「Desire Game」でも才能についての章を書いたり、私、才能についての話好きみたいです。それはさておき、ヒカル軍とリオウ軍にはそれぞれテーマがあります。この先鋒戦は各軍のテーマが割りと色濃く出た試合になったかと思います。各軍のテーマについてはまた後々。


話変わりますが、「戦士達」の様な明るい話を書いていると、負の感情が溜まって「Desire Game」のアイデアが湧いてきます。「Desire Game」を書いていると「戦士達」が書きたくなって、「戦士達」を書いていると「Desire Game」が書きたくなる、なんとも難儀な感じになってます。二作を同時に進められるほど器用ではないので、しばらくは「戦士達」を頑張って書ききろうと思います。


次回から先鋒戦二人の名乗りについて書く予定です。


次回更新は3月3日を予定しております。

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