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戦士達ハ世界ニ其ノ名ヲ謳ウ  作者: ユーキ生物
決戦編
20/40

第二十話 先鋒戦① 才、咲き誇る。

 ―――――ヒカル軍控室


 外から歓声が聞こえる中、帝国戦士の正装に身を包んだレイラとヒカルが緊張の面持ちで向き合っていた。


「この服、動きにくいね・・・。」

「そうかな?軍服がべースなだけあって割りと動きやすいと思うけど・・・」

「アタシはやっぱ胴着じゃないと・・・」


 少し居心地悪そうにレイラは正装の襟元のカラーを弄くる。


「まぁ、胴着は完全に格闘技用だしね。そりゃ違うよ。」


 ヒカルは苦笑いで返す。


「このマントも歩くと脚に巻き付いて・・・」


 窮屈そうに言うレイラは、普段無造作に纏められている髪も綺麗に手入れされて、制帽が被されていた。


「試合が始まるまででいいから・・・それじゃあ、頼んだよ、レイラ。」

「任せて。相手がどれだけ強かろうが、アタシは、絶対に折れない。」


 ヒカルがレイラを送り出す言葉をかける。


 最終戦を考えると格闘家たるレイラの有無は勝敗に大きく影響するため、ヒカル軍としてはこの先鋒戦は是非とも勝っておきたかった。


 ―――――――おおおおぉぉぉぉっ!!


 会場がユイのアナウンスで盛り上がっていた。


「それじゃあ、いってきます。」


 レイラが決戦の舞台へと向かった――――――




 ――――――リオウ軍控室


「ルゥム姐さん、どう?強そう?」


 ルゥムに向かって帝国戦士の正装を見せているカルノレット。初めての正装にはしゃぐ姿は年相応だった。


「いいね。『神の聖典』も合わさって賢そう。軍師みたい。」

「へへへっ・・・それじゃあ、さくっと勝ってきますか。」


 余裕を持ってカルノレットは決戦の舞台へ歩を進める。


「油断して、足元を掬われないようにな。」


 リオウがカルノレットに声をかける。


「・・・油断なんてしてないさ。相手をしっかり分析して、対策を練って・・・万全の準備をしてきた。勝つよ、オレは。」


 普段のやんちゃな顔から一転して、真剣な面持ちでリオウに伝え、カルノレットはリオウを横切った―――――――






第二十話

先鋒戦① 才、咲き誇る。





 観客の熱気に包まれたコロシアムの中央で、実況のユイが仕切る。


「さあっ!!東から入場してきたのはリオウ軍のカルノレット!!」


 ―――――――わああぁぁぁあっ!!


「リオウ軍は神体使い四人、神具使い一人という神体使いの多いチームの中、彼が使うは神具『神の聖典』!! 」


 ―――――――うおおおおぉぉぉぉっ!!


 沸き上がる歓声の中、カルノレットは観客に向けて簡単に手を上げる。


「西から入場してきたのは対するヒカル軍のレイラ!!」


 ――――――わああああぁぁぁっ!!


 レイラも観客に一礼する。――――そして


 ――――――バサッ!!

 ――――――おおおおぉぉぉぉっ!!


 レイラは正装を取り去り、使い込みで汚れた胴着になる。


「おっと!!レイラ様脱いだ!!観客もこれはテンション上がる!!」

「一応入場は正装で、という取り決めがあります。ですが、試合開始前に各々の戦闘がしやすい格好になることは許可されております。」


 衣類に関してマナが補足を入れる。


「何かの因果か!?ヒカル軍はリオウ軍とは逆の神具使い四人、神体使い一人という構成、そして彼女はその神体使い!! その身体に宿るは神体『神の血』!! 現王政の軍事局長イレア様が帝国戦士時代に使っていた神体と同じ!!それもそのはず、彼女はイレア様の娘さん!!玉座決定戦、いきなり面白い対戦が見られそうだぞっ!!」


 ――――――おおおおぉぉぉぉっ!!


 ユイが両戦士の紹介をし場を暖める。


「この戦いは皇帝陛下も御覧になられております。」

「特に今回のカードはイレア様の娘であるレイラ様が出られますから、興味をさらにそそられますしね。」


「両者、開始位置2へ!!」


 審判であるイレアが最初の立ち位置を指示する。


「試合時の両者の間隔は開始位置2だ!!」


 ユイがイレアの指示を観客に伝える。


「開始位置2は、百メートル四方のフィールドで、二人の間隔がおよそ六十メートルほどある間隔広めの開始位置。近接戦のレイラ様と魔術で中遠距離のカルノレット様ですからこのくらいの間隔になるかと。」


 マナが開始位置に関して解説する。


「ということは?」

「はい。まずはレイラ様が接近を試みて、カルノレット様が阻む、といった展開になるかと。」

「まぁ、そうですよね。レイラ様は近付かなくては始まりませんし・・・おっと、両戦士が開始位置につきましたね。」


 会場に緊張が走る。


「玉座決定戦、先鋒戦―――――いざ、尋常に・・・はじめっ!!」


 イレアの号令で決戦が始まる――――――――



 ――――――ダッ!!

 試合開始の合図と共に、レイラは駆け出しカルノレットへ接近する。


「レイラ様が一気に接近するっ!!カルノレット様は――――――!?」

「・・・来いよ。」


 カルノレットは仁王立ちして『神の聖典』を開きもしない。


「なんと―――――!?カルノレット様は何もしない!?格闘家に接近を手放しで許している!?」

「これは・・・何か作戦でもあるのでしょうか?」


 解説のマナも予想外の展開に驚きを隠せない。


「余裕こいたまま負ければいいさっ!!――――――“滝割りっ”!!」


 レイラは滝をも割る正拳突きを放つ―――――――


「ぐっ――――――――がはっ!!」


 カルノレットはそれをそのまま直撃する。


「おおっと!?カルノレット様避けることもせず普通に攻撃を受けてしまう!!どうしたというのでしょうか!?」

「カウンター狙いでもないとしたら・・・恐らくここからカルノレット様が仕掛けるかと・・・」


 マナが含みのある言い方で解説を入れる。


「・・・へへっ、初撃だけがアンタの勝機だったが・・・これでアンタの勝ちはなくなった。」

「・・・?」


 カルノレットはヨロヨロと立ち上がり勝ち誇った表情でレイラに宣言する。


「“我を照すは純白の光 リカバー”!!」


 カルノレットが『神の聖典』を開き、呪文を唱えると、レイラから受けたダメージが回復していた。


「カルノレット様の回復呪文でさっきの一撃が無かったことに!!マナさん、これは・・・」

「レイラ様の神体の能力は回復、恐らくカルノレット様は同じ事ができることをレイラ様に示したかったのかと思われます。」


「回復だけじゃ、勝てないのはアタシが一番知ってるっ!!“水龍爪(すいりゅうそう)”!!」


 立ち上がったカルノレットにレイラの回し蹴りが繰り出される―――――


「もちろん回復だけじゃない――――――“命を燃やし、輝く我が身へ 刧火蒼炎(オーバーロード)弾丸(バレット)”!!」


 ―――――――――ガッ!!


「止めたーっ!!カルノレット様、レイラ様の回し蹴りを片手で止めたっ!!」


 レイラの脚はカルノレットの手に収まっていた。


「レイラ様の回し蹴りが来る前に、カルノレット様は肉体強化の術を発動してますね。カルノレット様は恐らく、魔術師であるカルノレット様が格闘家のレイラ様に近接戦を挑む展開を狙っていたのでしょう。」

「カルノレット様は回りくどいことをしますね。」

「・・・どうでしょうか・・・明確な勝敗基準のないこの戦いで、回復に長けた相手に勝つ方法・・・自らの力を見せつけて、自分の方が上だと示して負けを認めさせる・・・できる人は少ないですが、勝利への最短ルートだと私は思います。」

「なるほど・・・ユイはそこまで読めませんでした。マナさん、さすがです。」


 マナの見立て通り、レイラが果敢にカルノレットに猛襲をしかけるが、カルノレットはその全てを素手で受けきる。


「格闘家が格闘で勝てないようじゃ、ねっ!!」


 ―――――――ゴッ!!


「ぐうっ!!――――やるわね・・・」


 レイラがカルノレットの蹴りを受け弾き飛ばされる。


「レイラ様がここでカルノレット様から攻撃を受けたーっ!!」

「すぐに回復はなされるようですが、これは・・・」


「こっからは容赦しないよ。」


 カルノレットがニヤリと笑う――――――


「くっ――――――“滝割りっ”」


 レイラの正拳突きをカルノレットは掴む、そして―――――


「カルノレット様の一本背負いっ!!」


 レイラは投げ飛ばされていた。


「カルノレット様は『神の聖典』を開きましたね。つまり、ここでは終わらない――――――」


「“蒼天焼きつくす紅蓮の鉄槌 メラ○ーマ”!!」


 ――――ゴオオオッ!!


「投げ飛ばされたレイラ様に炎の魔術がっ!?これは効いたか!?」





 ―――――――ヒカル軍


「レイラさん、大丈夫ですかね・・・かなり劣勢の様ですが・・・」


 キララが心配そうに言う。


「レイラの攻防は能力がない、能力のある相手ならそりゃ、劣勢になるさ。」

「コウの言う通りだ。少なくとも単純な戦闘で、レイラが神具使いに優勢な状況にはなりにくい。レイラの土俵はもっと先にあるのだから。」

「・・・確かにそうですね。」

「・・・だとしても、変ですよね。」

「ベル姉?・・・何か変?」

「解説のマナは『回復に長けた相手には――――』って言ってましたけど、それにしたって、格闘家に魔術師が格闘を挑むリスクはかなりのものですし、身体強化で敵うかなんてわかるはずないです・・・」

「・・・つまり?」

「なんていいますか、相手のカルノレット様は、ある程度リスクを考慮する作戦に絶対の自信がある様、というか。レイラ様に効果的なことは間違いないけど、不確定な部分のある作戦を迷わず選択してくる辺りがどうも・・・ましてや様子見のようなこともしませんでしたし・・・」

「ベルの言う通りかもな。俺もいくらなんでも、せっかく開いていた格闘家との間合いを無駄にしてまで無防備に初撃を受けるのはリスクが高すぎるというか、仮にそれが勝ちへの最善手だとしても、勝ちを焦って取りにいきすぎていると思う。」

「相手は馬鹿なんですかね?」

「キララの言う線もないとは言えないが・・・」

「もう少し、何かがあるとワタシは予想します。」


 ヒカル軍に不安が募る。


「確かに相手の動きに不安はあるが、レイラなら大丈夫。レイラの闘志は折れない。だって――――――――」




「今のは結構効いたよ・・・熱かったし。」

「とか言いつつ既に全回復か・・・」

「まぁ、多彩なあなたと違って、アタシはこれしかないからね。」

「心許ない能力だね・・・」

「回復のおかげで他人(ひと)より多くの経験が積める、経験はこれ以上なく頼もしい武器だよ。」

「それで、その頼もしい武器でオレには勝てそうなの?」

「そうだね―――――――“滝登り”」


 レイラは一気に間合いを詰め、カルノレットを蹴り上げる――――――


「“にわか雨”」


 それを言ったのはレイラではなく――――――――


「カルノレット様、脚払いからの(かかと)落としぃ!!レイラ様の蹴り対して完全にカウンターが決まったぁ!!」


 それはレイラの技だった。しかし、それを決めたのはカルノレット




 ―――――――ヒカル軍


「な・・・なんでアイツがレイラの技を!?まだこの試合で見せてすらいないのに!?」


 カルノレットのカウンターを見て、コウが驚愕の声を上げる。


「『神の聖典』の能力であることは間違いないのだろうけど・・・」

「模倣の能力・・・とは違いますよね・・・」


 ヒカルもベルも検討もつかず、ただ見ていることしかできなかった。



「どう?アンタの積み上げてきた努力(もん)なんて、天才(オレ)にかかれば簡単に再現できる。いや、それ以上の効果だって得られる。」


 地に打ち付けられたレイラを見下ろしカルノレットは言い放つ。


「さすがに今のは驚いたし、少し自信なくすわね・・・」

「レイラ様立ったぁ!!というより立ち上がる内にまたしても全回復している!!これが『神の血』か!!」

「まだ立つのか・・・いい加減諦めなよ。オレは完全にアンタの上をいってるんだ。」

「・・・そうみたいね。あなたの方が強い、それは認めるわ。・・・でも、アタシはあなたに負けたとは思ってないわ。」

「・・・・・・馬鹿なのか・・・?まぁ、いい、馬鹿にも理解できるように教えてやる。」


 カルノレットは『神の聖典』をレイラに差し向ける。


「アンタの『神の血』が“回復”という超常を起こす一点型の神体であるように、オレの『神の聖典』もある一点のみの超常を起こす。アンタが“回復”なら、オレは“勝利”だ。」


 その言葉に会場にいる全員が唾を飲む。


「『神の聖典』には、勝利へ導く物語がかかれていて、それに従えば必ず勝てるんだ。もちろん、勝利を形にする能力も附属される。アンタはオレには勝てない。諦めて降参するといい。」


 カルノレットの言葉を聴き、レイラは何かを考え、改めてカルノレットを真っ直ぐ見据える。


「今のを聴いたらなおさら負けられないね・・・努力をせずに勝てるなんてことを許す訳にはいかないし、アタシの修業に付き合ってもらった川や滝に申し訳ない。」

「わからんヤツだ。―――――――聞けっ!!お前の目の前に立つのは、勝利をこの手で司る者――――――」


 カルノレットは世界の中心となっている会場全体に届く声で名乗り出す――――――


天資英明(てんしえいめい) 才華欄発(さいからんぱつ) 竜麟鳳(りょうりんほう)の転生者! 神の代行 王の後光(ごこう) 故郷(くに)の栄光 ()天賦(てんぷ)! 頓智頓才(とんちとんさい) 将相兼備(しょうそうけんび) 多種多様なる魔術を()って (くじ)く強きを一蹴す!! 咲き誇る『夢の戦士 ナレイト・オブ・テスタメント』常勝の運命を持つ者だ!!」


「あなたこそ、勘違い甚だしいわね。勝利ごときで積み重ねた経験を折れると思わないことね。――――――汲めども尽きぬ水の如き戦意を持つアタシが―――――――」


 カルノレットの名乗りに対抗するように、レイラも名乗り出す――――――


積土成山(せきどせいさん) 積水成淵(せきすいせいえん) 一念通天(いちねんつうてん) 一重(ひとえ)に信じ 己を磨き 日進月歩(にっしんげっぽ) 日々鍛練(ひびたんれん)!! 浅識非才(せんしきひさい)であろうとも 不撓不屈(ふとうふくつ)の心を武器に この身朽(みく)ちても 七転八起(しちてんはっき) 折れることなく其処(そこ)に在る!! 揺るぎなき『水の戦士 ブレクレスシャトー』 あなたに敗北と、努力の強さを教えてあげるわ!!」


「生意気な―――――聖典示すは栄光への(みち)勝利を掴む神の物語(グロリア)”」

「生意気なのはお互い様でしょ――――――折れぬ心と尽きぬ戦意を支える滅びぬ身体(からだ)湧き出る不屈の戦士(フェニックス)”」


 ―――――――戦いは第二ラウンドへと入る

どーも、ユーキ生物です。


「決戦編」いよいよ始まりました。・・・まぁ、「決戦編」は既に第十九話から始まってましたけど・・・試合開始です。動きが多いシーンが増えて、それを書いていて、マジで難しいと思います。ちゃんと伝わっていればいいのですが・・・


名乗りの解説ですが、前回、次回からやります的に言いましたが・・・先鋒戦が終わったら先鋒の二人の解説をしようかと思います。正直、今書きかけたのですが、折角だから各キャラのコンセプトとかも・・・とか思うと、ネタバレっぽくなりかねないので、とりあえず次鋒戦の時に先鋒戦、という形にします。暫しお待ちを。


制作の話になりますが、かなりヤバい状況になってきました。正直なところ、プロットが追い付いていません。筋書きがないのに書くのは暴走しかねないので・・・ですので、次回更新は一切の保証はありません。尽力いたしますので、無事投稿されることをお祈り下さい。


次回更新は2月16日を予定しております。頑張ります。

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