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戦士達ハ世界ニ其ノ名ヲ謳ウ  作者: ユーキ生物
決戦編
19/40

第十九話 先鋒戦前日

第十九話

先鋒戦前日


 ――――――――帝都

 大陸一の大国であるウェルドラドの中心都市はいつも通りの活気を放っていた。


「・・・帰って来ましたね。ヒカル様・・・はぁ・・・私達のハネムーンも終わりか・・・」

「ベル姉・・・ハネムーンって?」

「あ、いえ、ちょっと調子に乗ってました・・・」

「そうですよ。ベルさん。ベルさんだけの旅ではないですし、そんなことよりもまずはリーネさんの方をお願いしにいかないとですよ。」


 相変わらずのベルをキララが嗜める。


(――――――おっ?・・・これは・・・)


 そんなキララの様子をリーネを背負うコウがニヤニヤと見ていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「カケル?どうした?」


 呆然と立ち尽くすカケルをヒカルが心配そうに声をかける。


「・・・いや、その、背の高い建物も、人もいっぱいだから・・・」

「カケルは田舎者だからね!」


 カケルとヒカルのやり取りを聴いていたレイラが横から茶々を入れる。


「山籠りニートのくせに煽りますねぇ・・・」

「そう言うキララも山籠りニートじゃん」

「「・・・・・・・・・。」」


 カケルを煽るレイラを更にキララが煽るが、二人して「お前が言うな」状態に、悲しくなって来ていた。


 そうして、少し気分を落としつつ、ヒカル達はリーネの修理を頼むべく、帝都の裏町へと向かうのだった。


 ――――――――帝都の裏町

 ベルの生まれの地にして、華やかな帝都の影の部分。陰鬱な雰囲気の中に、帝都で失敗した者達の溜め処となっていた。ヒカル達にも怪しげな視線がささる。


「何だか私達、目立ってません?視線が怖いです・・・」

「・・・確かに・・・いや、リーネも言っていたし、ボク達、実際目立つのだろうな・・・」

「キララさん、大丈夫ですよ、この辺りの人は元は帝都の表部分で生きていた人がほとんどですから、雰囲気ほど野蛮ではありま――――」


 不安がるキララを見てベルが安心させるように解説するが、ベルは何かを直感した。


(そうか!こんな感じであざとくか弱いアピールをするべきだったのか!キララ様、敵ながらやりますね・・・半歩ヒカル様に近付きましたし・・・)


(ベルのヤツ・・・よくないこと考えてる顔してる。)

(キララのことあざといとか思ってるんだろうな・・・)

(キララさんを敵ながら、とか思ってそうな目付きしてる・・・仲間なのに・・・)


 それなりに戦士として共に生活してきたコウ、レイラ、カケルはベルの考えてることが大体わかってきていた。


 そうこうしつつも裏の町を進み、目的の場所へとやって来た。


「・・・何て言いいますか、扉が重く感じますね・・・」


 家族を捨てて王家に仕えたベルは帰りにくさで動きがゆっくりだった。


「ベル姉、きっと大丈夫、ボクからもお願いするから。」

「ワタシの親への挨拶ですね!!すぐに行きましょう!!」


 ―――――バタンッ!!


 それまでの重い動きから一転して、ベルは扉を開け放った。

 そして、その扉の先には小さな、暗く、薄汚れた部屋があり、部屋の主はゆっくりと来訪者達を見た。


「・・・お母さん・・・」

「・・・ベル・・・何か用かい?」


 ベルの母ルミは嫌悪感を顕に言葉を返す。


「お母さんにお願いがあって――――」


 ベルはパペリオンの人形であるリーネをテクノリアの機人にして欲しいことをルミへ話す。


「―――――――なるほど・・・」


 ルミは暫く思考を巡らし――――


「――――わかったわ。その依頼、受けるわ。」

「お母さん―――――!!」

「ただ、ベル、あなたのためではないわ。パペリオンの人形を機人にする、そんな前代未聞の挑戦にテクノリアで育った人間として興味が湧いただけ。勘違いはしないことね。」


 ルミは冷たくいい放ち、リーネを受け取る。


「それでも、ボクからもお願いさせて下さい。どうか、リーネを・・・」

「わかったわ。ちゃんとやるから出てって頂戴、王族の顔は見たくないの。」

「そうであったか・・・それでは、お願いします。」


 ヒカルはルミへ一礼して部屋を出る。ベルもそれに続いた。


 ―――――――パタンッ


 扉が閉じられる。


「――――――――。」


 ルミは一人になった部屋でリーネを見下ろす。


「・・・娘を王族に盗られたのだから、察して欲しいところよね・・・」


 孤独の母は誰に言うでもなく、そう呟くのだった。



 ――――――――帝都 ウェルドラド城

 大陸一の大国であるウェルドラドの中央に位置する言わば世界の中心。

 その一室にヒカルとその五人の戦士達は辿り着いた。


「ヒカル、来たか。」


 そこには先客達がいた。


「兄上・・・」


 リオウとその五人の戦士達がヒカル達を見る。


「・・・・・・・・・・・。」


 視線を交わす戦士達。


「さて、次代を担う王候補二人と、その戦士達十名、役者が揃った様なので、明日から始まる次期皇帝の座を賭けた玉座決定戦について説明させていただきます。」


 そう言って、二人の従者(メイド)が戦士達の集まる部屋へと入ってきた。


「申し遅れました。ユイは明日から始まる玉座決定戦で実況をさせていただきます、ウェルドラド従者部隊No.49のユイです。」


 ユイと名乗る従者(メイド)は短く明るい髪色と同じように、明るく快活に、それでいて失礼のない程度に頭を下げる。


「同じく、明日の玉座決定戦で解説を任されましたウェルドラド従者部隊No.3のマナと申します。」


 ユイとは対照的に長く艶やかな黒髪を優雅に(なび)かせ、マナと名乗った従者は深々と頭を下げた。


「従者部隊の番号はそのまま従者の序列、ひいては優劣や戦闘力などの評価、指針でもあります。」


 セツナが戦士達へと説明する。


「へー、ちなみにセツナは?」


 ルゥムがセツナに質問する。


「ワタクシは侍従長、No.1です。」

「さすが。」


 その返答を待ってましたとルゥムは返す。


「・・・ベルさんは?」


 ヒカル側ではキララがベルに訊ねていた。


「ワタシはヒカル様の一番になれればそれで・・・」

「いや、希望は訊いてませんよ。」

「・・・ノリ悪いですね・・・ヒカル様の側近となるためにNo.2まで序列を上げてます。」

「以外と高いんだな。」

「コウ様、以外とは失礼ですね。」

「いやいや、あれだけヒカルに盲目的だから仕事そっちのけでヒカルのことやってるとばかり・・・」

「・・・まぁ、否定はしません。」

「ちなみに従者部隊は現在500人ちょっといます。」


 ユイが捕捉する。


「500!?」

「ベルってそんなに凄かったの!?」

「普段あんなにダメダメなのに・・・」


 ヒカル側でざわめきが起こる。


「皆様・・・」


 ベルが静かに怒りを顕にする。


「・・・ほ、ほら!!素手の組み手だとレイラさんしか歯が立たないし!やっぱベルさんはすごいんだよ!!」


 慌ててカケルがフォローする。


「この二人も、かなりの実力者ということなんですね・・・特にマナさんは帝国戦士の二人を除けば一番上・・・淑やかそうに見えて強いのですか・・・」


 ソフィが二人をそう見る。


「そうですよ。マナは神体『神の目』を持ちます。あらゆる物を見ることができ、見切り力においては右に出るものはおりません。解説には強さ、能力、共に適切な人選かと。」


 ソフィの感想にセツナが付け足す。


「えー、盛り上がっているところ悪いのですが、明日からの玉座決定戦についてご説明させていただきます。」


 ユイが進行する。


「まず、玉座決定戦は全部で六戦行います。先の五戦は帝国戦士達が一対一で、そして、最後の一戦はリオウ様とヒカル様、そしてそれまでの五戦での勝者が参加できます。」


 戦士達に緊張が走る。


「最終的な勝敗は、最終戦で勝った方になります。例え戦士戦で全敗しても、最後の一戦で勝てばそれだけで次期皇帝です。」


 リオウとヒカルが視線を交わす。


「試合は一日一試合、計六日掛けて行われます。試合期間は対戦相手との戦闘を禁止します。正々堂々、です。」

「万が一規則を破られた場合は即失格となり、その戦士陣営の敗けとなりますのでお気をつけ下さい。」


 マナが厳格な規則であることを付け足す。


「そして、試合の勝敗は審判が勝敗が決したと判断した場合に決します。神具・神体を使用しての戦闘ですので、安易に勝敗を決しないようになっています。」

「その審判は、マナさん?」

「いえ、私ではなく。」

「今回の決定戦での審判はこの方が勤めてくださいます!!」


 もったいぶるように言ってユイは扉の方を指し示す。


「今回の決定戦は俺が取り仕切る。現王政軍事局長、元『滝の戦士』イレアだ。」


 大男が部屋へ入ってくる。


「父さん!?」

「レイラか・・・よく来たな。だが身内だろうと公平にジャッジするぞ、でないと国のためにならぬからな。」

「是非、そうして下さい。」


「それでは、明日の先鋒戦までゆっくりとお休み下さい。また、明日はこちらの部屋にお集まりください。」


 ユイがそう言って解散となった。



 ヒカル軍―――――――


「ヒカル!初戦はアタシが出るわ!!」


 解散してすぐにレイラはヒカルに申し出た。

 理由など訊くまでもないことは戦士達全員が理解していた。




「―――――――ふっ!!やっ!! ったあっ!!」


 夜、レイラは城の中庭で鍛練を行っていた。


「・・・・・・どなた?」


 レイラは城の柱の影へ声をかける。


「おっと、バレてたか・・・」


 姿を現したのはリオウ軍のカルノレット


「こんなお城にまで来てコツコツと、ご苦労様ですね。」

「・・・ただの日課よ。」

「ふーん、噂通りの努力家のようだね。」

「夢のために努力する。当然でしょ?」

「素敵な綺麗事ですね。オレの大っ嫌いなヤツだ。」

「・・・・・。」

「あんた、明日の先鋒戦に出ないか?」

「・・・言われなくてもその予定よ。」

「ならよかった。努力ではどうにもならない才能の壁ってヤツをオレが教えてあげるよ。」

「できるものなら教えて欲しいわね。その方がアタシは更に強くなれる気がするわ。」

「・・・ふっ、後悔するなよ。」

「――――――あなたが努力を嫌う理由も是非教えて欲しいわね。努力マニアのアタシとしては聞き捨てならないもの。」

「・・・オレは孤児だ。それだけはどれだけの努力をしようと変わらない。アンタには立派な父親がいるみたいだからな。わからんだろうさ・・・生まれで決まってしまう運命なんて・・・」

「・・・・・・・。」


 カルノレットの悲しそうな表情と言葉にレイラは何も言えなかった。


「だからオレはアンタを生まれ持った才能で()じ伏せてやるっ!!」


 それだけ言い残して、カルノレットは去っていった。



 翌日

 城の上空にある天空コロシアムに多くの観客が集まっていた。コロシアムは円形で、中央の低い位置に正方形のフィールドがあり、それを取り囲む様に階段状の客席があった。


 ―――――おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!


 試合前だったが会場は次代を担う若者達のぶつかり合いを期待し、熱気に包まれていた。


「・・・レディース、エーンド、ジェントルメーン!!ウェルドラド次期皇帝決定戦へようこそっ!!ユイはこの決定戦で実況を担当する従者部隊No.49のユイだよーっ!!」


 観客に向けてコロシアムの舞台上中央に立つユイが仕切り、自己紹介をする。


「解説の従者部隊No.3のマナです。よろしくお願いいたします。」


 ユイの隣にいるマナは落ち着いて挨拶をする。


「それじゃあ!!さっそく試合に参りましょうかっ!!本日行われる先鋒戦!その両軍の戦士達の入場ーっ!!」


 ユイの合図でコロシアム中央、百メートル四方の石畳のフィールドにレイラとカルノレットがゆっくりと姿を現す―――――――――

どーも、ユーキ生物です。


とうとう「決戦編」へ入りました。ノロノロ更新でスミマセン。

初戦はレイラ対カルノレットとなります。どっちが勝ちますかね。普通に考えたら努力家のレイラでしょうけど、前作「Desire Game」をお読みいただいた方は私ユーキ生物がひねくれていることは大体察されているかと思います。王道を行くかも知れませんし、その裏をかいてしまうかもしれません。そんな感じでお読みいただければと思います。


「決戦編」での後書きですが、毎回ではありませんが、各戦士の名乗り口上の解説をしていこうかと予定してます。造語とかも結構ありますし、一名乗りに大体三~五時間くらい掛けてますから折角ですし。もちろん本編で名乗った後でです。ですので今回はありませんし、毎回あるとは言えません。初戦の二人は既に名乗りはしてますけどね。


次回更新は2月10日を予定しております。

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