第十五話 武の頂点
第十五話
武の頂点
「・・・まさか“あの”リオウが心奪われるとは・・・」
ソフィを眺めつつカルノレットはしみじみと口にする。
「・・・ルゥムさん、“あの”って、リオウさんはそんなに有名なのでしょうか・・・?」
「ソフィ、知らないの?」
疑問を浮かべたソフィは隣にいたルゥムへと問い掛け、それにカルノレットは驚きの様子を見せていた。
「カル、ソフィはずっと氷の城に居たのよ、情報が入るわけないじゃない。」
「あ、そうか・・・」
「・・・その、スミマセン・・・引きこもりだったもので・・・」
「いいのよ。えっと、リオウのことよね。」
「我が居る所で我の話をされるのは、なんというかこそばゆいな・・・」
「リオウ様、これも王になれば当たり前のことになります。今の内に慣れておいて下さい。」
「う、うむ、そうか・・・」
話をする数歩後方でリオウは微妙な顔をし、セツナが嗜めていた。
「コトノハ リオウ、ウェルドラドの第一皇子にして、次期皇帝の最有力候補よ。言ったことが現実に起こるという言霊の魔術を使う最強の魔術師、血統も才能も兼ね備えた人なんだから。」
「言ったことが現実に・・・だから私の氷の城も融かせたのですね・・・」
「・・・今さらだけど、何で玉座決定戦なんてやるのかな?これだけ強いリオウがいるんだからリオウが次期皇帝でいいのに・・・」
「・・・確かに・・・対するのは魔術の使えない第二皇子のヒカルだし・・・謎よね・・・」
カルノレットとルゥムはその疑問へと行き着いた。
「謎なものか。」
その疑問はリオウが一瞬で反論した。
「お前達はヒカルの凄さを知らないだけだ。」
「リオウ様・・・」
「ヒカルの凄さ・・・?」
「そうだ。ヒカルの魔術も我と同じ言霊の魔術、我は生物以外に干渉できる魔術だが、ヒカルはその逆、生物に干渉する言霊の魔術を使える・・・尤も、ヒカル本人はその能力に気付いてはいないみたいだが・・・」
リオウはヒカルについて語る――――
「リオウさん・・・そのヒカルさんのことが好きなんですね。」
「まさかの“ヒカル×リオウ”!?」
「ルゥム様!?はしたないですよ!!」
「・・・咄嗟の事だったのに、ルゥム殿はリオウ殿を受けにできるのだな・・・。」
ソフィの言葉にルゥムは過剰反応を見せる―――――
そして、あまりの出来事にシゲノブですら感想を漏らす―――
「なんか、ヒカルさんを語る時のリオウさん、すごく優しい目をしてましたから・・・」
「・・・ま、まぁ、ずっと顔を付き合わせてた弟だからな。大切ではある。」
ソフィの言葉にリオウは顔を赤くし答える。
「へぇー、ふーん、ほぉー。」
ルゥムをはじめとする一行はそんなリオウをニヤニヤと眺めていた。
「と、とにかく! 一対一ならまだしも、今回の玉座決定戦の様に、仲間を率いて戦う場合は―――――」
「ヒカルの言霊は、リオウの『王の啓示』みたくデタラメなの?」
敵の強大さを直感したカルノレットは、リオウにすぐさま確認をとる。
「・・・本人が能力に目覚めているかわからないし、目覚めていない時しか知らないから詳しくはわからないが・・・神具・神体を使用する際に、名乗りを行うことで神通力が高まり高い威力を発揮するだろう? ヒカルの言霊はその能力の引き上げを更に一・二段階行う、そんな所を確認している。」
―――――――戦士達の間に更に緊張が走る。
名乗りによる神通力の、そして神具・神体の威力向上の凄さは彼等も理解している。
「・・・そんなヤバイのが相手だったのね・・・」
「そうだ。そして、我等が勝つためには――――――」
「アタシ達の勝率にかかっている、と。」
「そうだ。」
「私達の相手・・・むこうの戦士はどんな方々なんでしょうか?」
ソフィの質問にリオウは首を振る。
「我とヒカルは同時に仲間集めに出たからな。そこまでは帝都に戻るまでは知ることはできない・・・」
「ダメだな。情報収集能力も戦力の一つだぞ―――――」
その言葉と共に、人影がリオウ達の前へと急接近して―――――――
―――――――ガッキィンッ!!
セツナの小太刀と現れた初老の男性が振るった棍が衝突していた―――――
「――――――キョウ師範代!?」
セツナがその姿に驚きを示す。
「えーっと・・・セツナさん、この方はどなたですか?加勢した方がいいのでしょうか?」
つばぜり合いをするセツナにソフィがおずおずと問う。
「ソフィ様、加勢は大丈夫です。この方は・・・帝国最強の戦士・・・ワタクシ達、従者部隊の武術指導を行う師範代です・・・。」
「セツナも弛んでいるな・・・対戦相手の情報を探らないとはっ!?」
キョウと呼ばれた男性がそう言った直後――――――――セツナの身体は宙を舞っていた・・・
「くっ!!」
なんとか受け身をとるセツナだが―――――――
「前より弱くなったな。」
立ち上がる前に目の前で棍が寸止めされていた。
「!? セツナさんがああもあっけなく・・・」
戦士達はキョウの強さを目の当たりにする――――
「リオウも、強力な魔術に胡座をかいている。頭や口ではヒカルを警戒しているみたいだが、プライドが自分の方が上だと譲らない様だなっ!!」
それを言い終わる頃には、リオウも地に手をついていた。
「『神の息』」
少し離れた位置で、シゲノブは神体の能力を発現させキョウを引き寄せる――――――――
「おっと・・・お前は面白そうだな・・・『神の棍』!!」
キョウはニヤリと笑うと、神具『神の棍』がうっすらと輝き――――――――
ガッキィンッ――――――!!
シゲノブの刀を押さえ込んでいた。
「まさか、これほどとは・・・」
「腕は悪くない。初見で見切れる者はそうはいないだろう。」
シゲノブの技を評価する。
「『神の左腕 霰弾幕!!』」
シゲノブを押さえ付けていて身動きが取りにくいキョウへソフィが氷の粒を避けようがない程の量を放つ――――――――
(氷を棍で防げばシゲノブさんが、シゲノブさんを押さえるのなら氷が―――――避けられる距離じゃない・・・これで詰みよ!!)
ソフィが勝利を確信する――――――――
「『神の右腕 獄炎壁』」
キョウは左手に持つ棍でシゲノブの刀を押さえつつも、右腕をソフィ側へかざし、その腕が輝く―――――――――
――――――――――ゴオォッ!!
その腕の先には炎の壁が立ち、氷の弾丸を防いでいた。
「――――――なっ・・・・・・!?」
「おいおい・・・マジか・・・」
「そんな、まさか・・・」
氷を放ったソフィも、それを見ていたカルノレット、ルゥムも驚愕の声が漏れる・・・
「・・・ええ、キョウ師範代は神具『神の棍』神体『神の右腕』、二つの神具・神体を行使するという強さを持っています・・・才能も、経験も、技も、威力も、全てを兼ね備えている武の頂点、それが、帝国最強のキョウ師範代なのです・・・。」
「『キョウ師範代の火炎は我を焼くことはできず、棍も近付くことすら敵わない――――――』」
キョウがシゲノブとソフィの相手をしている間にリオウは“王の啓示”で防御の態勢を整える――――――――
「――――――だから、魔術に頼り過ぎなんだよ。」
リオウの目の前に、棍を持たないキョウが立っていて―――――――
「――――――うっ!!」
リオウは再び投げ飛ばされていた。
「リオウ、決戦までに近接戦を鍛えるんだ、それだけでお前の勝率は大きく上がる。」
投げ飛ばされたリオウを見下ろして、キョウはハッキリと告げる。
「キョウ師範代・・・まさか・・・」
「そうだ。俺が指導する。」
「その申し出は有り難いですが・・・いったいどうして・・・決戦への肩入れのようなことを・・・?」
リオウは問う。
「なに、最強の王というものを育ててみたくなっただけだ・・・」
「最強の王・・・」
「・・・・・・リオウ、お前が目指す王とは、どんな王だ?」
今度はキョウがリオウに問う。
「我は・・・・・・我が、王が、民を護り、幸福を与えられる・・・そんな、柱の様な王に――――――」
「そうか・・・そいつはいい王だな。ならば、やはり最強の王となれ。民に何が起ころうとも『王がいるから大丈夫』、そう思ってもらえるような。民の心を支える王に――――――」
キョウとリオウの話を聞いていた戦士達は頷く―――――――
「確かに、リオウになら全て任せられる、そう思ってアタシ達はリオウに付いてきてるんだし・・・」
「うん、私もリオウさんには国民全てを任せられる器を感じる・・・」
「天才の俺を従えてるんだ。カリスマがあるに決まってる。」
「うむ、某の全身全霊を委ねられる。その強さが、大きさが、リオウ殿にはある。」
「よし、そうと決まったら、さっそく特訓だ!!決戦まで日がない、ついでにお前らも鍛えてやる!!」
落ち着きのあるリオウ一行に、帝国最強の指導者が加わり、一気に暑苦しくなるのだった。
どーも、ユーキ生物です。
えー、投稿が小一時間遅れましたことお詫び申し上げます。リアルの方でやむにやまれぬ事情がありまして・・・
一応日付は変わってないので許容範囲内としていただきたいです。
弁明はこの辺にして・・・
リオウ編です。リオウファンの方お待たせしました。・・・もうリオウファンネタはいいですかね・・・。
いきなりですが、リオウの目指す王の姿「最強の王」という宣言(?)が出てきました。ヒカルは民を輝かせる王、リオウは民を強さで守り支える王、そんな目指す王の違いがあります。どちらの王が上か、それを決戦で決める、という感じになるかと「予想できます」。
さて、キャラ設定の話は次回にして、物語制作のことを少し・・・「戦士達」の超、大まかな構成が形になりつつあり、物語がヒートアップし始めました。エンディングも大体固まってきました。これから煮詰めて行くのが楽しみです。
ちなみにプライベートな話ですが、仕事で報告書を頻繁に作成するのですが、お上から「小説じゃないんだから簡潔にわかりやすく書け」とお叱りを受けることが増えてきました。そりゃ、ほぼ毎日小説を書いてれば(ちまちまと)それが移りますよ。・・・まぁ使い分けてこそのプロ何でしょうけど・・・小説書いてることはお上にはバレてないはず・・・ちなみに同期の一人にはバレました。画面覗き込まれて・・・そいつがチクった疑惑が私の中にはあったりしてます。
そういうことなんで、読んでいて「なんか文が薄味になったな」と思ったら、仕事の影響だとお許し下さい。これからも精進致します。
では、次回更新は、12月23日(金・祝)を予定しております。