第十四話 兵器として、戦士として―――
「・・・言ったじゃないデスか。『リーネを戦力に数えないで』って・・・」
「・・・リーネは最初からパペリオンの戦力なんデス――――――」
第十四話
兵器として、戦士として―――
「そ、そんな・・・・・・リーネ・・・?」
動揺するヒカル達にリーネは続ける。
「・・・今までありがとうデス。短い間でしたが、リーネは、人間みたいに扱われて、嬉しかったデス・・・・・・“リフレクトカノン”ッ!!」
感謝と共にリーネは光弾を放つ―――――――――
「さっきの背後からの奇襲は驚いたけど・・・この程度ならっ!」
コウは光弾を避けて刀を抜く―――――――――
「“相互反射”」
リーネからコウを挟んだ後ろ手から、声と共に光弾が跳ね返ってコウへと向かった――――――――
「――――――うっ!! かはっ!!」
コウが光弾を背後から直撃し、地に崩れてしまう―――――――
「マスター・・・」
リーネは現れた人影に向かってそう呟く・・・現れたのは細身の若い男性だった・・・
「おう、お前がヒカルか、リーネが世話になったな。」
男はヒカルへフランクに話し掛ける。
「・・・あなたが?」
「そうだ、俺がリーネの・・・人形リーネのマスター、オネットだ。これでも国じゃ一番の傀儡師って言われてて、『二心同体』つってな、オートで動くし、キチンと喋らせられるし、意志を持たせることもできるし、光弾を放つ事もさせられるんだ。」
「意志も・・・? じゃあリーネは・・・」
「まぁ、そうだな、一個人とも取れる。だが所詮は戦うために作られた兵器だ。」
「そうデス。リーネは人形デス・・・戦うために作られたのデスから・・・デスから、皆のことは好きデスが・・・リーネの存在価値のために・・・“リフレクトカノン”」
リーネは葛藤しつつも、自らの存在価値を世界に、そして友に示すかのように攻撃に移る―――――
「くッ――――リーネッ!!」
リーネの放つ光弾は速度はそこまで速くなく、来るとわかっていれば躱せるもので、ベル・キララ・レイラは反射に気を付けつつ回避する。
「“相互反射”」
リーネの放つ光弾をオネットが反射する――――
「“相互反射デス”」
リーネもその光弾をさらに反射する―――――
―――――永久反射
それがパぺリオンのナンバーワン傀儡師オネットとリーネの必勝法の名である。莫大なエネルギーの光弾は使い手の体力もかなり持っていく、しかし反射を行うことで、最大火力技を無駄なく運用でき、且つ二人が動きつつ反射することで予測がしにくい攻撃へと昇華させる“傀儡使い”という戦士の長所を利用した高威力連続攻撃である。
「“反射”」
「“反射”」
「“反射”」
―――――しかし、光弾一つを躱すことは訓練をし体力が向上している戦士達には難しいことではなかった。
「・・・やるね・・・なら――――――“リフレクトカノンッ”」
「なっ―――――!?」
今度はオネットから光弾が放たれる――――二つの光弾が反射する空間となった―――――――
「いつまでもそっちが好き勝手できると思わないことね――――――」
―――――バチバチバチバチッ!!
キララがオネットを仕留めるべく雷を増幅させ始める――――
「いいのか?俺が死ねばその人形であるリーネもその活動を停止させるんだぞ――――」
「くっ――――」
――――仲間だった者を見捨てるのか? そういう脅しが込められた言葉にキララが躊躇う。
「―――構わない。キララ、レイラ、ベル姉・・・ソイツを・・・オネットを仕留めてくれ――――」
キララの一瞬の躊躇いの内に、ヒカルは解答を用意した――――
「・・・いいの?」
「・・・よくはない、だけど・・・それでも、戦うことしかできない運命のリーネを救うには・・・」
「・・・・・・・・わかりました。」
ヒカルの指示を聴き、ベル、レイラが光弾の飛び交う中へと向かう――――
――――――バチバチバチバチッ!!
二人の陽動の隙にキララは雷を増幅させる――――――
「―――――くそっ!!囮なのは、わかってるんだがっ!!」
オネットは苛立ちを露わにする――――――陽動だとわかっていながらも、二人を無視してキララに光弾を向ければ二人が直接仕留めに来てしまう、そんな距離で二人は光弾を躱していた。
――――――いかにオネットがパぺリオン一の傀儡師であろうとも、戦闘経験がベルとレイラには敵わず―――――その差がこの陽動に表れていた。
「ベルさん、レイラさん――――――」
キララの合図で二人が散開し―――――――――
「“大解放 アブソリュートレイザー”!!」
―――――雷の槍が光弾を貫いた。
「何っ!?」
大技が来るとわかっていたオネットはリーネを楯にしていた―――――が、それは空振りに終わり呆気に取られる。
「一体どういう―――――」
―――――――ズズズッ!!
直後、オネットの身体は背後から迫る刃に貫かれていた―――――
「あんな光弾でオレを仕留めきれると思うなよ!!」
「ゴホッ!! ―――――そう、か・・・鎧・・・」
オネットは血を吐き、その場に倒れ込む―――――
その背後から『神の鎧』を纏うコウが現れた。
「――――――――――――っ―――――――――――」
―――――ドサッ
音もなく、糸が切れたかの如く、リーネだった物が力なく転がった――――。
「・・・・・・・・・・・・。」
しばらくその場には沈黙しかなかった・・・。
「・・・カケル、無事か?」
ヒカルは光弾が直撃したカケルの安否を確認する。
「・・・うっ・・・ま、まぁ、なんとか・・・でも、ちょっと立てないかな・・・」
決して軽傷とは言えなかったが、何とか一命は取り留めた。
「・・・これで、よかったのかしら・・・」
キララにはやはり迷いがあった。
「どうだろうか・・・でも、降りかかる火の粉は振り払わなければなるまい・・・でないと皆を失ってしまうのだから・・・」
「ヒカル様・・・」
「リーネも戦い続けなくて済むのだから・・・」
「兵器として作られたから戦うことが存在価値の証明って・・・僕にはわからないよ・・・」
「カケル・・・俺達だって戦士だ。俺達にとっても『戦う』ということの意味はしっかり考えるべきだ。」
コウの言う様に、皆に思うところがあったのは、彼らが「戦う」ことに存在価値を持つ戦士だったからに他ならない――――
「・・・・・・・・・あの・・・ヒカル様・・・リーネを、復活させられるとしたら、どうします?」
そう気まずそうに切り出したのはベルだった。
「ベル姉・・・!? できるの?」
「ワタシができるわけではありません。・・・ただ、その、母なら・・・」
「ベル姉の母君・・・?」
「・・・はい。母は、テクノリアの出身ですから、リーネを機人としてなら、復活させることはできると思います。・・・家族を捨てて帝国に仕えに行って、合わせる顔はありませんが・・・それでも、リーネのためになるのなら・・・」
「・・・ということは、ベルって・・・」
「はい、テクノリアとウェルドラドのハーフです。」
「・・・だから神通力の扱いが・・・」
「まぁワタシの話はいいのですよ。」
「・・・ヒカルさん、スゴい技術でリーネが救えるのですよ。お願いしましょうよ。」
ベルの話を聞いて、キララは明るく返す――――
「・・・・・・でも、機人、ということは・・・」
「・・・はい、機人のルーツは兵器です・・・」
再び、場が固まる――――――
「機人なら人形と違って戦うかを自分で決められる。誰に強制されるでもないのなら、それは戦士である俺達と同じ立ち位置だ・・・どうなるかはわからねぇけど、いいんじゃないか?」
コウが膠着を破り、提案する。
「・・・そうだね。・・・行こう、帝都に!」
こうして、ヒカルと戦士達は決戦の行われる帝都へと向かうのだった。
どうも、ユーキ生物です。
第十四話をお読みいただきありがとうございます。あまり切りがよくなくも感じますが、これにて「輝きの王編」は終了となります。次にヒカル達が出てくるのは暫く先になります。
そして、リオウファン(?)の方々、おまたせしました。次から始まる「最強の王編」はリオウサイドの話となります。「最強の王」といってもリオウは元から最強ですからね。ヒカルの「輝きの王」とは違う意味かもしれません。ご期待下さい。
しかしながら、前回同様、一週間お休みをいただきます。・・・まぁ、いつものヤツです。スミマセン。
さて、「輝きの王編」でしたが、リーネが「神の算盤」ではないのはそういう理由があった、というものです。調子に乗ってたら辻褄が合わなくなるところでした。「~デス」という口調も人形だからこそのものだったりします。萌え要素とかキャラを濃くするためとかではありません。あしからず。うん。
「どんな王がいいのか?」というテーマに対する一つの解答が、今回の「輝きの王編」です。「民を輝かせる王」・・・そんな王は好きですか?そんなあなたはきっとヒカル派。では、リオウは・・・? それは次の「最強の王編」で。ご期待ください。
次回更新は12月16日(金)を予定しております。