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小説の書き方  作者: けけお
7/8

少女漫画って、もしやすごくないか?

 高校生高学年の時、姉に少女漫画を借りていくつか読みました。

 ここはグリーンウッド、僕の地球を守って、笑うミカエル。このあたりがとても印象に残っています。

 パッションパレードも良かった。

 河原泉作品が多かったかな。河原作品はハズレがないですよね。


 ちなみに、中学生位までは男が少女漫画を読むのは格好悪いと思っていたのですが、ある日試しに読んでみたらあまりにクオリティが高く面白かったので偏見が無くなった、と言うところです。

 周囲も同じような変化をしだしていました。大学生の時に友達の家に泊まりに行った時、そいつと缶ビールとポテチ片手に、妹さんのときめきトゥナイトを徹夜して読んだりね。


 真壁くーん。


 少年漫画は少年漫画で面白いのですが、底が浅い気がします。等身大の人間よりも、英雄やら冒険を描くから、ついそう感じてしまうのでしょうか。

 一方、少女漫画は、とにかく人間を深く描いている気がします。

 私は上記の少女漫画を読みはじめた頃、ひたすら混乱しまくったもんです。普通の等身大の人間が、たいした大冒険もなしにあまりにドラマチックに人間ドラマを繰り広げるので、なんじゃこりゃと。


 この少女漫画の人間を描くクオリティの高さってのは、ベタベタの恋愛漫画が下敷きになっている気がします。

 リボンとか、そういう初歩的な恋愛漫画で、等身大の人間ドラマにひたすら触れまくった少女達が、成長して独自の嗜好を得て、さらに少女漫画業界で切磋琢磨する。その正の連鎖がクオリティを高めているのではないのでしょうか。


 まあ、そこまで詳しく知らないので、テキトーに言っています。すいませんね。


 そういえば、こんなカオスな少女漫画もありました。第一部はベタベタの恋愛漫画なのですが、第二部では、そのふたりが結婚して家庭を作り、仕事やお金などにリアルに苦しみ成長していくと言う。

 幼なじみの高校生カップルが高校生で結婚して、そこまでが一部。そして2部はリアル。男が大学生しながらバイトで生活費を稼いで。いくら働いても金が足りないからボロボロ。そして、運良く宝くじが当たる。卒業後は旦那が出版社に勤めて、やっぱりボロボロ。でも、人間的に成長していく。奥さんは育児をしながら、テレビドラマの脚本家に成長していく。そんなお話。

 とても素敵な作品でした。


 と言うことで、人間を描くレベルアップをしたく、恋愛小説に挑戦してみましたのですよ。

 どやさ!




 十何年かぶりに戻ってきた。

 この町は大分変わっていた。

 花屋さんがあった場所はレストランになっており、民家の合間にポツンとあった田んぼはコンビニになっていた。

 別に、何か目的があってやってきたわけではない。仕事の関係でたまたま近くまで来たから、その帰りに寄ってみただけだ。

 コンビニに入る。クーラーがよく効いている。

 帰りの電車がある。大した時間はいられない。少し涼んでジュースを買って、少しだけこのあたりを散策して帰ろうと思う。

 雑誌コーナーに行き、週刊誌を開く。

 ふとガラスごしに外を見る。

 通りの向こう側に、見た事のある顔を見つけてハッとした。

 中学3年生から、高校2年生の引越しをするまで付き合っていた彼女だった。

 青のワンピースを着て、日傘をさし、ぼんやりと空を見上げている。そして、何か疲れたような顔をしている。

 しばらく僕はその姿に見とれていた。

 話しかけるには、躊躇があった。

 僕が引越し、遠距離恋愛になり、初めは電話やメールなどのやり取りを頻繁にしていた。しかし、やがて新しい土地での生活が忙しくなり、やり取りはおろそかになっていった。

 彼女が高校を卒業する時、こちらに遊びに来いたいという連絡があった。僕は悩んだ挙句、それを断った。卒業後のお互いの進路を考えても、今後別々の人生を送って行くのは確実だった。

 僕の言葉に彼女は傷ついていた。でも、彼女もやっぱり同じ事を考えていたのだと思う。最後には僕の考えを受け止めてくれたのだった。

 それが別れだった。

 毎年夏祭りの、花火の季節が来る度、僕は彼女の事を思い出し、考えていた。

 あの時の僕は、考えすぎていたのではないかと。もっと単純に、バカに行動すべきだったのじゃないかと。

 その彼女がここにいる。

 やがて彼女は我に帰り、向こう見て手を振った。

 スーツを着た中年男性の運転する車が、彼女の前で止まった。見たことがある。彼女の父親だ。

 僕はため息をつく。

 これでいい。僕ももう、帰ろう。

 彼女を見せた車は走り出し、少し先で Uターンをした。

 そして、車が僕の目の前を通り過ぎた。


 それは偶然だったのだと思う。


 彼女が助手席で窓の外を見た。そして僕と目が合った。

 彼女の焦点の合わない目が僕を認め、やがて驚きに変わりかけていた。

 そして車は走っていった。




 空には入道雲。

 そして、太陽。

 私は日傘をさして、父が迎えに来るのを待っている。

 今日はこの先の病院に、母の見舞いでやってきた。

 病院を出て、あまりに暑いので喫茶店でアイスコーヒーを飲んでいると、父から電話があった。仕事で近くを車で通るので、ついでに私を送って言ってくれるのだという。

 もうすぐ父が来る時間だった。

 母の病気は乳がんだった。先日手術を受けた。そして、経過観察の為、今もまだ病院にいる。

 良性の癌だったので、転移の心配はないとお医者様が言っていた。安心した。

 しかし、母はまだ50歳だ。それなのに乳がんになるなんて。

 もし発見が遅れていたら母が亡くなっていたのだと思い、恐怖を感じる。

 母だけの問題ではない。自分自身にも当てはまる。

 人間はいつか死んでしまう。その当たり前の事を見せつけられた気がする。

 このところ、死を身近に感じる。そしてそれほどに、この世界は美しいと思う。

 この身を焼くような太陽すら愛しく感じる。

 私は空を無心に眺める。入道雲が私を見下ろしている。

 やがて父が来たのに気付いた。私は手を振る。父が私の前で車を停める。

 窓を開け、父が言う。

「すまん。遅くなった」

「ううん」

 私は車に乗り込む。

 父が言う。

「お母さんの様子はどうだった」

「元気。そう、お父さんのご飯の心配していた」

「そうか」

「私がきちんと作るって、言っておいた」

「そうか」

 車が走り出す。そして、少し先でUターンをする。

 父が言う。

「顔色が悪いぞ。どこか、調子が悪いのか?」

 私は答えない。答える気力が湧いてこない。

 父に無言のままその意志を伝えようと、背を向ける。そして窓の外を見る。そこには、いつのまにかできていたコンビニエンスストアがある。

 私はなんとなくその店内を眺める。人がいる。サラリーマン風の男性だ。こちらを見ている。目が合う。

 見たことがある。確かに、見たことがある。何故かとても胸が狭くなる。

 信号が黄色になる。やがて赤になるまでに横断歩道の向こう側へ行こうと、父が車を加速させる。

 私は混乱しながら、今見た顔を、昔見ていたあの顔に当てはめようとする。

 自信がない。でも、彼だと思う。面影がある。

 私は言う。

「お父さん車を止めて」

 ハザードランプが灯る。そして車は道の端に止まる。私はドアを開ける。日傘を手に取るのももどかしく、外に出る。

 そして、その場に立ち、向こうを見つめる。




 そして、僕は考えずに行動しようと決めた。

 あの時は間違っていたのだ。

 慌てて雑誌を棚に置く。そして、なかなか開かない自動ドアの前で足踏みをする。

 表へ。思い切り駆ける。

 もう追いつかないだろう。

 それでも構わない。

 そう思い、走る。

 走りながら、あの時の夏祭りの時の事が、頭に浮かぶ。

 ジメジメした夜だった。人混み。そして、浴衣姿のきれいな彼女。彼女の手には綿菓子。僕の手には紙コップのコーラ。響く歓声に釣られて、ふたりで夜空を見上げた。花火の光が続く。そして遅れてやってくる、音。僕は彼女の顔を見た。きらきらと笑っていた。

 炎天下、スーツ姿で走る僕の先に、彼女が見えた。

 こっちを見ている。

 彼女と目が合う。

 不安そうな彼女の顔が、笑顔に変化した。


 僕は、息をきらして、走る。

そして、ラリアットーーー!

彼女「ぐはっ」

とか続けたくなるのが、ワタシの悪いところです。

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