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小説の書き方  作者: けけお
6/8

嫌われ者の役どころ

 今回も「心」さんの「小説講座」から。

 キャラクター理論【嫌われ者の役どころ】なんだけど、これはなろう作家にとってかなり大切な部分だと思います。

 自分の小説にはいい人しか出したくないですよね。少なくても、自分としてはそう。

 こういう人って、多いんじゃないでしょうか。

 でも、それじゃダメなんだと分かりました。

 詳細は「小説講座」を呼んでください。


 と言うことで嫌われ者の文章を試験的に書いてみました。

 底辺作家の自主練習でございます。

 しかしまあ、自分の中でいかに嫌われ役を書くのを避けようとするのか、やっていてよく分かりました。すぐに改心させようとしてしまうのです。で、書き直すの繰り返しでした。いい練習になりました。


 では、スタート!




 ここは村長の家。小さな村の村長の家だから、やたらボロい。

 その応接間でダラダラとだらけながら、俺は言う。

「おい、プロテイン。肩もめ」

「はいっ」

 屈曲な騎士のプロテインが甲斐甲斐しく俺の肩を揉む。あー、気持ちいい。

 ちなみにプロテインってのは俺がつけたあだ名だ。こいつは筋肉がすごい。ゴリマッチョだ。本名はジョセフ何とかと言うらしいが、もう忘れた。

 背が高くて男前なので、始めは劣等感を感じていた。しかし、こちらは世界を救う予定の勇者様だ。従順に応対してくるので、今ではこき使って、ストレス解消の道具にしている。

「プロテイン、次は私の肩を揉んでね」

 こう言ったのは、隣でだらけている姫様のベルセフォネーだ。金髪で青い目の美少女。うーむ、洋モノ。

 俺は言う。

「プロテイン、もういい。姫様の肩は俺が揉むから、料理の手配をしてこい。そんで、しばらくこの部屋に誰も近づけさせるな」

「はいっ」

「もう。勇者様ったら」

 姫様が唇を尖らせる。吸いつきたくなるような、柔らかそうな唇だ。

 俺は言う。

「まあまあ、肩は俺がもんでやるよ」

「いいのですか?」

「うん、この前肩揉みスキルが手に入ったし。それに、うっかり肩以外も揉んじゃったりしてな。ウへへ」

「もう、勇者様ったら。でも、肩以外の部分は、魔王を倒すまでおあずけですよ」

 ちぇっ。

 でもまあ、いっか。初めからそういう約束だ。


 俺は転生勇者だ。それも、チート系。

 この間まで日本の高校生だったが、帰宅中、突然魔法陣が足元に現れた。そして気がついたら異世界で、王様やら姫様やら兵隊達に囲まれていた。

 いわゆるテンプレってやつだな。

 で、予想通りに姫様に世界を救ってくれと言われたんだよね。そして、王様からは、魔王を倒したら、俺に姫様と国をやるってさ。

 俺はすかさずオッケーを出して、念書を書かせた。


 俺は小学校でかなり酷く苛められていた。チビデブバカの運動音痴で、近視の乱視だったせいだ。自分で自分が大嫌いだった。格好のいじめの標的だ。

 んで、いじめはどんどんエスカレートして、ひん剥かれて全身に油性マジックでチンコとかウンコとか落書きされて写真をとられたあたりで、親がコリャアカンってなって、転校した。

 それからというもの、俺はただひたすら大人しく目立たないように生きてきていた。

 目標は、空気になることだった。

 毎日がつまらなかった。

 だから、この非日常にとても喜んだんだ。

 チートを使って魔王を倒したら、一気にブルジョワだからな。現実世界じゃ俺なんて、よほどの幸運で零細企業で平社員だろう。

 あと、戻りたくなったらきちんと日本に戻してくれるって言う。保険もバッチリ。まあ、戻る気なんてないけどな。


 さて、俺のチート能力は、3つ。ステータス閲覧、取得経験値増加(特大)、スキル受け取り。激レアスキル三連発らしい。

 ステータス閲覧と取得経験値増加(特大)はそのままの内容だ。

 そして、スキル受け取り。

 これは、相手の了解を得たらスキルを譲り受けることができるというもの。

 対魔王兵器として、俺はガンガンスキルを覚えさせられた。兵士達からは、剣技スキル、槍術スキル、弓術スキル、魔法使い達からは、攻撃魔法スキル、回復魔法スキル、補助魔法スキル、エトセトラ、エトセトラ。

 今じゃ、王国一番の力を持つ魔法戦士だ。

 だが、魔法戦士のままでは、魔王を傷つけることは出来ない。攻撃に聖属性を持たせる神聖剣スキルを手に入れ、聖騎士へのクラスアップが必要なだ。

 その為、俺と姫様とプロテインの3人で、北の果ての山で隠居生活を送っている、元、王国筆頭聖騎士モンタギューに会うための旅をしている。彼から、彼だけが持つ神聖剣スキルを受け取るのだ。


 以上ご説明だ。

 俺は村長の家の応接間で、王女の肩を揉む。

 いい匂いがする。

 ほんで、後ろから姫様の胸元をのぞき込む。ウーム、でかいっすね。

 やがて、姫様が体を離して言った。

「勇者様、ありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそご馳走様でした」

「え?」

「あ、いや、お腹が空いたなって思ってさ。おーい、プロテイン。いるか?」

「はい、こちらに」

「よし、食事の手配をしろ」

「はっ」

 そして食事を終えると、村長に案内されて、広場に行く。そこには、村人達が集められている。全部で100人くらいか?ちんけな村だなあ。

 村長の号令で、村人達が並べられる。

 その前に立つ俺達。

 俺を真ん中に、右に村長、左に姫様とプロテインの配置で、村人達の前に立つ。

 村長が言う。

「皆のもの、こちらのお方が魔王を倒す力を持つ勇者様である。その名もシバヤマダイゴ様だ」

 村人達がヒソヒソ話をしながら、こちらを見ている。生意気にも胡散臭げだ。よっしゃ、イッパツ勇者様の実力の片鱗を見せてやるか。

「なあ、ちょっといいか?」

「はっ」

 俺は村長の話をやめさせる。そして、右腕を高く上げる。頭上に、人の頭程もある火の玉が現れた。無詠唱スキルによるファイヤーボールだ。

 そして、後ろを向いて、火の玉を少し先の地面に発射する。火柱が上がった。

 どよめきを聴きながら、村人達の方を向き直る。皆が俺を見ている。驚く顔。怯える顔。憧れる顔。ウーム、快感。

 俺は言う。

「俺の使命は、魔王を倒し、平和な世界を実現させる事。その為、力を必要としている。今から皆の中にある力を探っていく。そして、その中に、魔王を倒すのに必要な力があれば、ぜひその力を分けてもらいのだ。皆、共に力を合わせ、魔王を倒そう。どうだ?」

 俺の演説に、村人達がポカンとしている。

 何言ってんだこいつ、って感じだ。まあ、スキル自体が何かわかっとらんのだからな。仕方ない。でも、ちょっとイラッとした。

 もう一度後ろを向いて、頭上に特大の火の玉を作る。青い炎だ。それを向こうの民家のひとつに発射する。閃光と共に、轟音を立てて爆発。後ろで悲鳴が起きる。クックック。

 そして、後に残ったのはクレーターだけだった。民家は炭すら残らず燃え尽きてしまっていた。

 俺はもう一度振り返って言う。

「俺の言う通りにするのか、しないのか。答えろ!」

 皆が平伏した。よし、土民相手には、これがやっぱり手っ取り早いわな。

「勇者様っ、お見事ですわっ」

 姫様が興奮して言う。フフフ、俺に惚れんじゃねえぞ。プロテインはアワワワとしている。村長は……宇宙と電波で交信しているな。

 ちょっとやりすぎたか?

 まあ、いいや。

 俺はプロテインに命令して、村人達を1列に並べさせる。そして、ひとりずつ手で触れて、ステータスを確認していく。面倒臭いが、真面目にやる。強さが俺のアイデンティティだからな。

 村人達は怯えて逆らう様子もない。可愛い子がいたら、手が滑った振りをして、胸を触ったりして。あからさまにやってしまうと、姫様が止めるので、やり過ぎないように、やる。

 しかしまあ予想してたが、ろくなスキルがないな。農作業スキルばっかりだ。戦闘用スキルなんて、まるでない。あっても素人剣術スキルとか訳の分からないスキルしかない。

 で、最後のひとり。チビデブの男の子だ。うん?こいつは目が死んでないな。

 俺は男の子のスキルを調べる。農作業スキルだ。しかも、低レベル。こいつは約立たずだな。なのに、なんでかビクビクしながらも、俺を睨みつけている。

 俺は言う。

「おい、なんか言いたいことでもあんのか?」

 男の子がブルブルと震えながら、言った。

「あの家は、俺の家だ」

「ん?」

「魔法で燃やした家だ」

 なに?ああ、さっき俺が燃やした家か。そうかそうか、そりゃ俺が悪いわな。ごめんごめん。

「姫様、こいつに金をやって。俺、こいつの家燃やしちまったからさ」

「はい、分かりました」

「よし、これでいいな」

 俺が笑いかけると、それでも男の子は俺を睨みつけてきた。そして、言う。

「母さんの形見が、家の中にあったのに」

 ふーん。

 で、俺にどうしろってんだろうな。燃やしたもん元に戻せって言っても、そりゃ無理だって。

 あっ、そうだ。

「なあ、ガキ」

「な、なんだよ」

「名前を言え」

「ロック」

「よし、ロック。お前さんの農作業スキル、私に下さいな」

「農作業?スキ……なに?」

「お前の農作業スキルを、俺によこせって言ってんの。これは嫌がらせ。農民のお前が、今後農作業できなくするために。わかる?分かったら、ハイって言えや、コラ」

「まあまあ、勇者様」

 ここで姫様が割って入ってきた。

「こんな農民の子供ごとき、相手にしてはいけません。それに、勇者様程の武の者が、たとえ低レベルであっても農作業スキルなど持っていては、その誉れが汚れてしまいます」

 姫様がさらに言う。

「プロテイン、来なさい」

「はっ!」

「この農民を、連れていきなさい。勇者様にご無礼を働いた不届き者よ。そうね、とりあえず牢にでも放り込みなさい」

「分かりました」

 プロテインに連れられていく男の子をぼんやり見送る。

 ふーん。まだこっちを睨みつけてら。くっくっく。

 俺は言う。

「なあ、村長」

「は、はいっ」

「そんな怯えんなって。ねえ、ろくなスキルが無かったんだけど、他に人間はいないの?嘘ついたら、怒るよ」

「いえ、あの、もうひとりいるのはいるのですが、その……」

「へえ。連れてってよ。そいつのところに」

「はい。しかし、その男は非常にうたぐりぶかいというか、性格が曲がっているというか」

「だから、連れてってよ」

「わ、分かりました。ただし、もしその者がご無礼など致しましたら、その者に厳罰を与えます。なので、どうか他の者に危害を与えたりはしないでください」

「オッケー。分かった」

 俺と王女は村長について行く。

 小さな小屋にたどりつく。

「ここが、その男の家です」

 俺はドアを開けて中に入る。

 なんか臭い。

 部屋の中に居た中年のオッサンを見る。うわあ、こりゃアカン。下から上目遣い。なんかムカってくる。

 怯えた男が言う。

「あなたは?」

「俺?まあ、いいじゃないか、そんなこと」

 俺は言って、男の肩に触れる。

 おっ。農作業スキルの他に、何だこれ、盗み聞きスキルと読心(小)スキルってのがある。

 もしかしてこいつ、レアキャラなんじゃないのか。さんざん人のステータス見てきたけどさ、今までこんなスキル見たことないぞ。村長からはひどい言われようだったけど、生まれつき人と違う能力を持った、大した奴じゃないか。

 驚きながら思わず男の顔を凝視すると、男はにかっと笑った。

 へえ、俺の今の気持ちが分かったんだろうな。読心(小)スキルのせいだろうな。すげえな、あんた。

「なあ、オッサン」

「何ですか?」

「名前は何だ」

「ウルフガングです」

「そうか。俺は勇者なんだ。魔王を倒す旅をしている。あんたのスキル、俺にちょうだいよ。魔王を倒すのに力を貸してくれ。金なら出すからさ」

「うん?分かった」

 分かってねえだろな。まあ、良いか。

 さあ、貰うぞ。貰ったらもう返さないからな。つうか、返せねえんだ。

 俺はウルフガングの肩に触れる。そして、念じる。ウルフガングの体からエネルギーがオレに入り込んできた。素直なエネルギーの動きだ。全然ひねくれてなんていないじゃないか。

「ふう、終わった」

 俺がため息を付くと、姫様が聞いてくる。

「勇者様、どんなスキルを手に入れたのですか」

「ああ、読……」

 答えようとして、やめた。やべえ、俺。こんなの、人様に言えるスキルじゃねえからな。

「どく、ですか」

「読書スキル。読書した際の、本の内容の把握能力が上がるみたい。座学の修行に役立つスキルだ」

「それはすごいですね。初めて名を聞くスキルです。レアスキルですね」

「ああ」

 俺はキョトンとしている男ウルフガングを一瞥して、姫様に言う。

「こいつに金をやってくれ。こいつのおかげで、魔王討伐にまた一歩近づいた」

「はい、勇者様」

「ここは臭い。俺は外で待っている」

 俺はひとり先に小屋の外に出て、空を見上げる。入道雲が俺を見下ろしている。雲は元の世界もこの世界も同じだ。

 小屋のなかから、姫様の小さな声が聞こえてきた。おっ。盗み聞きスキル発動だな。うひひ、楽しいなあ。

「体に不調はないですか」

「うん。全然大丈夫です」

「そうですか…ウルフガング殿、スキルを奪ってしまい、まことに申し訳ございません。村長殿、お金でなんとかなるものでもないでしょうが、ウルフガング殿や、先程の少年への償いのため、王家ができる限りのことをさせて頂きます。そして、彼をどうか憎まないでください。彼の罪は、私の罪なのです。彼の日常を奪い、戦いを宿命づけた、私の罪なのです」

 ええと、なんだっけ。

 今の、あれ?

 うん。あれあれあれあれ。

 ええと、なんだっけな。

 そう。

 俺はあれだ、盗み聞きスキルを使ったんだよな。で、なんだ?

 俺の未来の嫁が懺悔していたと。

 んなアホな。

 おいっ。このスキルはなんなんだ。盗み聞きスキルって、ポンコツスキルじゃねえのか。姫様が俺について、んなこと言うわけねえだろ。

 あれか、偽物の強迫観念が発生的なスキルか。

 きっとそうだろ。現実にない訳の分からん言葉が聞こえてくるスキルだ。そうに違いない。

 俺が混乱していると、おっ、向こうからプロテインが走ってきた。

 俺を見てにかっと笑う。サワヤカー。うーん、癒されるわあ。

 今後名前は、プロテインはやめてハチ公に変更しよう。もちろん忠犬ハチ公のハチ公な。いや、四文字は長いから、もうポチでいっか。同じ犬だもんな。

 ……あれ?

 ええと、なんだ?

 ポチの感情が伝わってくる。

 読心(小)スキルだよな、これ。

 ポチの感情は、怒りと軽蔑。あれ?俺に向けられてる?んなわけ、ねえよな。いや、やっぱさ、俺に向けられてる?

 あれー?

 うーん、やっぱ、あれだろ。

 ……やっぱウルフガングのは、ポンコツスキルなんかな。読心(小)スキルも盗み聞きスキルも。

 だってさ、そもそもこの脳みそまで筋肉のポチが、感情と表情が別なんて、ありえんでしょうよ。

 ねえ?

「勇者様、お疲れ様ッス」

「お、おう。お前もお疲れさん」

「有難う御座いまッス。先程の少年は、牢屋に入れておきました」

「そ、そうか。お疲れー」

 ポチの肩を叩く。

 ポチからは嫌悪の感情が吹き上がる。あれれ?

 そして、喉の奥から「シネ」と言う音。

 ええと。

 ……あ、あれー?

 ポチがにこやかに言う。

「勇者様は、今からどちらへ?」

「ぼ、僕ですか?村長さんのお家でひと休みしようかなー、なんて」

「そうですか。甘いものでも用意させますので」

「そ、そう?すいませんね」

「はい。では、姫様にも報告致しますので、ここで一旦失礼を」

 ポチはウルフガングの家の中に入っていく。

 やがて、盗み聞きスキルで、姫様とポチの声が聞こえてくる。

「ジョセフィン、お疲れ様です」

「ハハッ。姫様、表に勇者がいます。小声でお願いします」

「分かりました。では、報告をお願いします」

「はい。先程の少年は、充分に因果を含めて、牢に入って貰いました」

「そうですか。あの少年には悪い事をしてしまいました。お母様の形見が、まさかあんなことになってしまうなんて。なぜもっと早くに彼を止めることが出来なかったのか。反省しても、しきれません」

「姫様は悪くありません。悪いのは、あの男です」

「ジョセフィン、悪いのは私です。彼は悪くありません。彼が望んでこの世界に来たわけでないのです。私が勝手に彼を呼び出したのです」

「しかし、あの男には、人として欠けているものがあります」

「たしかに、その通りです。しかし、今となっては、もはや……」

「ああ、おいたわしや。姫様」

「いえ、それよりもあの少年はどうしましょう」

「独断で、王都の騎士団に来るよう、声をかけておきました。申し訳ございません」

「良いのですか?」

「親父……いえ、騎士団長には、事情をきちんと伝えておきます。それに、あの少年のあの勇気。勇者に正面から立ち向かいました。俺もあの子のようになれたら……」

「ジョセフィン、世界の未来がかかっているのです」

「はい。心得ております。戦う内容は人それぞれですから。私は私の戦いを続けます。しかしまあ、私も胸を張って、騎士団長にあの子を渡せますよ」

「ありがとうございます。あの子も、あなたのような真の騎士となれるよう、祈りを捧げます」

 なんか、晴れやかな感情が伝わってくるな。

 で、えーと。

 ……。

 ……。

 ……。

 いかん、頭が働かんわ。

 とりあえず村長の家に行くか。


 うーん、あれだな。

 落ち着いたら分かってきた。

 このスキル、本物だ。ポンコツなんかじゃない。

 そりゃ、ウルフガングも性格ゆがむわ。こんなスキル。渡る世間は鬼だらけだもんだなあ。人の心に対してなんて、鈍感なくらいがちょうど良いんだって。

 でさ、みんな、嘘ついてたんだな。俺のこと嫌いなのに、好きなふりしてたんだな。

 ……まあ、当たり前か。

 俺がやってる事って、多分八つ当たりだ。

 客観的に見て、俺がやられてつらかった事を、人にやってる状態だもんな。

 んで、分かってやってたしな。俺には誰も逆らえないって。

 そう、皆、逆らえない。俺は勇者と言う魔王を倒す切り札だし、姫様の顔に泥を塗るわけにもいかない。

 つまり、そういう事なんだ。

 でも、ここまで憎まれることをしていたと思ってなかったなあ。

 部屋の外からは、人々の、俺に対する恐怖の感情が伝わってくる。俺は魔王かっ!って言いたくなる。

 ならさ、お前らが勝手に魔王を倒せよ。勝手に俺を呼び出したりすんなよ。勝手に呼び出して、押し付けんなよ。……とかさ、言ったりはしねえよなあ。チートがコレ、結構悪くねえんだわ。俺みたいなやつにはさ、劣等感がさ、スカッてなるんだ。恵まれてるやつにはこの感情はわからんだろうなあ。

 で、だ。

 これからどうすっかな。

 だってさ、いまさら、ねえ?

 おっ。

 嫌悪の感情とともに、あいつの気配。

 ああ、きっついのかなあ。これからこのスキルと付き合ってくんか。まあ、いっか。俺にはだれも勝てねえし。むしろ、裏切りを許さねえすげえスキルって考えるべきだろう。

「勇者様、ただ今戻りました」

 ポチの声。

 ああっ。なんか楽しくなってきた。

 しばらくは秘密にしよう。

 んで、しばらくしてから、ウルフガングから奪ったスキルの説明をしてあげよう。

 そしたらこいつら、どんな顔するんだろ。

 いかんいかん、笑いを堪えて。

 俺は言う。

「ポチ、とりあえず俺の足を舐めろ」



 なんか、アカンですなあ。小悪党なんだよなあ。

 もっとスカッとした悪じゃないとな。なんつーか、世紀末的にグワッハッハな感じにさ。これじゃ読者に嫌われるキャラというより、読者に無意味に嫌悪感を感じさせているキャラな気がします。


 と言うことで、トゥービーコンティニュード!


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