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TRPGリプレイ小説 「国境を越えて」  作者: えにさん
第二章 美貌の盗賊 【ディス】
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2-3 ライバルを見つけ出せ

 街を出てから三日で山岳地帯に入る。獣道みたいな狭い道を切り開くようにして馬車を通していく。当然その進みは遅くなっていった。

 その中で驚かせてくれたのはコーディだった。彼の腕力は規格外。少なくとも同等以上の筋力がある人をアタシは知らない。馬と力比べをしても勝てそうな気がする。

 こいつが馬鹿で良かった。・・・まてよ。もしかして馬鹿な振りをしているとか。そうやって油断させておいてターゲットを奪うとか? 逆にしっかり護衛されても困っちゃうかも。ちょっと探ってみるか。


「コーディさんは凄い力持ちですよねー。どうやって鍛えたんですか?」


「おらぁ、元からこんな感じだで。たいしたことねぇっす」


「アタシ噂で聞いたんですけど、この辺りはモンスターが出るって本当ですかぁ」


「おおさ。もちろん知っているっす。そういうのが無いと護衛の意味ねぇもんなぁ。どんなのが出るか楽しみっす」


「わぁー。頼りになるぅ。出たときはアタシとか護って貰えます?」


「おやすいご用でさぁ。何がでようがあっしに任せて貰えれば問題ねぇっす」


「おいおい、俺たちも護衛として雇われたんだろうが」


 横からカイロウが口を出す。


「でもさぁ、こう言うときって強い人が頑張るの基本でしょ。リリーだってそう思ったりしない?」


「んー、よくわかんない。わたしはなんかでてきたら戦うつもり」


「その為に雇われたんだから仕方が無いだろう。あとは状況次第だ」


「だよなぁ。マジに強い魔物がでてきたら、俺ぁ逃げさせてもらうぜ」


「ちょっと、さっきと言っていることが違うじゃん」


「わりぃな。俺ぁ護衛じゃ無くて、道案内。なんで護衛よろしく」


「みんなあれっすね。あっしはモンスターと戦かえると思ってワクワクしてんのに」


 やっぱコーディは掴めない性格だわ。けど状況的に最後まで残りそう。戦闘を任せて分断するとかもありかなぁ。

 それにしてもやっぱりこの人数が問題よ。手が出しにくいったらありゃしない。ディオンは負傷者の具合によってはおいていくとも言っていたし、少し数減らないかなぁ。頑張れ水の牙。君たちの仕事っぷりに期待しよう。やり過ぎない程度に頑張るのだ。


 出発してから六日目。何事も起きないままに日数が経過していった。今は山間の狭い小道をノロノロと進んでいる。ロケーション的にいつ水の牙が来てもおかしくない。みんな崖の上からの奇襲を警戒している。


「右側上方に気配。確認します」


 最後方にいたリーブが叫んだ。彼とクーナは応戦のため弓を構える。アタシはというとその気配に速くから気がついていたけど、もちろん判らないふり。キョロキョロと辺りを見渡してみる。

 攻め手の数は五人。たぶん水の牙だと思う。けど聞いていたよりずいぶん少ないなぁ。まずは様子見って事なのかしら。アタシなら最初に最大戦力をぶつけるのに。この程度の攻撃じゃぁターゲットに手を出すスキなんか出来ないんだけど・・・。とりあえず次回に期待しよう。


 そうこうしているうちに、複数の矢が降りかかってきた。馬めがけて放たれた矢はディオンが盾と剣で見事に迎撃する。

 襲撃は進行方向右側の崖から行われている。それを察したイェルムがリリーの手を引いて攻撃の死角になるポイントへ移動していた。

 意外だったのはカイロウ。頭を抱えるようにして馬車から離れていく。コイツ、マジで逃げてやがる。それからコーディ、ウロウロしながら何かを探している。


「この場所で戦うのは分が悪い。頭上に注意しつつ前進する。この先に少し開けた場所がある。そこで迎え撃とう」


 ディオンが指示を出した。前衛組がバラバラに行動したため馬の側にいるのはアタシだけになっていた。アタシも逃げ回るって事を考えたけど、それじゃぁ余りに無能に見えちゃうし。しょうがない、アタシが引くか。

 けど、戦闘時の殺気にビビっているのか馬がなかなか言うことを聞かない。あ、でもこれって使えるかも。このまま移動を遅らせれば負傷者が出るはず。


「僕たちがしんがりをつとめます。皆さんは先に行ってください」


 また、リーブの声が聞こえてきた。よしよし応戦するんだ。敵の気を引いて狙われろ。ついでに負傷してくれるともっとありがたい。


「なんか練習通りに矢が飛ばないよ」


「いいから、俺が射る。避ける方に専念するんだ」


「わかった。でも私も射るー」


 遅まきながらリリーとイェルムも反撃を開始する。弓の扱いは二人とも上手く無い。攻め手は少ないけどトータル的にはこっちが不利。でも対処可能なレベル。

 水の牙も一回の攻撃だけで勝てると思っていないんだろう。断続的な攻撃を繰り返してこっちを消耗させ、それから襲ってくる。弱いなりに考えてるじゃん。

 それならアタシは戦闘を長引かせて疲労を誘う。周りの連中に気づかれないよう注意しながら馬に嫌がらせをする。馬車の移動を遅らせるためだ。

 そしてこの作戦は上手くいくと思われた。


「せーのぉ。どっせーい」


 ブォン。ゴガガン。「ぬがっ!」 ガラガラガラ。ドドーン。


 コーディが叫んだ。よく見ていなかったけど、何かを投げたみたい。崖の一部を壊し、後ろに隠れていた水の牙の一人を直撃する。


 ちょっと待て。崖を壊すとか威力ありすぎでしょ。コーディの様子を伺うと、またキョロキョロしている。そっか、落ちている石の大きさと堅さを確かめているんだ。つまり投げたのは石って事? 石って言うより岩って気もするけど。

 あらら、水の牙逃げ出したよ。だよねー。あれは反則だってば。破城鎚見たいな威力だもん。狙いも正確みたいだし、まともに戦う気はしないよ。


「コーディさん強いっ! 流石ですぅ」


「こんなの全然。まだまだ物足りねぇっす」


 はぁぁ。これでまだまだとか言うんだ。この強さは想定外だよ。ちょっと自信なくなってきた。これは一筋縄じゃ行かないかも。でもある意味やる気出てきた。見てろよ絶対依頼を成功させてやるからね。


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