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TRPGリプレイ小説 「国境を越えて」  作者: えにさん
第二章 美貌の盗賊 【ディス】
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2-1 依頼

「で、どんな依頼なの?」


「実は君で良いのかどうか非常に迷っている」


「なによそれ。私じゃ頼りないって事?」


「そうじゃない。しかし一人で事をなすには難しい。そう考えていた」


「なら、他にも誰か頼めばいいじゃん」


「いろいろ検討したがそうも行かないんだ。それに時間が無い」


「そうなの? まぁ何やるか判んないけど、あたしに任せておけば心配ないって。つまりそう言うことよ」


 依頼の内容はこうだ。どうやってか知らないけど王国の秘宝の一つ。聖剣ヴェンディダードが盗まれた。で、それを取り返すのが目的。あ、取り返すって聞かされたけど、それが本当かどうかは怪しい。盗まれた奴をさらに盗んじゃおうって可能性もある。盗賊ギルドってそういうところだもん。アタシからすればそんなのどっちだっていい。やることは一緒。もちろん報酬も一緒。


 さて、まずは情報収集から。始めよう。

 正確な位置がつかめていないけど、そう言った貴重品を捌けるのはそんなに方法があるわけじゃない。だからいくつかのポイントを押さえて情報を集めれば足取りをつかむことが出来る。


 調査結果によると聖剣奪取を仕掛けたのは隣国のヴィセア帝国。そしてそれをサウザランドから持ち出そうとするなら正規の方法は使われない。密輸できるルートはいくつかあるが、今回の場合、東の山脈越えのルートを通過するとアタシは結論づけた。

 そう言った秘密のルートを使用する場合、それを使用できる商人を当たればいい。ギルドの網に掛かったのはテルドットという商人。そして彼は予想通り荷運びを行う冒険者を探しているようだ。


 さらに調べてみると、密輸ルートのそばに水の牙と呼ばれる山賊集団がいることが判る。正式なギルド所属では無いが、いくつかのコネを使って彼らとコンタクトをとることが出来た。 


 そうそう、紹介が遅れちゃったけど、アタシの名前はディス。盗賊ギルド所属の天才美少女。美しい上にこれだけの能力があるのは、まぁアタシぐらいしかいないかな。

 長い金髪のポニーテール。空色の大きな瞳は誰もが目を引くチャムポイントだ。身長は低めで152センチ。体重は秘密。服装はまぁ、盗賊なんで抑えめ。アクセサリーも持っているけど、仕事の間は外してる。この商売をやっていて目立つって言うのもあれだからね。それでもアタシのこの愛らしさっていうのは隠しきれない。うーん。美人で損する職業って有るんだなあ。


 もちろん必要に応じて着飾るときだってある。そういうときは誰もが振り返るお嬢様にも簡単になれちゃう。まぁ、そんな機会、滅多に無いんだけどね。

 ありとあらゆる物陰に身を隠し、獲物に近づき、そして静かにお宝を手にする。誰一人気がつかないうちに全てを終わらせる。これ全部天才であるアタシであるから出来ることなのよ。


 盗賊ギルドって言うのは、盗みを中心とした裏稼業の元締めみたいな所。鍵開けとか隠密なんかの技術を教えたりもする。ギルド所属のメンバーは、大きく二つに分かれる。直接盗みをしたりする奴と、盗賊の技術を利用して冒険者に所属する奴。どっちも稼ぎの一部をギルドに献上するのは一緒。ギルド所属がバレたとき刑の重さが違うくらいかな。


 でもまぁ、この手の裏稼業もそれがなくては立ちゆかないのが政治ってやつっぽい。需要も沢山あるから、ギルドが潰れたりすることは無いんだよね。

 ちなみにアタシは、盗みを中心に活動している。警備が厳重なところに忍び込んで、見つからないように隠れているときのあの緊張感。あれはたまんないよね。アタシの実力に付いてこられるような奴もいないから、基本はソロで活動している。


 そんなわけだから、今回の依頼は確かにアタシ向きじゃ無い。見つからないように近づいて、スッと獲物を持ってくるのが普段のやり方なんだけど。今回はそれが難しい。いつも見たいなレベルの低い警備員が相手じゃ無くて、実力のある冒険者が相手なのだ。移動ルートが山道って言うのも難易度を上げてくる。まともな方法じゃぁ目的の達成は難しいんじゃないかなぁ。


 そんなわけで色々考えたアタシが最初にやったのは、水の牙に情報を流すことだった。何が運ばれているかは明確にせず、密輸の時期を教えてやった。彼らはこういう美味しい話には必ず乗ってくる。襲撃を隠れ蓑にして獲物を頂こうというのが今回の作戦だ。もちろん、情報を流すに当たってはアタシの名前が出ないようにしてある。

 仮に水の牙が失敗して捕まったとしても、アタシと彼らを結びつける証拠は残らない。こういう所に抜かりは無かった。


 下準備が終わったところで、テルドットの募集に参加する。盗賊ギルド系の冒険者であることを無理に隠す必要は無い。冒険者という奴は金になるなら何でもするものだ。下手に色々隠す方が怪しまれてしまう。


 とりあえず、リーダーとの初顔合わせ。最初から疑いの目を思いっきり向けられた。けどこれは仕方ないかなぁ。おそらくアタシ以外にもそう言う目を向けているんだと思う。なにせ、運ぶ荷物があれだもの。そう言う意味では競争率、高そうね。


「こんにちはぁ。ディスっていいます。よろしくぅ」


「今回の依頼においてリーダーをつとめるディオンと言う。こちらこそよろしく」


「ディオンさんですか。女同士仲良くやりましょう。楽しい旅になるといいですね」


 さわやかな笑顔で話を進めて見たけど、相手が女なのはちょっとマイナス。男があいてならこの笑顔で油断させるのも簡単なんだけど。かえって怪しまれちゃったかも。ま、どう思おうと関係ないんだけどね。


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