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TRPGリプレイ小説 「国境を越えて」  作者: えにさん
最終章 盗賊か冒険者か 【イェルム】
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8-6 国境を越えて

 生き残った俺達は、すぐに何か行動するだけの気力は無くなっていた。疲れ果てた体を癒やすために今日はこのままここでキャンプをすることにする。

 リリーもクーナも放心していてまともに動ける状況にはない。他に動ける者がいない以上俺が頑張るしかない。重い体に鞭打って準備を行う。

 一番の心配は山賊の襲撃だが、今俺達を襲っても得るものが少ないし、荷物は岸の向こう側。下手に戦うぐらいならそれを持っていく方が得策。普通ならそう考える。是非ともそう願いたい。


 次の日、俺は気持ちの落ち着いてきた二人に対して今後について相談した。

 リリーは簡単だ。持ち前の脳天気さですでに回復してきている。いや、無理しているのは判るが、本人が明るくなろうと頑張っているんだ。もちろんそれを指摘する必要は無い。

 一方でクーナの方は重傷。肉体的ダメージは殆ど無いが、精神的にキツいのだろう。まぁ、恋人を失ったんだ。仕方ないよな。


 その日の作業は主に肉体労働。ここも俺が頑張るしかない。

 キースとリーブ二つの遺体を道から少し外れた場所に持って行き墓を作る。そしてもう一つ。誰も入っていない墓も作った。その墓にはクーナの持っていた剣を突き立てる。

 クーナは自分の髪を首の後ろでバッサリと切ると、それをリーブの上にそっとおいた。彼女なりのケジメと言うことか。イロイロ思うところがあるのだろうが、深く詮索するべきじゃない。ここは好きにさせてやるべき。

 それを見たリリーも真似しようとするが、元々ショートカットのリリーでは微妙な長さしか切り取れない。でも努力は評価してやる。

 そうして二つの遺体に別れを告げると三人で土をかぶせていった。そして出来上がった三つの墓。

 ちなみに墓の一つはクーナがここで死んだと思わせる偽装。誰かに聞かれることがあれば、戦闘によってクーナは谷底に落ちたと告げるつもりだ。こうすることによってキースが任務には成功したと思わせるためである。生きていると知られれば何度でも暗殺者はやってくると聞いた。それを防ぐための手段なのだ。

 簡単な偽装ではあるが何もしないよりはまし。さらにクーナにはヴィセアに渡ったあと暫く身を潜めるよう言ってある。そうすればクーナが死んだことに信憑性が増す。ずっと追われるような生活をするより良いだろう。

 最も今回の件もあって彼女にはやりたいことが出来たようだ。遠くない未来にサウザランドへ戻ってきて行動を起こすと言っていた。もちろんそれは彼女の自由だし、それに俺達が関わるつもりも無い。

 そして肝心の俺達だが、やはりヴィセアに行くことにした。

 暗殺者であるキースの事を知っているというのはやはり危険な気がする。その追っ手を少しでも遠ざけるにはヴィセアの方が良いと判断したからだ。


 俺は手持ちの材料を使って反対岸にロープを渡す。一本ロープで橋と言うにはおこがましいが、岸を渡ることは可能だ。

 渡りきった後はそのロープをもちろん回収する。墓がある以上誰かが生きて作ったという所までは判る。しかしその後どちらに向かったのか、それが判るような物を置いていくのは得策と言えなかった。

 反対岸にたどり着いた俺は、状況確認を行う。こちら側で何があったかは判らない。だけど激しい戦いがあったことが確認出来た。熱で溶けたように見える大穴とか、いったいどんなことがあったんだか。正直想像もしたくない。

 俺達にとって運が良かったのは、バラバラになった馬車周辺にその荷物が散らばっていたことだ。目的が何だったのかは判らないが、特定の品物だけ持って行ったと思われる。俺からすれば高価な品々がそこかしこに散らばっていた。その中から運びやすくて金目の物を選別し頂戴する。山賊が来ていなかったことも運が良かったかも知れない。

 一通り物色を済ませると、俺達はヴィセアに向けて歩き出した。もちろん途中から適当な方向に向かって道を外れる。このまま道なりに行っても任務失敗を報告することになるし、その場合何かの賠償とか言われてもどうにもならない。だったらこのままバックレルのが得策と考えた。

 リリーがいるから野外において不自由することは殆ど無い。そのうちヴィセアの街のどこかにたどり着けるだろう。


 そこから先は、まぁ、その時考えるさ。

 クーナとはそこで別れることになるだろう。リリーはどう考えているのか? たぶん何も考えていない。細かいことは俺に任せるつもりなのだ。

 改めて冒険者を目指すも良いし、いっそ村人に溶け込むのもありかも知れない。その場合は場所を慎重に選ぶ必要はありそうだ。

 頂いた戦利品があるから当面の金に心配は無い。金さえあればイロイロとやれることはある。

 えっ? 荷物を盗んで心が痛まないのかって? 何を言ってやがる。


 俺は盗賊だぜ。




ACROSS THE BORDER


流れの盗賊イェルム


体力 8/技術 9/知力 7/運 8


 スラム街に産まれ誰の子とも解らずに生きてきた。生きていく為に盗みを覚え、暴力を覚えた。集団で行動するのが苦手で、単独行動が多い。

 人との挨拶は財布をすること。人との別れは金の切れ目をモットーに生きてきた。

 ある町で少女の冒険者に出会う。彼女は幼い頃に両親を失い、それでもなお元気に生きている。自分にどことなく似た生い立ちを持つ彼女が何となく気になった。以後旅を共にするようになる。彼女は自分をまるで兄のように慕っている。


○特記事項


 盗賊としての特技として次のようなことが出来る

 1.早業:一つの手業を常人には関知できないスピードで行うことが出来る。

 2.アクロバット:ジャンプに置いてかなりの自由度を持つ。

3.視力:どこに大事な物を持っているか外見から知ることが出来る。

     上記はマスターに宣言すればOK。判定はマスターが行う。


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