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TRPGリプレイ小説 「国境を越えて」  作者: えにさん
第一章 傭兵戦士 【ディオン】
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1-3 最初の戦い

 各々の準備が整い、すぐに出発となる。今回の仕事において、最も重要なことは迅速かつ確実に目的地まで荷物を運ぶことだ。

 その為、場合によっては負傷者をその場において先に進むことも検討してある。当然メンバーにも伝えておいた。


 街から三日で山道に入り、その後は山間の細い道を移動することになる。荷馬車を馬が引いているが、所々人力の補助が必要になる場所もあった。

 なお荷馬車は小型で人も乗れないが、荷物は簡単に取り出せないよう厳重に封が成されていた。


 隣国へ行くには険しい山脈を越える必要があるが、人だけで移動するならいくつかの方法がある。

 しかし荷物を運ぶとなると限られたいくつかの道しか無かった。今回のルートもその一つだ。

 私自身は過去に一度だけ通ったことがある。他にはカイロウが道を知っている。今回の運び手に彼が選ばれたのはそれが理由だ。


 大きな問題も起きずに山道にたどり着く。ここからは今までと違って移動速度が極端に落ちていく。

 荷馬車が通れるように、伸びた枝を切り落としたり、地面の凹凸を除去したり。

 しかしこれについては、コーディのおかげでかなり楽が出来た。彼の腕力は馬なみにあり、瞬間的ならば馬車を持ち上げることが出来た。他者の補助があれば狭い場所をなんとか通す事が出来たのだ。



 そうこうしているうちに出発してから約六日が経過した。その旅の中で私は注意するべき対象を絞っていく。

 一番はカイロウ。その次がディス。二人の危険度は非常に高いと考えていた。


 現在の隊列は、先頭が道案内のカイロウ。その後ろにコーディとディス。馬引きとしてリリーとイェルム、荷馬車の後ろに私。その背後にキース。しんがりがクーナとリーブという隊列になっている。


 やがて経路の中で、危険と思われる地点に到着する。左右が岩壁に挟まれる谷間の狭い道で、視界も悪い。山賊が襲ってくるならこの辺りだろうと踏んでいた場所だ。

 さらにしばらく言ったところには簡易的な吊り橋があり、そこを通らずに渓谷を抜けるのは難しい。

 吊り橋を渡り半日も進めば隣国の国境内になり、そこまで行けば任務は成功したも同じだろう。



 谷間の道は昼間でも日が差し込まず薄暗い。そんな中、最初に気がついたのはリーブだった。


「右壁上方に気配。確認します」


 言うが速いか、リーブは弓を取り出しつつ隊列から外れる。それに従うようにクーナも弓を構える。

 各々が戦闘準備を進める中、頭上から複数の矢が降りかかってきた。その矢は馬めがけて放たれたようだ。

 私は素早く馬の前に立ち、矢から馬を守る。

 横目で見ると、イェルムがリリーをかばいつつ馬から離れていた。


「この場所で戦うのは分が悪い。頭上に注意しつつ前進する。この先に少し開けた場所がある。そこで迎え撃とう」


 私の言葉に最初に反応したのはディスだった。彼女は馬の手綱を持つと急ぎ足で移動を始める。

 それを見て、やはりそうか。と考えたが、今はそれを言うべき時では無い。彼女に手綱を持たせるのは微妙だが、馬からはなれずに行動していれば対処は可能。



 攻め手の人数は想定よりかなり少ないようだ。おそらくは五人。情報が確かなら残り十五人が伏兵として隠れていることになる。おそらくこの先にある吊り橋付近に伏せてあるのだろう。

 しかし、そうであったとしても対処しきれる自信が私にはあった。


「僕たちがしんがりをつとめます。皆さんは先に行ってください」


「リーブ。この角度と距離ではこっちの弓は当たらないわ」


「それは判っているよクーナ。しかし相手が好きに射かけられないよう、多少の反撃が必要なんだ。大丈夫。向こうも射角が悪いし人数も少ない。焦らず対処すればなんとかなる」


 確かにリーブの言うことは間違っていない。その言葉に反応してかイェルムとリリーも弓を射かける。


「なんか練習通りに矢が飛ばないよ」


「いいから、俺が射る。避ける方に専念するんだ」


「わかった。でも私も射るー」


 なんかのんき二人だな。この不利な状況が判っていないのか。

 それと一応全員に弓を用意したはずだが、キースはそれを使う様子を見せない。壁を背にして相手の射角に入らないよう行動している。その行動に違和感を感じたが、馬車を伺う感じでは無い。どういうことだろうか。それとも単に飛び道具が苦手なだけなのか?

 ちなみにディスは馬車を引いて先へと向かっている。馬が混乱しているため進みは遅い。


 地形的不利もあるのだが、弓による射撃戦はこちらが不利。無理に戦うよりも被害を押さえて先を急ぐべきと考える。

 リーブとクーナに任せて前進したいところだが、今彼らから離れること避けたい。そう考えていたときである。


「せーのぉ。どっせーい」


 ブォン。ゴガガン。「ぬがっ!」 ガラガラガラ。ドドーン。


 大きなかけ声と共に、コーディが近くにあった岩を投げた。赤子の頭ほどもある大きさで、決して軽い物では無い。

 恐ろしい速さで飛んでいったそれは崖の一部を破壊し、隠れていた山賊に直撃する。いや、たぶん当たったと思う。そしておそらく行動できないくらいのダメージを受けたはずだ。

 普通じゃ無いと思っていたがこれは想像以上だ。彼に弓の必要は無かったな。というか、使ってないし。


 そして、この投石攻撃は山賊を怯ませるに十分だった。彼らは身の危険を感じ、逃げ去っていく。

 うーん、結果論だが山賊相手なら、私とコーディの二人がいれば十分だったかもしれない。


 そして改めてコーディの戦闘力を計算しなおす。あのパワーはやっかいだが、それでも私の剣の方が少し上だろう。遠距離で投石を続けられるとやっかいだが、剣の間合いまで入れれば一対一ならなんとかなる。

 問題はコーディが誰かと組んでいた場合。これはやっかいなことになる。私の中でリーブ、クーナ、二人の重要性が増していった。


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