3-1 俺は怪力男
「あっしがいればもう旅は成功したようなもんだすよ。安心してくだせぇ。あ、考えるのは苦手なんで、その辺わ任せるっす」
「その見かけが伊達じゃ無いって事を証明してほしい」
「がははは。あっしは村一番の怪力だっていわれてたっす。すげぇっしょ」
あっしは怪力無双のコーディ。身長2メートルちょい。体重は120キロ。そして、見てくだせぇこの上腕二頭筋。厚い胸板。いくつにも割れた腹筋。これさえあれば向かうところ敵無しなんだべさ。アタマはツルツルだけど、それだってこの体に似合っていると思うべ。
あっしは今まで、腕試し代わりにいろんなモンスターをやっつけてきた。目的地なんて決めない自由な旅を続けているっす。
あっしにはすげぇ知り合いがいるっす。そいつはいろんな知り合いがいて、いろんな話を知ってんだ。で、時々だけどそいつから連絡があって、そいつの頼みを聞いてやっている。そいつの頼みを聞いてやると面白いことが起きる。強ぇえ奴に出会えたりもする。
仲間だとか、借りがあるとかそう言うのじゃない。ただ面白そうなことに出会えるから手伝ってやるだけなんだ。
今回の依頼もそのすげえ知り合いから頼まれた。もちろん即座に引き受けてやった。面白そうだもんな。
「そいで、あっしは何をすればいいでげす?」
「荷物を運ぶの。それの護衛です」
「おお、つまりなんか来たら全部ぶっとばせばいいっすね」
「あながち間違いとは言わないけれど。まぁ、それでいいわ。私は今回リーダーをやらせていただくディオンと言います。とにかくよろしく」
手を差し出してきたのでブンブン振ってやった。彼女は苦笑いしながら握り替えしてきた。おお、痛いとか言わずに握り替えしてくるなんて、久しぶりだなぁ。こりゃぁ楽しめそうっす。
そんな感じで最初の面接はクリアしたみてぇだ。
すぐに出発するらしいが、こっちは体一つでやってっから、いつでもいけるぜ。ちょっとした食いもんと酒があれば十分。いっちばん強えぇ酒を出すよう頼んでおいた。この街の商店はけっこう良いもんそろってやがる。そう言う意味じゃぁ安心だ。
集合時間まではもう少しあるし、他にもなにか美味いもんが無いか散策してやろう。
で、だ。買い食いしながら今後の方針について少し考えてみた。
知り合いの頼みをこなすのなんて簡単だ。俺がちっと本気を出せばパパッと解決できる。この世に俺に勝てる奴なんざそうはいないからな。
ちなみにこの、怪力無双のコーディって言うのは世を忍ぶ仮の姿。真の正体? そりゃあまだ言えないな。
だいたい普通に考えれば怪力だけで最強なんて言えるわけねぇだろう。いや、まぁすげぇ怪力だからそれだけでも十分強いがね。その気になれば片手で馬車を持ち上げて走ることだって出来るぜ。いや、これ冗談のような本当の話。俺ってすげえだろ。
知り合いからの頼みって言うのは、聖剣ヴェンディダードを手に入れること。でも手に入れられないんなら破壊してもいいらしい。けど、そこは聖剣。そんな簡単に壊せるわけが無い。だから結局はそいつを手に入れて持ち替えるしか無いわけだ。
聖剣ヴェンディダードは、催事に使われるような見た目だけの剣と違ってものすごい力を秘めている。神を宿し剣とはよく言ったもんだ。




