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仕立屋と双子

作者: カルラ


これはとある日の事



「暇だ、暇すぎる――」


アルバイト先である仕立て屋バートンに備え付けてあるデスクにもたれ掛かりながら、神南弥王は「暇」を連呼していた。

弥王の向かい側では神谷璃王がミシンを扱っている。


「おい弥王、煩いぞ?」


あまりにも「暇」を連呼するので、璃王は弥王を睨み付けたのが弥王には効かなかったようだ。


「だってよぉ、レイナもレイラも仕事で出掛けてて、店番は俺と璃王だけなんだぜ?

しかも客は来ねぇし……」


「仕方ねぇだろ……

むしろ客が来なくて俺の方は有り難いんだが?

誰かさんが仕事をサボってる所為で中々数が減らないんだが?」

目でさっさと手伝え、と弥王に訴えたがスルーされた。


「璃王、余所見してたら手を刺すぞ?」


弥王に何を言っても無駄だと理解した璃王であった。


そんな他愛もない会話をしていると、入り口のドアに設置している呼鈴が鳴った。

どうやら誰かが来店したようだ。


「「いらっしゃいませ――」」


2人が入り口を見るとそこには幼い少年少女が立っていた。


頭の上にアクアブルーのリボンを結んでいる蜂蜜色の髪の少女は弥王達に気づくと、丁寧に挨拶をした。


「あ、あの、こんにちは!!

こ、ここはお洋服のところですよね?

間違って変なところに来てませんよね?」


緊張している少女の質問に弥王が優しく答える。


「あぁ、ここは服を仕立てるところだ。

てか、二人で来たのか?

親御さんは?」


「あ、えっと……」

「実は服を作って貰いに来たんだ、親とは一緒に来てないよ」


狼狽える少女の代わりに同じ蜂蜜色の髪の少年が答えた。

その言葉に弥王と璃王は顔を見合わせる。


「ひとつ聞くが、お前たち何歳なんだ?」


「ヒナとウラヌスの歳ですか?

今年で5歳ですよ?」


その事を聞き、弥王は困った表情を浮かべる。


「う〜ん、なるべく保護者と来て欲しかったなぁ」


それを聞いたヒナは残念そうに俯いてしまった。


「僕らは内緒で来たんだ、無理言わないでよ?」


「…………

どうして内緒で来たんだ?」


「……んです」


俯いたままヒナが呟いた。


「ん?」


「ヒナ達はお父さんにプレゼントを渡したかったんです」


「それで話し合った結果、サプライズで渡すことにしたから此処には内緒で来たって訳、理解してよ?」



幼い少年と少女の願い。

叶えてあげたいのは山々なのだが……


「金、持ってきてんのか?」


「お、おいッ!?」


璃王は包み隠さず率直に聞く。


「はいッ!!

いっぱいお手伝いしたのでお金はちゃんとあります」


そう言いながらヒナはワンピースのポケットから財布を取りだし、璃王に見えるように掲げる。


「お、おてつだい?」


「はいです!!

おじいちゃんやおばあちゃんのお家の庭の草むしりをたくさんしたです♪」


生き生きと話していることから、嘘ではないのだろう。

弥王はヒナから財布を受け取り金額を確認する。


「おッ!!

これだけあれば、足りるぞ」


「ホントですか!?

頑張ってお手伝いしたかいがあったです」


まるで花が咲いたような笑顔でヒナは喜ぶ。


「で、どんな服にするんだ?」


璃王のその言葉にヒナの笑顔は凍りつく。


「ど、どうしましょう!?

お金の事ばかり考えてたので、服の事は全然考えてなかったです!!

えっとえっと、えーっと……」


どうやら、服の色から決めていかなければならないようだ。


「そのお父さんって人は普段何色の服を着ているんだ?」


「……

服は着てないよ」


「「へ?」」


ウラヌスの返答に思わず間抜けな声が出た。


服を着ていない、それはつまり……


「お前らの父親は、変質者だったのか」


「ちょっ、おい璃王ッ!?」


再び率直に述べる璃王。

目の前にいるのは、五歳児ですよ璃王さん。


「へ、ん?

何ですか、それ?」


どうやら、ヒナは聞いたことがなかったらしい、瞬きしながら首をかしげる。


ウラヌスはというと、


「プッ……

変質者、ね」





受けていた。

それでいいのか!?、と心の中で弥王は突っ込んでしまう。


「父さんは、変質者なんかじゃないよ、ただボクシングをしてたら暑くなるから上の服を着ていないだけ」


こいつ説明を省いてたのかよ……、内心頭を抱えたくなってしまった弥王。


「お父さんはすごいんですよ!!

この前、右パンチであの赤いヤツに穴を開けたんですよ!!」


父親の事を誇らしげに語るヒナの言葉に、弥王は疑問を抱く。

ボクシングで殴ると言えば……


「右ストレートでサンドバッグに穴開けられるのかよ、お前らの父親はッ!?」


こんな可愛い双子の父親は筋肉マッチョなのか、tk似なくてよかったと弥王は心の中で思ってしまう。


「全くその通りだな……」


「だから、勝手に心ん中を読むなよ、璃王」


どうやら、弥王は璃王に心の中を読まれたらしい。


「ねぇ、いっそのこと父さんの服、肌色でいいんじゃない?」


「ぶっ!?」


ここでまさかのウラヌスの爆弾発言。


「あはははッ!!

服の色が肌色って、俺らは[はだかの王様]に出てくる仕立屋かよ!?

ダメだ、腹痛てぇッ!?

腹筋崩壊する!!」


爆笑しながら、腹部を抑える弥王を見ながら璃王はボソッと呟く。


「あ〜あ、弥王がぶっ壊れちまった……

当分、使いモンにならねぇな」


璃王が酷いことを言った気がするがスルーする方向で。


ウラヌスの提案にヒナは、頬を膨らませ否定する。

「ダメです!!

肌色の服にしたら、服を脱いだとき脱皮したみたいになります!!」


「アハハハ、脱皮ってwww

もうだめ、俺笑いすぎて腹痛てぇ、笑死にしそうww」


ツボに入ったのか、腹部を抱えるだけでは治まらず、弥王はデスクを叩き始めた。

そんな弥王を、憐れみの目で見つめながら璃王は、


(あの机、確かガタが来ててもうすぐ壊れそうだから触るなって、レイナが言ってたヤツだ)


と思いはするが止める気は更々無い。

寧ろ、壊してレイナ達に怒られてしまえ、とか思ってる。

そして、例の双子はというと……


「赤色は?」

「お父さんの髪の色には、赤は似合いません」

「じゃあ、黒」

「微妙です」

「なら、白とかは?」

「それはいつもと同じです」

あれでもない、これでもないと口論している。

これでは、『いたちごっこ』だ。


(……助け船を出してやるか)


横目で、未だに爆笑している弥王を一目すると、璃王は机の引き出しから『ある物』を取り出す。


「ほら、色の早見表だ。この中から選んでみろ」

「はやみひょう?」

「見れば分かる」


2人は璃王から渡された早見表を見つめる。

ふと、ヒナから声が零れた。


「あっ!!」

「ん?

どうかしたか?」


早見表を覗き込みながら璃王は尋ねる。

ヒナは『ある色』を指で指しながら答える。


「この色、お父さんの髪の色とおんなじです」


「ふーん……

お前等の父親の髪って、エメラルドグリーンなのか、てっきりお前等と同じ蜂蜜色だと思ってた」

「ウラヌ「僕もそれがいいと思う」ホントですか!!」


ヒナの問いかけを遮り、ウラヌスは先に答えた。

そして、璃王を見上げながらお願いする。


「あの、この色で服を作って貰えませんか?」





◇ ◇ ◇ ◇




「今日はありがとございました」


出来上がった服の入った袋を両手で抱えながら、ヒナはお辞儀をする。


「気にすんなって、俺たちはこれが仕事だからさ」

「あなたはただ爆笑してただけじゃないか」

「アハハ……」

ウラヌスの指摘に苦笑いをするしかない弥王。


「と、とにかく無事に服が決まって良かったなヒナ」

「はい、お姉ちゃん達のお蔭です、本当にありがとうございました」

「また何か作って欲しくなったらウチに来い」


璃王の言葉にキョトンとする双子。


「また来てもいいんですか?」


その問いかけにうなずく2人。

「あぁ、いつでも大歓迎だ」

「その時はお前等の服を作ってやるよ」

「はい、それじゃあまた来ます」


ヒナの嬉しそうな笑顔に弥王達は笑みが零れる。


そして双子は仕立て屋から家へと帰っていった。




余談だが、弥王は爆笑している内に壊してしまった机を片付けている最中にレイナ達に見つかり、こってりと絞られたとか…

神南弥王

神谷璃王


両名を貸してくれた俺夢ZUNマジでありがとうー!!

感謝してまーす

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