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ぼっちの学校  作者: 水銀
第一章 氷は溶けて笑顔となる
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初めての友達

「さてと、じゃあどこから見ていこうかな?やっぱりお参りした後ならおみくじか授与所でお守りとか買った方がいいのかな?」


しばらく悩みながらも答えを出す。


「よしじゃあまずは、目玉っていうか有名な千本鳥居に行こう!行けなかったらなんか勿体無い気がするし」


そう言って本殿から千本鳥居まで向かう。


「確かこの奥に何かあるんだっけ?まぁ一旦登ってみよう!」

そう思って中継地点までゆっくり登っていく。

「でもこんな数の鳥居管理だったり作るのだって大変そうだよなぁ、人の努力の結晶っていうのかなこういうのを、僕もこんなには無理だけど何か努力の結晶作ってみたいなぁ、ま!今はとにかく登ろう」


一名(ひとな)が外でこんなに大きな声で喋るのは何故か周りに誰もいないからだ、神社といえば毎日人が訪れるのが普通だと思うだろう、本殿には何人かいたがここにはいない。

とにかく、一歩一歩道を歩いていく。


「そういえば、写真とか撮ってなかったなぁ、でももう中間地点だしその奥で撮ろうかな」


そんなことを考えているうちに中間地点に辿り着く。


「ふぅ〜着いた〜ここが中間地点、確かここにある石が願いが叶うまでの難しさが決まるんだったけ?」


あたりを見渡してそれっぽいのを探す。


「あ、あったじゃあ早速行こ!」


その場所まで駆け足で行く、近くまで行ったところで気づく。


「あれ、誰かいるような、物陰にいるからわからないな」


さらに近づいてみると、それが誰だったかわかった。


中川(なかがわ)さん?」


気づいたらすでに名前を呼んでいた。


「あっ、(かつら)くん、おはよう」

「どうしたのこんなところで?」


いやでも普通か?


「ちょっと休憩してるだけだから気にしないで」


でもどこか辛そうな顔に見える⋯⋯


「本当に大丈夫?どこか怪我したとか?」


すると中川(なかがわ)さんは勢いよく立ち上がってこっちに近づいてきた。


「大丈夫だよ、じゃあ」


そういって、帰りの道のほうに向かって歩いていく。


「ちょ!」


咄嗟に手を掴んでしまった。

すると転んで一名(ひとな)が押し倒されるような構図になった。


「ごっ、ごめん今どくから⋯⋯えっ」


一名(ひとな)の頬に一滴の水滴が落ちる。

そう、中川(なかがわ)さんが泣いているのだ。


「ごめん痛かった!?絆創膏とか持ってるよ」


あたふたしていると。


「ちがう」


ただ一言そう言って僕の目を見つめる。


「じゃあ⋯⋯なんで⋯⋯」

「そこの石持つと願いが叶うまでの難しさがわかるっていう」


あの石


「私って案外弱いんだね、本当かもわからない話を信じて」


初めて出会ったのは受験の時が初めて、なんならしゃべったのはほんの数日前だ、それでも彼女のことはそれなりに見てきた、だからこそわかることがある。


こんなに表情が変わるぐらい泣いて⋯⋯何があったのかはわからないけど、でも僕は今ここで動かないといけない気がする


中川(なかがわ)さん」


まずそう言って彼女の肩を優しく掴んで互いに座って向き合うような形に体制を変える。


「僕には何があったのかはわからない、けど話を聞くことぐらいはできる」


ただただ真剣に話す。


「今ここで僕にできることはそれくらいしかないけど、でもこれだけは言える、君の変わらないでも確かに感情の

こもった顔を涙で埋めるやつがいるなら、僕がぶん殴ってあげるよ!」


まだ会って間もない彼女にこんな言葉を言うのは少し照れるけれどそれよりも彼女の気持ちがプラスになるように

今届けられる言葉を並べる。


「やっぱり、君って優しいね」


意外な言葉が飛んできたものの、表情を変えず聞く。


「じゃあ、話すね時間かかっちゃうかもしれないけど」

「うん」


そうして彼女は話し始めた、昔のことを。


「私は昔から無表情だったの、とはいってもそれは外でだけ、家では普通に話せるし、私はわからないけどちゃん

と表情豊かで笑顔なんだって、でもどうしても外、特に学校なんかでは笑ったりできなくって⋯⋯」


これは昔の出来事。


「あの子、今日も無表情だよ」

「ね、怖いよね」

「顔だけは美人なのになぁ」

「やっぱり小学校からだったの?あんた同じ小学校でしょ」

「うん、昔からあんな感じだった」

「ほんと氷みたい」

「氷柱だけに氷ってか」


ヒソヒソと話す同級生の声が聞こえてくる。

こっちが聞こえてるのを知ってか知らずか、どちらにせよ私がいる場所で話すということは、聞こえても構わないと思っているのだろう。


今日も学校には来たけど、退屈だな、ただ椅子に座っているだけの時間、それに陰口も聞こえてくる、好きでこの顔をしてるわけじゃないんだけど、でも仕方ないよね学校には行かないといけないし⋯⋯


頭の中でいろんな感情を巡らせていてもその顔が、表情が変わることはない。

そうした日々が続いていたのを心配した親が転校などを聞いてきたこともあったけどどこに行こうと変わらないと思ったから全て断った。

それでも心配だったのかある日父親が一つの提案をしてきた。


氷柱(つらら)、今日からお父さんが宿題を出そうと思います」

「宿題?」

「あぁそれも毎日」

「毎日もやることあるの?」

「じゃあ宿題の内容を言うね、それは毎日誰かとお話しすることです」

「?」

「何いってるんだって顔してるね、まぁそれもそうだよな、じゃあ詳しくいうとすぐにとは言わないけど僕たち以外の誰かと一言ずつでもいいから話してみて欲しいんだ、今日は僕と話したから宿題は終わりまた明日氷柱(つらら)から誰かに対して話してほしい」


それがきっかけで私の日課が一つ増えた、最初は親以外と話すことはなかった、そうして気がつけば三年生になっていた、焦りは感じなかったけど、お父さんとの約束を守れないのは嫌だった、だからまず初めは近所にできたクレープ屋さんにいってみることにした、そこなら出来たばかりだから同級生もいないと考えて。


「すみません、ここのクレープってオススメありますか」

「あっはーい、オススメは定番の苺のクレープになります」


て、何この美少女!?やばい癒される


「それじゃあ、その苺のクレープお願いします」

「はいじゃあ急いで作るから待っててね」


しばらく椅子に座って待つ。


「はいこちら苺のクレープになります」

「ありがとうございます」


店員が行ったのを見てから食べ始める。


美味しい、久々に食べたけど毎日食べたいくらい美味しい


そうしてどんどん食べ進める。


美味しかった


感想を頭の中で言っていると少し頬が緩んでいるのに気づいた。


「あれ?」


滅多に外では変わらない表情が今少しだけ変わったのだ。


外で笑ったのなんて家族といった旅行以来かも


考えているともう入店してから40分経っているのに気づいたので急いで店を出る。

出た後、ほんの少しのところで呼び止められた。


「お客様、忘れ物です」

「あっ、あのすみません」

「いえいえ、ではお客様またのご来店をお待ちしております」

「はっ、はい」


あ!少しだけだけど笑ってるのかな?なんかすんごい元気もらった気がする!


後ろ姿だけ見える背を見ながら、考える。


よし次はもっと笑ってもらうためにもっと腕を上げちゃうぞ〜


一方家に着いた氷柱(つらら)はというと。


「今日は他の人と話せた、客としてではあるけどまた来て良いっていってくれてたし、またいけたらいいな」


この出来事がきっかけで少し、ほんの少しだけど氷柱(つらら)の人生が色づき始めた、そしてこれは氷柱(つらら)にとって初めての家族以外との明るい色の思い出ができた。

そうして受験シーズンを迎えた私は史然高校(しぜんこうこう)に入学するためにここまでやってきた。


ここに入れば多分大丈夫ってお母さんとお父さんが言ってたけどどうなんだろう?家からも少し離れてるけど、電車で数本だしすぐにつけはするから大丈夫かな?


頭の中でそう考えながらマフラーをしっかり巻いて坂道を登る。

すると決して大きくはないけど喋り声が聞こえてきた。


「さすが新設校なだけあってめっちゃ綺麗!舞鶴からここまできた甲斐があるってもんよ!まぁ受験に落ちたら意味ないんだけど⋯⋯」


あの子も、ここに受験するのかな?あれ?なんで止まってるんだろう?


いきなり止まった名も知らない男の子。


どうかしたのかな?まぁとにかく行こう


止まっている彼の隣を通りすぎて、見えてきた校門に向かう。

その時一瞬だけ彼の方を見る。


あれ?


その時の顔は今でも覚えている、嫌な顔でもなければ、驚いた顔でもない、どこか悲しそうで、どこか優しい、はっきりとは表現できないけれどでもなぜか心を動かされた、喋ったこともないそんな彼の顔が私の昔の心の中を表してるような気がしたから。

そこからは心の中にほんの少しだけ彼がいた、だから同じ受験会場だった時に彼の名前を見にいった。


桂 一名(かつら ひとな)くんって読むのかな?


それからはしばらく受験の内容に戸惑いながらも、面接の時間になるまで集中して過ごした。

面接の時間になって校長室まで移動する。


もう入っていいのかな?


入っていいかわからないがノックをして中に入る。

中には年配の方の男の人が1人だけいた。


「おぉいらっしゃい、さぁ座って」


言われるがままに座って対面する。


「それじゃあ中川 氷柱(なかがわ つらら)さんまずは質問をします趣味や特技何をしたくって高校に入るのか、それと志望理由を聞かせてください」


そう言われて、事前に練習した答えを言うはずだったのだが。


「私は一緒に話せる友達を作りたくて高校に入ろうと思いました」


あれこんなことを言う予定じゃなかったのに


口から出た言葉は事前に言おうと考えたことでもなく、なんなら質問を飛ばして答えてしまった。


「なるほど、それがあなたの本心見たいですね」


そう言って、優しい笑みを浮かべたおじいさん。


「あ、あのそうじゃなくて、口が滑ったっていうか、その」


自分でも珍しいと思うくらい表情が焦りと混乱で変わっていた。


「いえ、きっとそれがいいと思うよ、私にはわからないけど何かいいことでもあったんじゃないかな?」


焦る私を落ち着かせる声でそう言う。


普段ならこんなことにはならないのに、いいこと?このおじいさんが優しいくて落ち着く声をしているから?それとも⋯⋯


気づけば頬が緩んで口角も上がっていた、つまり笑っていた。


「どうやら答えは出たようですね、では面接も終わりにしましょうか」

「え?でもまだ」

「いいえ、もう私の知りたい、聞きたいことは終わりましたので、あぁあと申し遅れました私の名前は史然 尊義(しぜん たかよし)と言うよ覚えてくれると嬉しいね、それじゃあ出口はそちらから」


そういって引き戸を指して言う。


「それではまた」


そうして流されるまま外に出た。


「これでよかったのか?でも多分いいよね?」


そうして受験は終わりに入学まで時は進み、学校説明会の日になると、たまたまいった化学実験室で再び彼と出会った。


なんで、この状況になったんだろう?


こういう時に何をいえばいいかわからないからとにかく名前を呼んでみたりして私にとって新鮮で充実していて幸福感のある日々を送っていた。

そうして今日に至った。


「ここに、願いについての石があるんだっけ」


そうして見つけたおもかる石を持ち上げてみたら、重くてもち上らなかった。


「嘘、じゃあもう無理なのかな、私に⋯⋯」


普段ならきっと大丈夫と思っていたかもしれない、でも今は幸せな日々を送っていた、だから心にくるものがあった。


そうして今に至る。


「ね、私って弱いでしょ、本当かもわからない、無理だと決まったわけでもないのにこんな」

「そんなことないと思うよ」

「え?」

「だって君は努力したし結果が今は出なくてもいつか出る日も来る」

「いつかなんてそんな幻」

「幻なんかじゃないよ、だって今目の前にいるんだから」

「それはどうゆう」

「じゃあ言うよ、中川 氷柱(なかがわ つらら)さん僕と友達になってくれませんか!」

「本当にいいの?」

「うんだって僕も中川(なかがわ)さんと友達になりたいから」

「出会ってまもないのに本当にいいの」

「友達ってそういうものじゃない、出会ったばかりで名前も知らない、顔も初めて見るようなそんな人がいつか大切な友達になると思うんだ」

「⋯⋯ありがとう、やっぱり優しいね」


そして彼女は今まで見たどんな顔とも違う笑顔を見せた。


「それにしても、よかった友達になれて」

「え?それってどういう」

「だって僕も初めての友達だからさ」

「え?じゃあ私達、この15歳で初めて友達ができたってこと」

「う〜んそうなるね」

「何それ、ほんとに」


そう言って2人で笑った。


「じゃあ私からも言って良い?」


何も言わずただ頷く。


「私と友達になってくれてあるがとう!!」

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