プロローグ 始まりの日 下
「お疲れ様です。これにて筆記試験は終了しました、この後校長による個人面接がおかなわれます。放送にて呼ばれるので各自呼ばれるまでゆっくり待っていてください」
2人の教師がそう言って教室から出ていく。
「はぁ〜」
今日で何回目のため息であろうか、まぁため息が出たと言うことはわかると思うが。
(まさか理科と社会でも感情に問いかけてくるような問題が出てくるとは、まぁしかしこれで無事試験も終了後は面接をこなせば終わりだ!)
と思いながら順番が来るのを待つ、順番は八番目だと席順からわかる。
「桂さん、桂 化奈さん順番になりましたので案内を見ながら校長室まで来てください」
(あっぶねぇ一瞬立ちかけた、ていうかまさか同姓の人がいるとは思わなかった。勉強に集中してて気づかなかったけど前に席順と一緒に名前書いてあるじゃん!)
ふと気づき席を立ち上がって見ていく。
(僕の受験者番号は8番か〜、以外と速いな!)
そこからしばらく見ていくと朝出会った少女の名前があった。
(中川 氷柱っていうのか)
そこで放送がなる。
「桂くん、桂 一名くん順番になりましたので案内を見ながら校長室まで来てください」
(おっ僕の番かじゃあ行きますか)
自分の席に戻って荷物を戻し教室を出る、案内によると校長室は三階にあって階段を登ってすぐの所にあるらしい。
三階へ続く階段を上がっていくとそこには新設校とは思えないような古い雰囲気を出している校長室があった。
「あれが校長室か、これもう入っちゃっていいのかな?」
校長室に至るまでの間に誰にもあっていないので少し心配になり扉の前で悩んでいると扉が開いた。
扉から出てきたのは桂 化奈さんではなく身長が160cmくらいのお爺さんだった。
「君が桂 一名くんだね?」
すごく優しい声でそう問われた。
「はい、桂 一名です本日はよろしくお願いします!」
面接としてはおそらく良くないと思いつつもそう返事を返した。
「元気が良いのはいいことだねさぁ入りなさい、立ち話は私が疲れてしまうからね」
校長先生と一緒に校長室に入る。
(和室は基本とした綺麗な造りの部屋だなぁ〜)
和室とあまり関わりをもたない現代っ子でもそう思うような気品が感じらるものだった。
「それではまず自己紹介から始めましょう、私の名前は史然 尊義、この高校の校長を務めている。」
「僕の名前は先程も言った通り桂 一名と言います」
「それでは質問を始めます、まずは趣味や特技、何をしたくて高校に入ったのか、志望理由を教えてください。」
「はい、まず趣味や特技ですがこれといって特技と言えることはございません、しかし二つ目の質問にある何をしたくてと合わせられることで趣味や特技を探すのが理由となります、そして志望理由ですが新設校というのも理由の一つですが一番大事なのは自分の実力が測れると思ったのも理由の一つです。」
3つの質問に答えを返した後少しの間沈黙が続く。
その静寂の空間を校長の優しい声が開く。
「桂 一名さん志望理由についてもう一度聞かせていただけますか。」
予想外の言葉だったが(まぁお爺さんだしな)と思いもう一度志望理由を話す。
「はい、志望理由ですが新設校というのも理由の一つですが一番大事なのは自分の実力が‥‥‥」
もう一度同じ説明をしていると校長が「違う」と言ったので言葉が詰まった。
「違いますよ一名くん私が聞きたいのはその言葉だけで作られたものじゃないんです。私が本当に聞きたいのはあなたの"本質"あなたが心の中に持っている感情が聞きたいんです。」
まさかの言葉に驚きを隠せない、しかし校長は喋り続ける。
「嘘や押し殺した感情ではなくあなたの隠している感情を聞くことで私は初めてあなたと本当の面接をできると思っています。ですから他人しかも今日初めて会った私なら話すのは嫌なことかもしれないでもその一歩があなたと私の"繋がり"を作っていく上でとても大切なんです、たった一歩それでもあなたにとってはまさしく"未知"の領域でしょう、しかしそれが最も重要で未来を進むのに必要な最低限なんです。例え勉強ができなくても、貧しくても、遠い国の知らない言葉ばかりの中に突然放り出されたとしても、未知を切り開く"一歩"そんな力があれば私は素晴らしいと思います」
「ですから一名くんその一歩をどんなに時間がかかったとしても踏み出してください、私はあなた方"生徒"
の過去を絶対に笑わないし否定しません、私達が想像もできないような未来にあなたたちを連れていくためにいる、"先生"なんですから。」
時に先生とはなんであろうか?先に生きたもの、勉強を教えてくれる人、他にも色々なものがあるだろうしかし私は"先生"をこう思う、自分が教えたまたは教える生徒、相手を先へ未来に向けて生きれるように教え導くものだと思う。さて主軸を物語へ戻そう。
桂 一名は感じた、考えた自分に求められているもの、いや必要な力をそれを伝える勇気を。そして言葉を紡ぐ。
「僕は昔からぼっちだったんです、客観的に見ればしょうもないようなことかもしれないけれど自分からすれば同じ中学校の人が来そうな高校は避けたいだからこの史然高校に来ました、これが本音、弱い弱い自分の本質です。」
僕の話を聞いて先生はにっこりと笑った、それは決して人を馬鹿にするようなものじゃない優しく優しく自分を包み込んでくれそうな笑顔だった。
「わかりました、あなたのが勇気を出してくれたおかげで本当の意味での"面接"ができます。それではこれより面接を始めます、楽な感じで受けてください」
そう言われて一名は安堵しおじいちゃんに相談をするような気分で面接をうける。
数十分が過ぎた頃面接が終わった。
「お疲れ様です、とても楽しい時間になりました。では桂 一名さんそこのエレベーターからゆっくり帰ってください。」
そうして先生は和室の中にある引き戸に指を刺す。
「エレベーターなんてどこにあるんですか?」
「あっすみません、そこの引き戸を開けると廊下がありますのでその突き当たりにエレベーターがあります」
言われたことを実行に移すと本当にエレベーターあった。
(本当にあった!)
驚きを示しつつも振り返って先生を見て一礼。
「本日はありがとうございました、先生のおかげで自分のことや大切なことを少しでも見直せた気がします。」
そして大きな声で
「さようなら!」
長いようで短い入試が終わった。
しかし一名の心は疲れを消し飛ばずほどの充実感や喜びがあった。
(あの先生とってもいい人だったな〜、史然高校合格できてるといいな)
そんな思いを心に秘めながら眠りにつく。
そうして長い1日いいや始まりの日が終わりを告げる。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
生徒たちの物語はまだまだ続きますので見てくれたら幸いです。