表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

アリスへの復讐、終結

今回はだいぶ長めです。なぜなら戦闘描写、全員分を書くからです。内容もしっかりしていると思うので是非楽しんでください。

「お前を捕らえ、先程の女の前で殺す!」


 ルードゥンはそう言った瞬間、杖を私の方へ向けた。


火の嵐(ファイアストーム)!」


 瞬間、火の粒が大量に現れ、私目掛けて一斉に飛んできた。

 私はその火球達をなんとか躱し、ルードゥンの目の前へ一気に飛び込み、殴ろうとした。

 しかし、それは(はば)まれてしまった。


「俺を忘れるな!」


 そう、ドルエドだ。私の横でドルエドは棒を強く握り締めていた。

 ドルエドは私に向けて棒をものすごい勢いで突きを放った。

 私はそれに対して回るように棒の側面に回り込み、回転の勢いそのままにドルエド目掛けて蹴りを振るった。

 ドルエドは体を沿わせることで軽々と蹴りを避けた。

 私が蹴りを振るった直後、ルードゥンが持っていた杖で私を殴り飛ばした。

 杖が直撃する前に腕を間に入れていたので大したダメージにはならなかったが、腕が少し腫れた。

 私が吹き飛ばされたのと同時、ドルエドが私の懐に一気に飛び込んできた。


「"蒼炎龍牙(そうえんりゅうが)!」


 ドルエドが技を発動した瞬間、棒全体が蒼く燃え始めた。


 "蒼炎龍牙"は、ドルエドのみが使用できる技であり、棒を流れるように打ち込み、相手の体を燃やし尽くす技。蒼く燃える火はなんと一万度にもなるという。


 蒼く燃え始めた瞬間、これは避けないと確実に死んでしまうと察した。であれば、まず初撃を躱さねばならない。初撃を躱せればあとはどうにでもできる。

 私は初撃に来る場所を予想した。これを躱せなければ死ぬことが確定する。

 おそらくドルエドは私を初撃で殺しにくる。だから攻撃される場所は、胸だ。

 私はドルエドが棒を胸に突くと予想して攻撃がくる少し前に動いた。

 日頃の行いが良かったのだろう。ドルエドは胸に向けて棒を付いてきた。

 だが、ドルエドは繋がるように私に棒を振るった。

 しかし先程も言ったように、初撃を避けられればどうにでもできる。

 私はドルエドが振るった棒がギリギリ当たらないラインまでバックステップをし、懐にしまっていた仕込みナイフをドルエドの頭目掛けて投げつけた。

 予想外の仕込みナイフを投げられたドルエドは既の所(すんでのところ)でナイフを躱した。

 私はドルエドがナイフを躱すと同時に間合いを詰め、ドルエドに拳を振るった。

 それをドルエドはバックステップで華麗に躱す。

 やはりこんな簡単な攻撃では直当たりさせることはできないか。

 ナイフを完全には避けられていなかったドルエドの頰から赤い血液が垂れた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「成程、なかなかやるようだ」


 ルードゥンは気味の悪い笑みを浮かべ、そう言った。


生憎(あいにく)、あまりお前に時間をかけられないんだ。早く終わらせようぜ?」


 ルードゥンが話し終わった瞬間、ドルエドが突っ込んできた。既に棒を振り下ろす準備をした状態だ。

 おそらく横に避けても後ろに避けても何かしらの攻撃は当たってしまう。ルードゥンも攻撃の準備はできている。

 だったらどうするべきか。答えは1つしかない。

 私はドルエドが縦に薙ぎ始めるタイミングと全く同じタイミングに半歩前に出た。


「なにっ!?」


 ドルエドは私が前に出るとは思っていなかったらしく、動きを一瞬だけ遅らせ、隙を作った。

 私はその隙を見逃さない。

 私はドルエドとの距離を完全に潰し、お腹目掛けて拳を振るった。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 骨が砕ける音と同時にドルエドはルードゥンのいた方向に吹き飛んでいった。

 半歩前に出てから更に前に出たので少し無理な体勢で拳を振るってしまったからこけそうになってしまったが、ルードゥン諸共壁にぶつかるはずだ。

 そう考えた直後に壁にぶつかる音がこの部屋に響き渡った。


「これでおしまいかな...」


 私が顔を上げて最初に視界に入ったのは、ルードゥンだった。

 ルードゥンが別の場所から私に杖を向けていた。


「"風の一撃(ウィンドブラスト)"!」


 即座に防御の体勢を取ったが、風の魔法が防御は関係ないと言わんばかりに勢い良くぶつかった。

 私は強力な風の魔法によって壁に吹き飛ばされてしまった。

 ルードゥンは避けていた。おそらくワープ的な能力を使用したんだろう。でなければあそこから避けることなんてできないだろうし、攻撃を続け様にするなんてできるはずがない。

 私は体の痛みに耐え、なんとか立ち上がった。

 無理をして立ったがために足がふらつく。私は壁に(もた)れ掛かった。


「無様な姿だな。妹さん?」


 ルードゥンは私を(けな)すような目でこちらを見てきている。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 だが、ルードゥンは魔法使い(ウィザード)1vs1(ワンブイワン)であれば、この体でも勝てるはずだ。

 しかし、そんな希望はすぐに打ち消されてしまった。


「俺を吹き飛ばすなんて、そんなちっぽけな体でよくできたな...!」


 怒り口調のドルエドがルードゥンの背後から歩いて来た。

 私は確かに吹き飛ばした。壁にぶつかった痕もある。それなのに立ち上がって、余裕そうな表情をできるなんて、タフな人だ。

 私は口を手で拭った。その時、手に液体の感触があった。

 手を見ると、赤い液体がついていた。血液だ。

 私は少しの『怒り』を感じた。だがその反面、強い『高揚感』が体の奥底から湧き上がってきた。


「...ふふっ」


 ルードゥンとドルエドは意味のわからなそうな表情を浮かべた。

 私の心臓の鼓動が強く、速くなっていく。

 私の目に、赤黒く光る瞳孔が宿った。


「うふふ!貴方達が悪いのよ?私だってこんな表情は見せたくないもの!!」


 私は手についた自分の血液を舐めた。

 赤い、純潔の血。()()()()()()()()()()


「...ふふっ!さあ、ついてこられるかしら?」


 そしてここから、一方的な蹂躙(じゅうりん)が始まった。


ーーーーーーーー


「ん?音の方向的にエレガントかな?これは派手にやってるなー!」


 私はエレガントのいる方向に目をやった。あの子はいろいろと凄いから多分大丈夫でしょう!


「それで、どうするの?まだやる?」


 私はガリアルという男の方を見た。

 既にガリアルは片腕がなく、ボロボロで満身創痍の状態だ。


「こ、ここまで強いのか...!」


 槍を地面に突き刺し、それを支柱として立っている。槍がなければ立つことも(まま)ならないだろう。

 もう少し強いと思ったけど、結構弱かったなぁ。

 なにがあったのか、それはほんの数分前に戻る。





「"神越(しんえつ)飛翔槍ひしょうそう"!」


 ガリアルがそう叫んだ瞬間、私に向けて突進しながら突きを放った。


 ガリアルの能力、『神越・飛翔槍』は狙いを定め、定めた相手に向けて神速とも言える速さで突進しながら突きを放つ。常人では気がつく間もなく死んでいくという。


 案外速かったから私は少しだけ反応が遅れた。

 でも、()()()()()()

 私はガリアルの突進を容易に躱し、迎え撃つ形で膝を腹に打ち込んだ。


「ごはっ!!」


 速度=威力

 なかなかの勢いで突撃してきたので腹に強烈な一撃を食らわせれた。その衝撃でガリアルの体が少し浮いた。

 浮いたガリアルの背中に私は容赦なく拳を叩きつけた。


「ぐがぁぁぁぁぁぁ!!」


 ガリアルの体を床に叩きつけた。なかなかに痛いだろう。結構いい感触もしたからおそらくダメージは大きいはずだ。


「さて、私も能力は見せないといけないよね!」


 私はうつ伏せになっているガリアルにそう話しかけた。

 やっぱり片方だけしか能力出さないのは気まずいところがあるから仕方なく見せてあげよう。


「"燼滅ブレイズ"」


 瞬間、私の周りを漂っている炎が大きくなった。

 私はその中の炎を1つ取り、倒れているガリアルに向けて炎を落とした。

 炎がガリアルに触れた瞬間、触れた部分が溶けた。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「さっきから叫びすぎ、五月蝿(うるさ)い」


 私はのたうち回るガリアルを蹴った。10mくらい吹き飛んだかな。


「ぐ、ぐぅ...!」


 ガリアルは槍を床に突き刺しなんとか立ち上がった。


「槍を手放さなかったのは偉いね。武器を手放したら勝率が下がっちゃうもんね」


 私はガリアルの根性を素直に褒めた。こんな根性がある人はそうそういない。




 そうして今に至るというわけだ。


「どうするの?まだやるんだったら確実に殺すけど」


 私はガリアルを威圧し。

 ザラセス様は『戦闘不能にしろ。殺害はどちらでもいい』と言っていた。正直に言えば殺したいわけではない。でも、ガリアルが降参するんだったら私はガリアルを外に連れ出さないといけない。それはそれでとても面倒くさい。でも殺すよりはマシかも。


「まだ...まだ終わっていない...!」


「その体で何言ってるの?もう立つのも辛いでしょ」


「俺のことを...舐めるなよ!!」


 ガリアルは腹の底から叫び声を上げた。

 そして叫び声と共に気合を入れ直したのか、槍を床から抜き、私に向けて構えた。


「本当に死にたいの?」


「いや...俺とアリス様だけで生き残ってやる...!!」


「...は?」


 つい、そんな言葉が出てしまった。

 この男はつまり、あのアリスとかいう女と自分だけ生き残れればそれでいいと考えているということか。

 良い戦闘者の精神を持っていると思っていたが、勘違いだったようだ。

 洗脳されているとはいえ仲間を見捨てる?ふざけるな。自分だけ生き残れるなんて思うな。

 

「...そう。君は生き残りたいんだ」


「ああ...!俺はまだ生きていた…」


 私はガリアルの言葉を遮るように言った。


「黙れ、お前は死ぬんだよ」


 その瞬間、私の目から温度が消えた。

 私は右手に自身の得意とする武器、大鎌(おおがま)を炎によって創り出した。

 そして、会話をする暇を与えず、ガリアルとの間合いを潰した。


「まだ、負けん!!」


 ガリアルが私に向けて突きを放った。

 しかし、その突きが私に当たる前に鎌で残っていた腕を跳ね飛ばした。


「あ...」


 残念だけど、ガリアルはもう血を流しすぎている。躱す力も残っていないだろう。


「もういい、死ね」


 私はガリアルへ一切の容赦なく鎌を振るった。

 ガリアルが避けられるはずもなく、鎌の刃がガリアルを捉えた。


「ゴハッ...!」


 ガリアルは全身の力が抜けたように後ろに倒れた。


「...殺す気なんてなかったのに、自分のせいで死んだんだよ。つくづく、バカな男だ」


 私はガリアルにそう言ったが、聞こえているはずがない。もう息もしていないし心臓も動いていない。既に死んでいる。


「安らかに眠って、天国に行ってね」


 私はガリアルに火をつけ、火葬してあげた。このまま腐り落ちていくのは見るに耐えない。この男がどれだけバカで最低な人であろうとそれは可哀想だ。


「さて、他の場所の手助けに…」


 その時、嫌な予感がした。

 私はその場から急速に離れた。

 瞬間、石の壁が砕け、男が吹き飛んできた。

 それに続くように壁の砕けた部分から男の髪を掴み、引き摺りながらエレガントが出てきた。


「た、たすけ...」


 エレガントは男に顔を近づけ、鬼の形相で睨みつけた。


「あれだけ高圧的な態度を取っておいて最後はそれ?まったく美しくないわ」


 そう言ってエレガントは飛んできた男に向けて掴んでいる男を投げつけた。

 男達は叫び声すら上げれずにぶつかり合い、砂煙を上げた。

 男達がどんな風になったかは、察してほしい。


「よし、これでゴミ処理完了ね!」


「あ、あの、エレガント?」


「どうかした?」


「今の、だ、誰?」


「アリスとか言う女に洗脳されていたバカ2人よ」


「もう少し骨のあるやつと戦いたかったけど、まあいいわ」


 そう言って微笑んだ。

 どうにもエレガントが怖い。話し方もいつもと違うし(くれない)の瞳孔が赤黒い瞳孔に変わっており、口から血が垂れている。

 そういえばギャンブリンから聞いたことがある。エレガントは血を見ると興奮してしまうただの狂人だって。血を見たらいつもの穏やかな性格とは一変、戦闘している者を戦闘不能にするまで延々と攻撃し続ける所謂(いわゆる)戦闘モンスターになるとかなんとか。

 もうだいたい何をしたかは想像がつくけど、一応聞いておこうか。


「あの人たちになにかしたの?」


「血を吸ったの。一週間ぶりの血よ!」


「美味しかった?」


「激マズよ!一口吸ってみて美味しくないのがわかったからボコボコにしたの!」


 エレガントは清々しい表情をした。どう考えても逆ギレだがこれをツッコんだらなにをされるかわかったものじゃない。あの男達が哀れだなって今更ながらに思う。


「うん、なんか、お疲れ様...」


「そういえばあなたのところにも誰か来てたはずだけど、もう終わったの?」


「まあね。そこそこ楽しかったよ」


 私達はそれぞれの元にやってきた刺客について話した。情報共有は大事、報連相!


「じゃああとはグリードとリバティーだけね。勝ててると思う?」


「問題ないと思うよ」


「なんてったって、彼らは幹部の中でもとびきりの実力者だからね!」


ーーーーーーーー


「殺す!!」


 フルドラは俺に突進してきた。


「はっ、まるで猪だな!」


 俺はフルドラの突進に合わせ、回し蹴りを行った。

 それが綺麗にフルドラのこめかみを捉えた。


「それがどうした!!」


「なにっ!?」


 なんとフルドラは蹴られたにも関わらず、一切止まらない。

 その勢いのままフルドラは俺の足を掴み、俺を押し倒し(テイクダウン)してきた。

 フルドラはその勢いのまま馬乗りになって拳を振るってきた。


「オラオラァ!!」


 ただ一方的にフルドラは俺を殴り始めた。

 この状況は非常にまずい。フルドラは俺に反撃する暇を与えない。今の状況が続いてしまえば、いつか力尽きてしまうのは必然的だ。

 ...どう考えても使うのが速すぎるが、仕方がない。力尽きるよりかはマシだ。


「"欲望(グリード)"!!」


 瞬間、俺の背中から2つの紫の影が現れた。

 その影が浮き出てそのまま勢いよく垂直に伸びた。

 フルドラはそれを躱すように俺の上から退(しりぞ)いた。

 その2つの影は着地すると同時に段々と子供の形へと変わっていった。


「アイツ避けやがった!うざいうざい!」


「はいはいギアー落ち着いてね」


 紫の髪をした1人は少年、1人は少女の姿に変わった。

 それを見たフルドラは困惑の表情を浮かべた。


「な、なんなんだそいつらは!」


「欲望だよ」


 欲というのは誰しもが必ず持っている。赤ん坊だろうと欲を持っている。大人になるにつれて表現できるようになってくるというだけの話だ。

 本来なら欲には上限が付いており、それによって欲を制御できるようなのだが、俺にはないらしい。

 現在はマッドに仮の欲蓋(よくぶた)を体内につけてもらっているから制御できるが、昔はそんな物なかったから制御できなかった。それ故にとても苦労した。

 余談だがマッド曰く、水晶(クォーツ)などの硬質な物体を混ぜて作った合金で作った欲蓋だから永久に外れることはない、と言っていた。ただあの狂人の言うことは当てにならないからあまり信用はできないが、これに関しては信じなければいけない。信じていないと毎日ビクビクしながら生きていかないといけなくなる。

 話を戻して、能力"欲望"は欲というものを具現化して操ることのできるというものだ。この2人はほとんど勝手に動いているが。

 操るということで言えば、東国(とうごく)のシキガミというのを操ることができる陰陽師(おんみょうじ)に似ている。

 本来ならこの能力は多勢を相手にするときに使っている。なぜなら1vs1の時は自分の実力だけで勝ちたいからだ。今回はあくまでも例外だ。


「ちゃんと名前もあるんだぜ?ほら、自己紹介しな」


「私はギアー!グリードの子供みたいな欲から生まれた!」


「私はアヴィディテ。グリードの理性的な欲から生まれたの」


 少年の方がギアー、少女の方がアヴィディテとそれぞれ自己紹介を行った。

 ギアーは元気がいっぱいで少し子供っぽいところがある。アヴィディテは大人しく冷静でギアーのストッパーとしてしっかりしている。

 ちなみにどちらにも性別なんてない。どこまでいっても俺の"欲"だからな。


「こうなったら、お前に勝ち目はねえな」


 フルドラを見下し、そう言った。

 フルドラは怒り、声を荒げた。


「舐めるな!貴様なんぞ、何をしようと俺には勝てないんだ!!」


 そしてフルドラは先程と同じように俺に突進してきた。

 だが、一度見た行動に二度も引っかからない。

 ギアーとアヴィディテは距離を離し、俺はフルドラを正面から受け止めにいった。

 フルドラは俺に対抗して正面から拳を振るった。俺が拳を受け止めると思ったんだろう。

 もちろん俺には関係ない。ただのフルドラの読みだ。

 俺はその拳をしゃがんで躱した。

 フルドラの動きを完全に抑えることはできないかもしれない。だが、抑制することはできる。

 俺はフルドラの腹を下から(すく)い上げるように(かか)えた。

 だがフルドラはすぐにそれに反応した。


「腹を抑えたところで、四肢は動くんだよ!!」


 フルドラは俺の背中を殴りつけようとした。

 だがそれよりも速くギアーが動いた。


「"強奪する鳥(ラオプフォーゲル)"!」


 ギアーの腕から紫の鳥が現れ、フルドラの右腕に(くちばし)から突き刺さった。

 だがフルドラは苦痛な表情を一切浮かべず、すぐにギアーへ顔を向けた。


「小僧、なにをした!」


「ひひっ!よそ見していいのかな?」


 そう、フルドラのすぐ近くにいるのは他でもない、この俺だ。

 俺は一瞬の隙をつきフルドラの脇に手を移動させた後、腰に力を思い切り入れ、フルドラを抱え上げた。

 フルドラが俺から逃げようと暴れるが、そんなのお構いなしだ。

 

「死ねよボケがぁぁぁぁぁ!!」


「ぐがぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺はフルドラにフロントスープレックスを行った。

 フルドラはその場で仰向けになった。

 投げ技は本来マットの上だから放てる技だ。しかし、ここは石の床。痛いなんて言葉では言い表せないほどの激痛だろう。たとえ体がどれだけ強靭(きょうじん)であろうとな。

 ()()()()()()()()()、流石に立てないだろうと俺は思った。

 だが、フルドラは立ち上がった。


「ふ、ふざけやがって...!!」


「立ち上がるのかよ!」


 俺はついツッコミを入れてしまった。

 こいつの耐久力を舐めていた。本来なら良くて気絶なのにこいつは普通に立ち上がった。本当、化け物だ。


「貴様らを始末するまでいくらでも立ち上がってやる!!」


 そんな主人公みたいな言葉を言い放ってきた。

 フルドラはまだまだ余裕がありそうな感じがする。本当、保険を張っておいてよかった。


「"強奪する狼(エクストーキールーブ)"」


 アヴィディテの腕から紫の狼が現れた。

 その狼はフルドラへ一直線に走り、右脚に噛みついた。

 フルドラはまたしても表情を変えずにアヴィディテを睨みつけた。


「次は貴様か!なにをしたんだ!!」


 今度はしっかりと俺とギアーの方を警戒しながらアヴィディテに向けて叫んだ。


「ナンノハナシカナ」


「その棒読みはなんだ!?」


「グリード、頃合いじゃない?」


 アヴィディテはフルドラを無視し、俺に話しかけてきた。

 俺は即答した。


「ああ、いいかもな」


「何の話だと言って…!」


「"強欲ノ器(アヴァリティア)"」


 俺は指を鳴らした。

 音が部屋全体に響き渡った。

 その時、フルドラは右手脚を激しく震わせ、床に膝をつけた。

 その状態にフルドラは困惑の表情を浮かべた。

 

「ど、どういうことだ...!た、立てん...!」


「当たり前だ。お前の右手足の力を奪ったんだからな」


「奪っただと...!?」


 "強欲ノ器(アヴァリティア)"は、"欲望(グリード)"から派生させ、新たに創り出した能力だ。

 ギアーの"強奪する鳥(ラオプフォーゲル)"とアヴィディテの"強奪する狼(エクストーキールーブ)"は元々は相手に少しのダメージを与えるだけの"雑魚能力"だった。俺はこれらを有効活用する為に、新たな能力を創り出すことを決めた。そうして出来たのがこの、"強欲ノ器(アヴァリティア)"だ。

 "強欲ノ器(アヴァリティア)"は、"強奪する鳥(ラオプフォーゲル)"か"強奪する狼(エクストーキールーブ)"のどちらかが当たった後に俺が合図をした瞬間に当たった部位の力を奪うというものだ。今回であれば右手足の力を1/2ずつ奪った。

 ラオプとエクストーキーが同じ部位に当たった後に発動すると全ての力を奪えるが、そんなことしてもあまり意味がない。2つの部位の力を半分奪った方が強い。


「もう立てないんじゃないか?今のうちに降参しとけ」


 俺はフルドラに慈愛の目を向けてそう言った。

 良い戦闘者へのせめてもの情けとして言ったのだ。

 だが、こいつはそんなのを受け取るはずがなかった。


「うぉぉぉぉぉ!アリス様のためにも、貴様を殺す!!」


 フルドラは雄叫(おたけ)びを上げ、気合いで立ち上がってみせた。

 気合いで立ち上がっているからか、フルドラの右足が小刻みに震えている。肉体が拒絶反応を起こしているのだろう。右腕に至っては力がもう完全に入っていない。能力以前に疲労があるのだろう。だが、力を奪われてもなお立ち上がるなんて流石としか言えない。流石だ。

 ...いや、洗脳によって無理矢理立ち上がらされてるだけだな。目がもう見るからにおかしい。完全にラリっている奴のそれだ。もう元に戻るのは無理かもしれない。

 であれば、もう楽にしてやるか。

 俺は、フルドラを殺してやることにした。


「もう楽になれ...!」


「俺は、負けない!」


 フルドラは防御した。だが、片腕だけで受け止められる攻撃なんて絶対に打たない。

 俺が放った貫手はフルドラの腕を貫き、モロにフルドラに当たった。


「ゴハァッ...!!」


 放った貫手は、フルドラの心臓を穿(うが)いていた。

 腕を引き抜いた直後にフルドラはゆっくりと倒れていった。


「いい男だったのに、本当にもったいない男だ...」


 体の肉付き、顔面、強さ、全てが良い。一発ヤりたかったとこんなにも思うのは初めてかもしれない。勿体無いことをしたのかもしれないな。

 俺が悲しんでいるの察したのか、アヴィディテが背中を優しく叩いた。


「グリードには私がいるからいつでも相手はできるよ。姿なんていくらでも変えられる」


 今の俺にとって、一番の慰めだった。

 そう言った後にギアーとアヴィディテは俺の影に戻っていった。

 確かに1人の男を失っただけで悲しんでいたらダメだな。

 俺は自分の頰を叩き気合を入れ直した。


「...さてと、大将のもとに行くか!」


 そうして俺はフルドラとの戦闘を素早く終え、足速に大将の元へ向かった。


ーーーーーーーー


「では参る!」


 バリアールはそう言うと、いつのまにか私との距離を潰していた。

 そのままの勢いで私に向けて横薙ぎを繰り出した。

 私は愛刀でバリアールの攻撃を受け止めた。

 そのまま流れるように斬り合いにもつれ込んでいった。


「はっはっは!なかなかの剣捌きだな!!」


「君もなかなかだね!私についてこられるなんて!!」


 事実、私に斬り合いでついてこられる人は数少ない。賞賛に値する。

 でもやっぱり、私の方が一枚上手かな。


「隙あり!」


 私は一瞬の隙をつき、胸に向けて刀を振るった。

 バリアールはそれに反応し、後ろに下がった。


「ほう...俺に攻撃を当てるか...!」


 完全には避けきれなかったのか、胸を少しだけ切っていた。

 するとバリアールは私の剣を指差し、こう言った。


「お前のその剣、なにやら不思議な力が宿っている。なにをしたんだ?」


「よくわかったね。でも、企業秘密ってやつだよ」


 現に、私の愛刀『リバティ・スカイ』は()()()()()()()()()()()()()()。私専用の武器だ。

 

「いいからほら、戦闘(斬り合い)を再開しよ!」


「...まあいい。では俺も全力でいかせてもらうぞ!」


 そう言ってバリアールは刀を強く握りしめた。


「"雷鳴轟斬(らいめいごうざん)"!」


 瞬間、バリアールの刀に雷が纏い始めた。


 バリアールの技である"雷鳴轟斬"は、雷を武器に纏わせ、その雷ごと相手にぶつけ、感電と斬撃という二段の攻撃を相手に喰らわせる。その一撃を喰らうと即死すると言われている。


「おぉ...!雷...!」


「さあ、行くぞ!!」


 バリアールは再び私との距離を潰した。地面を踏み抜いた際の轟音が耳に鳴り響く。

 私が轟音に気を取られている隙に私に刀を振るっていた。

 私はそれを頭を下げて躱した。だが、二の手が私を襲った。

 バリアールは既に膝を仕込んでいたのだ。

 その膝は私の顔にぶつかる位置に完璧に仕込まれていた。

 しかし、私はその膝を後方宙返りの要領で躱し、そのままバク転で距離を離した。


「いいね!やる気が(みなぎ)るよ!!」


「ああ!俺も楽しんでいるぞ!!」


 私とバリアールは同時に動き出し、斬り合いにもつれ込んだ。

 2人きりで斬り合う、とにかく斬り合う、今だけは誰にも横槍させない。

 斬り合いは時間が過ぎるのに比例して速くなっていった。もはや誰も割り込むことはできない。

 ただただ剣と剣がぶつかる音が響く。これを無限に続けていたいと思う。

 でもこれを無限に続けるとマスターに怒られるからやめないといけない。

 私は一瞬の隙をついてバリアールとの距離を一気に離した。


「あはは、遊びはここまでだよ!」


 まだ遊びたいけど、怒られるのは嫌だから少しだけ本気を出すとしよう。


「"自由(リバティー)"」


 その時、バリアールが刀に宿らせていた雷が消え去った。


「か、雷が消えた!?」


「君は知らないかもだけど、自由を手に入れるのは大変なんだよ?」


「今の私がいるのも、昔の私が力で自由を手に入れたから」


「な、何が言いたい!」


「つまりね?君の能力の"雷鳴轟斬"をもう一度使いたいんだったら、自らの力でもう一度手に入れなよ」


 私の能力、"自由"は相手の能力を消し去るというもの。といっても、私が一時的に持っているというだけで、私が意識を失えば能力は所有者の元に戻る。でもそれも私が()()()()()()()()


「あはっ。でも生憎だけど、私は君より強いよ。もう使えないかもね!」


 瞬間、私はバリアールへ切り掛かった。

 バリアールは私の斬撃に反応し、刀で受けた。

 だが、バリアールは異変に気がついた。


「お、抑えきれない...だと...!?」


「あははっ!当たり前じゃん!!さっきまでは手加減してたんだよ!!」


 私は刀をさらに押し込んだ。

 それをバリアールはなんと刀で受け流すように避けた。

 回避したのと同時にバリアールは柄頭で私を突こうとした。

 とても躱すのが難しいタイミングに突きを放ってきた。だったら、こうするしかない。

 私は地面を強く踏み抜いた。

 地面から足を離し、突きを躱したのだ。

 だがバリアールも剣豪、空中では隙があることをよく知っている。

 バリアールは刀を持ち直し、空中の私目掛けて刀を振るった。

 でも、私の方が速い。

 私はバリアールの顔を踏みつけ、それを足場としてもう一度飛んだ。


「ぐあっ!?」


 バリアールは頭を踏みつけられた勢いで床に倒れ込んだ。

 そうなれば、もう決着だ。

 私は刀を逆手に持ち替え、バリアールへ狙いを定めた。


「それじゃあ、終わりだよ!」


「っ!まずっ...!」


 そして、勢いよくバリアールへ急降下した。


 ドスッ、という刀が突き刺さる音が響いた。


「...?」


 バリアールはそっと目を開けた。

 そして目の前に広がった光景は、刀をバリアールの耳のすぐ側に突き刺さしている私の姿だった。


「殺しはしないよ。あくまで戦意を喪失させるだけ」


 そう、今回は戦意を喪失させればそれでいいんだ。

 無理に殺す必要はない。私に勝てないと思わせるだけでいい。なんて簡単なんだ。


「それで、この状況でもまだやるっていう?」


 でも多分、戦闘を続けると言うと思う。

 この人は今、アリスに洗脳されている。アリスのためにも勝たないといけないっていう脳になっているはずだ。

 拒否されることを重々承知の上で聞いた。これでやるというんだったら、バリアールの首を容赦なく斬る。


「...はっ、いくら俺でもこの状況からは勝てない。降参だ」


「え?降参するの?」


 私は鳩が豆鉄砲を食ったような顔を浮かべた。


「ん?ああ、ここから俺が勝つのは流石に無理だ。俺はまだ若いから死にたくないしな」


「...そ、それは、本当に信用していいやつ?本当に降参するの?」


「なんだ、俺を殺したいのか?まあ生殺与奪の権はお前が持っている。好きにしてくれ」


 なんか調子狂うなぁ...

 しかし、不意打ちされるかもしれないから隙は見せられない。

 というか、降参するなんて思ってなかったからなにも考えてなかった。本当にどうしよう!!

 しかしなんとここで救世主が現れた。


「リバティー、終わりましたか?」


「ディ、ディスペア!」


 そしてディスペアは私がバリアールを拘束してるのを見るなり話した。


「その人、殺さないんですか?」


「そ、その...」


 私は今の現状を耳打ちした。

 そしてディスペアは困惑の表情を浮かべた。


「バ、バリアールと言いましたか...本当に降参するんですか...?」


「そうだが、なんで君にもそれを聞かれるんだ?」


「あなたは今、あのアリスとかいうア◯ズレに洗脳されているということなので、『アリス様のためにもお前には負けん!』とか言うと思いまして...」


「ああ、そういうことか...」


 とりあえずディスペアのとんでも発言はスルーしておくとして、バリアールの反応が気になる。これはなにか裏があるようだ。


「なにか裏があるの?嘘をつけば首を刎ねるけど」


 私は刀を床から引き抜き、バリアールの首につけた。


「そうだな...簡単にいうと、俺は洗脳されていない」


「どういうことです?」


「そのままの意味だ。()()()()()()()()()()()()()


 受けたフリ?どういうこと?なんでそんなことをする必要があるの?

 私がバリアールへ質問しようとした時、ディスペアが先に口を開いた。


「...詳しくは牢で聞きます。リバティー、連れて行ってください」


「ディスペアは来ないの?」


「私は先にアリスを苦しませるための準備をしなければいけないので、さっさとその人を牢で見張っておいてください」


「わ、わかった!」


 私はディスペアに従順に従った。理由はなんか圧が怖かったから。

 そうしてディスペアはどこかへ歩いていった。

 なんか意味深に笑いながら歩いていったけど、あまり考えないようにしようか。


「お、お前のところの幼女は怖いな...」


「うん...知ってる...」


ーーーーーーーー


「こ、ここは!?奴隷たちはどこ!?」


 アリスは魔王城の本丸の中の真なる玉座、『魔王の座』へと飛ばされていた。


「よく来たな!我はレーベン・グラムンド!魔王の妻だ!!」


 レーベンはアリスの前へ堂々とそう叫んだ。相変わらず元気のいいことだ。


「だ、誰よあんた!というか待って...グラムンドって、まさか...!?」


「よく来たな、アリス」


 俺は瞬間移動で玉座にダイレクトに座った。アリスから見ればいきなり椅子に現れたように見えるだろう。やはりこうしたほうが格好いいからな。それに得体の知れない感も出せるしな。


「や、やっぱりあんただったのね!クソゴミカス!!」


 久しぶりの再会なのにアリスは早々に暴言を絶え間なく浴びせ始めた。

 予想はしていたがよくもまあこんなに暴言が思い浮かぶなと思う。

 レーベンは血管を浮かび上がらせるほど怒っている。先に手を出すなと忠告しておいてよかった。

 すると、アリスの背後から音も無くディスペアがやってきた。眼力だけで人を殺せるのではというレベルの睨み方をしている。


「アリスさん」


 ディスペアがアリスの肩を叩いた。


「は?誰...」


 アリスの振り返り際にディスペアは強烈なアッパーを喰らわせた。


「ふべっ!?」


 アッパーの勢いでアリスは宙に浮いた。

 あれは絶対に痛いだろうな。アッパーで宙に浮かせるには相当の威力がないと無理だ。あれは絶対に痛い。大切なことだから2度言った。


「流石ディスペア!よくわかってるね!」


 レーベンはとびきりの笑顔をディスペアに向けた。


「まず前座として一撃殴らせていただきました。満足いただけてなによりです」


 そう言ってディスペアは少し離れた場所に移動した。

 俺は苦しむアリスを嘲笑った後、玉座からアリスに話しかけた。


「アリス、俺と1vs1の真剣勝負をしろ。ボコボコにしてやるよ」


ひ、ひんけん(し、しんけん)ひょうぶっへ(しょうぶって)...!わはひふべに(わたしすでに)|へはひへふほほ(けがしてるのよ)!?」


「ほらよ」


 俺は予めマッドネスに作らせていた『拡散型回復薬(ポーション)』をアリスのいる場所へ投げつけた。

 薬の瓶が地面に触れ、割れるのと同時に回復薬はアリスの服へ飛び散った。


「きゃっ!なにすんのよ!!」


「これで傷は治った、さっさとやるぞ。一切の手加減なしだ」


 俺は玉座から立ち上がり、地面を蹴り、跳ぶようにアリスとの距離を潰した。

 

「ちょっ!私は近接戦が無理...!」


 俺はアリスの腹に飛び蹴りした。

 何かごちゃごちゃ言っていたが俺がそんなので止まると思っていたんだったらバカ丸出しだ。


「ゲフゥッ!?」


 アリスは足をカタカタと震わせながら後ろに下がった。この感じ、相当効いたんだろう。


「さっさとかかってこいよ。近接戦が無理とか関係ねえんだよ」


「や、やったわね...!私に暴力を振るった罪、しっかり払ってもらうから!!」


 アリスは俺に杖を向けてきた。()()()()()


「"幼女の誘惑(ハニートラップ)"!」


 アリスの杖から円状のビームのようなものが発射された。だが、俺は既に対策を打っている。

 俺はこのビームを正面から受けた。


「はははっ!!まともに受けるなんてバカじゃないの!?だからあんたはゴミカスなのよ!!」


 アリスはビームを出しながらケタケタと笑った。もう勝ちを確信したのだろうか。

 確かに本来ならこれを受けた瞬間に俺は敗北したのと同義だ。だが、今回は少し違う。


「...残念だが、失敗だな!」


「は?」


 俺はビームを受けながら一気に突っ込んだ。

 アリスはそれに反応することができなかった。

 俺はアリスの懐を侵略し、強烈な膝蹴りを腹へ打ち込んだ。


「ごぶっ...!?」


 そして膝蹴りから繋がるように繰り出した俺の拳はアリスの顔を完璧に捉えた。

 その一撃でアリスは後方へ吹き飛んでいった。

 勢いそのままにアリスは壁にぶつかり吐血した。


「な、なんで効かないのよ...!」


 アリスは俺を睨みつけそう聞いた。

 確かにこいつとパーティーを組んでいた時はこの能力がしっかりと効いていた。しかし、()()()()()()()

 俺はアリスへ種を明かした。


「お前のその能力は男にしか効かない。ただそれだけだ」


「あ、あんたも男でしょ...!」


「数週間前まではな」


 どういうことか、それは数週間前に遡る。


ーーーーーーーー


「ほーらザラ様〜?じっとしててくださいね〜?」


「お、俺はまだ同意してないぞ!?」


 俺は今、マッドネスの手術室で拘束されている。


「だってザラ様言ったじゃないですか!あのアリスって女は男を支配する魔法を持っているって!」


「だからこうして去勢手術をするんですよ!」


 マッドが言うには、去勢すれば男とは言わない。男というのは女と子作りをすることができるのかどうかで決まるらしい。

 性自認とかを考えたらそんなの暴論に過ぎないと反論したのに強制的にここに磔にされている。


「大丈夫ですよ!その女を殺したらしっかり適合手術してあげますから!!」


 そう言って俺に麻酔をかけてきた。

 すぐに効果は出始め、だんだんと眠くなってきた。


「や、やめ...ろ...」


 そうして俺の意識は闇の中へと沈んでいった。


ーーーーーーーー


 そうして気がついたら俺の子供達が消えていた。つまり今の俺は男でも女でもない、中性というわけだ。

 俺はアリスに詳しく伝えてやった。


「そ、そんな馬鹿なことで本当に...!?」


「本当じゃなかったら今頃俺はお前の奴隷だ」


 俺はアリスに近づき、壁に手を当てた。


「もうお前に勝ち目はない。今までのことを許す気もない」


「今からお前には地獄の苦しみを味わってもらう」


「ひっ...!」


 俺は壁から手を離しディスペアを呼んだ。


「ディスペア、準備はできているか?」


「こいつが一番苦しむものを準備していますのでご安心を」


 するとアリスが最後の脅し文句を言ってきた。


「そ、外には私の奴隷達が大量にいるの!あいつらを全員呼んだらあんた達なんてボコボコよ!」


「残念だが、それは不可能だ」


 俺は門前の映像をアリスに見せつけた。

 そこに映ったのは、大量の兵士の倒れた姿とその上に立つギャンブリンとヴァイスの姿だった。


「この2人が兵士を全員始末した。殺してはいないだろうが、もう動けないだろうな」


「そ、そんな...」


 アリスは絶望の表情を浮かべ、体を震わせた。

 俺はディスペアに後のことを任してゆっくりとその場を去っていった。

 復讐したい相手とはいえ女の苦しむ姿を見たいと思うやつなんていない。ディスペアも相当辛いだろう。なんせ拷問した後に殺すんだからな。メンタルケアを後でしっかりしてやろう。ディスペアが病んでしまったらとんでもないことになってしまう。


 その後、何時間もアリスの悲鳴が上がっていた。そして深夜になり、突然悲鳴が聞こえなくなった。その後に肉が潰れるような音が響いた。

 翌日の早朝、ディスペアから殺害報告を聞いた。

 アリスは多くの人達に地獄へ連れ去られるように死んでいったという。

 死んで当然だ。俺は口角が少し上がった。ここまですっきりするのは久しぶりだな。

 だがまだだ。

 あと2人、ディールとレイラがまだ残っている。

 アリスは戦闘要員ではないから簡単に復讐できたが、この2人は戦闘要員。簡単にはいかないだろうな。だが、どれだけ時間がかかろうと全員に復讐すると決めたんだ。

 次の標的(ターゲット)は、レイラだ。確実に殺してやる。

 まあ今はアリスへの復讐完了を素直に喜ぼう。それ以外は考えなくていいだろう。

 こうして、アリスへの復讐は終わった。

ご閲覧ありがとうございました!

アリス編はここで終了ですね。私はアリスが嫌いです。なぜならアリスの元ネタが私の嫌いな人だからです。ディールとレイラは別に元ネタとかないんですけどアリスに関してはそういう感じなのでアリスが好きな人には申し訳ないですけど大嫌いです。

ここで裏話なんですが、次回のエピソードはもう書き始めているのでいいんですけど、その次をどうするか、まだ考えていません(笑)

そもそも私の物語の書き方は「その場で思いついたものを書く」という風なものになっているので次回をどうするか、とかはほとんど考えていないんです。多少考える時もありますが、本当に暇な時くらいですね。

でも、この小説を楽しんでくれている人が少なからずいるのは事実なので、もっと精進して行きたいです!

次回の投稿は未定です。次回も是非ご覧ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ