ギルドと依頼
亭主によるとギルドは町の北側にあり近くに大きな十字架が屋根ついてる教会があるのですぐわかるそうだ。
ギルドに向かう道中、町は意外と賑わっていた。
八百屋や服屋、元の世界では見慣れない道具が揃ったお店、多分武器屋?などもあった。
帰りに色々寄ってみよう、服も必要だし武器もあった方が良さそうだ。
大きな十字架が見えてきたおそらくあれが亭主が言っていた教会だろう、その斜向かいにギルドらしき建物建っていた。
その建物に入ると武器を携えた厳つい男達が何人もいて、訝しげな顔でこちらを見てきた。
新参者は注目を集めるのだろう。
俺たちはそそくさと受付に向かった。
綺麗なブロンドのお姉さんが対応してくれた、少し視線を落としてしまうのは男の性だ。
ふとリルの方を見るとしかめ面で目を逸らされた。
憲兵がしっかり事情を説明していてくれたおかげでスムーズに話が進んだ。
「野党に襲われた何てとても大変でしたね、通行証の作成ですよね、ではまずこの書類を書いておいてください。」
書類を2枚渡された、そこには色々記入する欄があったが俺はよめなかった。
戸惑っていると受付嬢が口を開いた。
「お連れの方に書いていただいても結構ですよ」
俺は顔が熱くなるのを感じた、しかし読めないし書けないのでここはリルにお願いするしかなかった。
リルは難なく書けるそうだ。
「名前、皐月っていうのね、珍しいけどいい名前ね」
そう言えばリルに名前を伝えてなかったなとハッとした。名前を誉められるのは満更でもなく嬉しかった。
「皐月って呼んでいい?」
リルが顔を赤らめながら聞いてきた。
突然の問いかけに驚いたが、リルの恥じらう表情が可愛らしくて、つい頷いてしまった。決して照れているわけではない、そう言い聞かせるが顔が熱くなるのを感じた
書類を書き終え受付嬢に渡した。
「お疲れ様でした、ギルドの登録もされますか?自分のステータスも把握できますし、通行証と結びつけることもできますので便利ですよ。」
「お願いします。」
承諾すると奥の部屋に案内され、そこには水晶が置いてあった。
「ではこの水晶に手をかざしてください。」
リルに先にやらせる事にした、すると水晶がひかりそこから文字が浮かび上がってきた、そこに受付嬢が名刺より大きななサイズの紙をかざすと紙に文字が刻印されていく。
その不思議な光景を見て異世界に来た事を改めて実感した。
リルの登録が終わり俺も水晶に手をかざした。
登録が終わると受付嬢が驚いた様子で口を開いた。
「皐月さん、祝福持ちの方だったんですね!?ギルドマスターに伝えてきますので少々お待ちください!」
周りの厳つい男達も驚いた様子でこちらを見ている。
ん?何だ祝福持ちって何か珍しいステータスを持っていたのか?
俺も戸惑いを隠せずいると、リルが少し興奮した感じで話しかけてきた。
「皐月、祝福持ちだったんだ!どんな祝福なの?」
「いや祝福って何なの?」
「え、知らないの?私も詳しくは知らないけど、祝福を持っている人は運命を変えられる存在だと言われてるって昔お父さんに聞いた事があるよ」
運命を変えられる?そんな凄い力を俺が?落ちこぼれだった俺が?信じられないし実感が湧かない。
困惑しそう逡巡しているうちに受付嬢が戻ってきた。
「ギルドマスターがお呼びですのでわたしについて来て頂けますか?」
俺も祝福持ちについて詳しく知りたいので、快く承諾し案内に従った。
階段で4階まで上がり大きな扉のある部屋まで案内された。
「ギルドマスターがこの部屋でお待ちです、では失礼します」
俺は扉をノックし部屋に入った。
「失礼します。」
「ご足労すまないね、そこのソファーに腰掛けてくれ」
そう促してきた髭面で褐色の男と机を挟だ目の前のソファーに腰を下ろした。
「早速だが、どこで祝福を手に入れたか教えて貰えるか?」
「それが分からないんです、正直な話祝福がどう言う物なのかも知りません」
「自覚なしか、ではこれまでに不思議な体験をした事はないか?」
不思議な体験?もうこの世界にいる事自体不思議なんだがと言いたいところだが恐らく碑石での事だろうと思った。
正直に話すべきか否か悩んだが俺自身祝福について知りたかったので話す事にしたが異世界から来た事を話す訳には行かないので記憶を無くして気づいたら森の中と言う設定で誤魔化て話した。
「なるほど、恐らくその洞窟での出来事が原因だろうな。」
「私からも質問なんですが、なぜわざわざ呼び出したのですか?あと出来れば祝福について詳しく教えて頂けると助かります。」
「良かろう、まず祝福についてだが、祝福とは特定の場所である条件をクリアすると神から授けられる物だ、条件についてはそれぞれ違ってくるので一概には言えない。
例えば私の知り合いに竜神の祝福を持った者がいる、その祝福は魔大陸の竜山頂上にある碑石に赤竜を調伏させた状態で触れると得られる物だ。能力に至ってもそれぞれ違うので一概には言えないが運命を変えられるほどの力を持った物が多い。と言いたところだ。」
自分がが考えてた以上に祝福とはこの世界で強大な力を持つ物みたいだ。だか俺は特に竜を調伏させると言った難しい条件はクリアしていないのに何故祝福を得られたのかとても疑問に思う。
俺がぐるぐると考えているとギルドマスターは話を続けた。
「お主を呼び出した訳は2つ、1つ目、祝福とは前述した通り強大な力をもつ物なのでこちらとしてもどんな人物が持って居るのか把握しておきたいのだ。
2つ目、ここからが本題だ、実はこの町と交流の強い隣町アルスの様子がおかしいのだ、連絡は断ち物流も途絶えている、噂によると領主が悪魔に取り憑かれて町は混乱状態に陥っており1次的に鎖国している様な状況なのだ、その調査と解決を祝福持ちのお主に依頼したい、勿論報酬は弾むしできる限りの援助はさせてもらうつもりだ。」
俺は悩んだ、今俺たちには目的がないしお金も必要だ。自分の祝福についても何処まで強いのか知るためにこの依頼を受けたい気持ちもある。
しかし同時に悪魔という未知の敵といきなり戦うのは危険が高すぎる。
また俺はぐるぐる考えていた、するとドンっという鈍い音がした。ギルドマスターがお金の入った袋をテーブルに勢いよく置いた音だった。
「これは前金だ、100.000ルーゴある、もしこの依頼を受けてくれるなら今渡そう。成功報酬はこの8倍だ。」
不安はあるがしかし阿弥陀の光も金次第という諺もある、ギルドマスターの話では俺が持っている祝福は相当強いはずだ。と思い俺は依頼を受ける事にした。
「わかった、受けましょう、期日は?」
「おーそうか助かるよ、期日は1ヶ月だ。
健闘を祈る。」
そうして俺たちはギルドカードとお金を受け取りギルドマスターからの依頼を受け一旦宿に戻る事にした。