宿と食事
半日ほど馬車で移動すると大きな防壁で囲われた街が見えてきた。
町の門には憲兵が2人立っていて取ろうとすると憲兵に話しかけられた。
「通行証を見せろ」
通行証なんて持っていない俺は一瞬焦ったがなんとか誤魔化そうと思い嘘をついた。
「いやーそれが先ほど野党に襲われまして、金目の物は持って行かれてしまい、通行証もその時に奪われてしまったんですよ。」
咄嗟な嘘なので不安が過ぎった。
「そうだったのか、それは災難だったなでも命があるだけ良かったな。」
何とか誤魔化せた様で胸を撫で下ろした。
「じゃあ町のギルドか商会に行って作ってくると良い、話は通しておくからどちらに行くか決めてもらえるか?」
「ギルドの方で作らせてもらうよ」
「分かった、じゃあ行っていいぞ」
「助かるよ、ありがとう」
何とかパスできたようだ。
俺たちは街に入るとまず質屋を探し野党の持ち物を売り払った。
30.000ルーゴで買い取ってもらったが高く売れたのか安く売れたのか分からない。
しかし宿を取るためにお金は必要なので仕方ない。
そのあと宿を取った、宿は木造で少し古びた感じがする外観だ、ドアの横にぶら下がった看板には黒猫亭と書かれている。一階は食事処になっており食欲を誘う匂いでお腹が鳴りそうだ。
受付には如何にも商売慣れしてそうな亭主が立っていた。
「すいません、一泊いくらになりますか?」
「いらっしゃい、お2人さんだね、1泊1部屋1.000ルーゴになってるよ!部屋は幾つ取るんだい?」
所持金的にあまり無駄遣いはしたくないって言うのが正直なところだ。
俺はチラッとリルの顔を伺うと、そっと口を開く
「一部屋でお願いします」
その言葉にほっとし、少し安心しながら返事をした。
「1部屋とりあえず3日で頼むよ、後馬車を置く場所を借りたいんだがいいかな?」
「1部屋3日だね、3階の右側の部屋を使っておくれ、馬車は宿の裏手の倉に置いといていいぜ!」
「ありがとう、助かるよ」
「はいこれが鍵だよ、無くさないようにな」
亭主が少しニヤつきながら鍵を渡す。
リルの顔が一瞬赤くなり、視線を少し逸らす。その様子に気づき俺も思わず視線を逸らした。
「なっ、何でもないよ」
リルが呟く、その恥ずかしさを隠そうとしている仕草に何処か愛おしさを感じた。
俺たちは亭主に言われた部屋に行った、部屋には小さな机とギリギリ2人寝れそうなベッドが置いてあった。
その後、1階の食堂で軽く食事をとる事にした。
席につくと亭主がオーダーをとりに来てくれた。
メニューを見てもよく分からないのでとりあえずおすすめを2つ頼んだ。
1ヶ月以上まともな食事を摂っていなかった俺はどんな料理が出るのか胸を躍らせた。
料理は地中海風の魚の煮付けらしき物が出てきた、2人で夢中になって食べた。味付けは少々薄いが美味しかった。
食事を終え俺たちはギルドに通行証を作りに行くため宿を後にした。